2017/10/26 11:00

「うまいもんでしょう」いちじくの風呂吹きの官能――平松洋子の「この味」

©下田昌克
©下田昌克

 空気の匂いがむっちむち、あられもなく豊満なので気恥ずかしくなる。花の姿を見なくても、その正体はすぐわかる。

 満開のキンモクセイ。小さなオレンジ色の花がびっしり、街路樹のなかから星形の顔をのぞかせている。仕事場に向かうこの道には、なぜかあちこちの家の庭にキンモクセイの木が植わっており、毎年十月に入ってしばらくすると、周辺一帯が甘い匂いのカプセルに閉じ込められたみたいになる。

 あの匂いが好きだと言うひと、濃厚すぎて苦手だと嫌うひと、分かれるようだ。私は、むかし実家の庭にキンモクセイがあったので好きも嫌いもなく、秋の匂いとして馴染んでいるけれど、やたら押しの強いおばちゃんの香水みたいで息が詰まると言いたくなるのもわかる。

 好きでも嫌いでも、キンモクセイはぐいぐい迫ってくる。

 習慣とはおそろしいもので、条件反射で連想するのはいちじくだ。八月あたりから出回っているのに、なぜかキンモクセイといちじくがひと繋がりになっており、急がないと終わる、あわてて買いに走るのも例年のことだ。そのたびに、学習能力がないよまったく、と思う。

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