2019/01/02 17:00

長崎・キリシタンの秘鍋

キリシタン弾圧や、厳しい年貢の取り立てにあらがって江戸時代初期に起こった、島原の乱。悲しい結末を迎えた戦いの中で人々のよすがとなった料理が発展し、誕生したのが「具雑煮(ぐぞうに) 」です。その重い歴史とは相反し、どこまでもやさしい、ほっとする味。島原の郷土料理のひとつになっています。

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2018年7月。「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に登録されました。その中心となる地域のひとつ、長崎・島原で作り続けられている郷土料理、それが「具雑煮」です。
具雑煮の歴史は古く、島原の乱に端を発します。天草四郎率いる一揆軍が籠城した折、兵糧として蓄えていた餅に、近隣の海の幸、山の幸を合わせて煮炊きした雑煮を食べることで人々は命をつなぎ、戦いを続けたといわれています。
「この話をもとに、1813年に当店の初代、糀屋(こうじや)喜衛ェ門が生み出したのが、具雑煮の始まりと伝えられています」と教えてくれたのは、島原城の眼前に店を構える、老舗料理店7代目となる姫田誠さん。島原の乱はかれこれ380年ほど前。具雑煮という形の料理が生まれてからも、すでに200年以上。長年、この地で食べ続けられ、島原の郷土料理となりました。雑煮というからには、具だくさんなことが、大きな特徴です。具雑煮発祥の味を伝承してきた料理店では、餅以外に入れる具がなんと12種。シロナ(不結球の白菜)、ごぼう、れんこん、高野豆腐、練りもの……。穴子や鶏肉まで!
一方、だしは、かつおぶしだけ。良質であることで名高い島原の湧き水を使って、毎朝欠かさずとるだしを、薄口しょうゆで味つけ。「12種の具材から、いろいろなだしが出て、味わいが深まるので、吸い地(じ)はシンプルでいいのです」と姫田さん。
1人分ずつ小鍋に入った状態で供されるのが、こちらの具雑煮の魅力。ふたをとると、ふんわりと立ちのぼる湯気とだしの香り。あつあつの鍋から、まず、吸い地をひと口。広がるのは、多種類の素材の味がじんわりしみ出た、滋味深いうまみ。心がふわっとほぐれます。
続けて具を口に運ぶと、しゃっきり食感のごぼうやれんこん、ふっくら香ばしい焼きあなご、しみただしがじゅわっとにじむ高野豆腐……。それぞれの食感やおいしさが生きています。
そして、雑煮には欠かせない餅。「煮込んでもだれないよう、水分を少なめに蒸し上げた餅米を、厨房でついています」と姫田さん。もっちりとやわらかく、薄めで小ぶりに丸められているおかげで、だしとしっくりなじみます。
「具雑煮は、初代のころから土鍋で提供していたようですが、理由はわからないんです」と姫田さん。でも実際にいただいてみれば、最後までぽかぽか。それこそが土鍋を使う理由だったことでしょう。
極限の状態で戦い続けたであろう、一揆軍の人々。彼らにとって、具雑煮のもととなった雑煮は生きる力を与えてくれていたに違いありません。そんな想像をしてみると、具雑煮のやさしい味わいに悲哀を感じ、大切にいただきたくなります。
※テキストでは、料理研究家の冬木れいさん考案の家庭版具雑煮のレシピを紹介しています。お正月にいかがですか?
■『NHK趣味どきっ!心も体もぽっかぽか 鍋の王国』より

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