2017/09/06 11:59

トラウマではない。余韻とも違う。この感覚こそが“戦場”だ『ダンケルク』

 正直、気の狂いそうな作品だ。あまりの恐怖に「早く終わってほしい」とどれだけ願ったことか。
しかし、観終わってしばらくしても目を閉じるとシーンが思い浮かぶ。トラウマではない。余韻とも違う。
そして、この感触が“戦場”を描くのに正しい在り方なのでは、とふと気付くのだ。

 『ダークナイト』『インセプション』など、緊張感漂うトーンの作品群で知られるクリストファー・ノーラン監督が初の実話の映画化に挑む。

 オーディションで抜擢された新人フィン・ホワイトヘッド、本作が本格俳優デビューとなるワン・ダイレクションのハリー・スタイルズ、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のトム・ハーディなどが名を連ね、ノーラン監督による脅威的な演出の数々から全く新しい戦争映画に仕上がっている。

絶望感を煽る“無限音階”とは

 冒頭の市街戦から一切緩むことのない緊張感に放り込まれる。生きるか死ぬかはもはや運でしかなく、過酷な戦場描写に息を呑む。

 ……ここまでは従来の戦争映画と変わらない。本作の新しさは音響演出にある。名作曲家ハンス・ジマーによる音階が高まり続ける“無限音階”と呼ばれる不協和音・ノイズが、兵士の精神状態に寄り添うように絶望感を煽る。

 まるで彼らの頭の中で鳴っている音のように、戦闘機が撃ち落とされる様を、船が沈没する様を、ある兵士の精神が崩壊する様を音響で表現する。また、奥から手前にかけて爆撃される砂浜を、無感情なまでに静止するカメラワークとともに耳鳴りのように響かせる。
ここまで人の深層心理を突くような音楽の使い方を施した戦争映画を他に知らない。

 ドラマ性を極力排除し、陸海空それぞれの兵士を切り取ることで、やがてパズルのように繋がっていく。たった一部分のリアリティを保ち、その群像劇が一回の爆撃、一人の兵士、一つの死などとやがて結び付くことで全体像を浮かび上がらせる構成が巧すぎる。

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