2017/09/25 12:00

肉体が健やかな子供は「視力の悪さ」に憧れる…コンタクトレンズの大人っぽさ

 自分を好きになってくれない人や身勝手な人ばかり好きになり、不安定な恋愛関係に陥ってしまう女性たちへ。
「私は最初から私を好きじゃなかった」――自己肯定感の低い著者が、永遠なるもの(なくしてしまったもの、なくなってしまったもの、はなから自分が持っていなかったもの)に思いを馳せることで、自分を好きになれない理由を探っていくエッセイ。 永遠なるものたち006
「コンタクトレンズ」

 中学校の女子トイレでは、しばしば女の子たちが涙を流していました。鏡に向かって、目を見開いて、震える指先にコンタクトレンズを乗せながら。
 成人するまで異様に視力が良かった私にとって、視力の悪さは大人っぽさの証でした。小学生の時にも眼鏡をかけている同級生を見ては、大人と同じだ……と、畏れ多い気持ちになったものです。

 視力の良さも去ることながら、背が伸びきるのも早い子供だったので(いまは背の低い大人ですが、昔は背の高い子供だったのです)、見た目は大人びているのに、肉体がまだ子供らしく健やかであることが恥ずかしかったような気がします。
 私の肉体は明るい丈夫さを兼ね備えていて、とにかく健康でした。そのせいで体にくっついている精神のほうが拗ねて、捻くれてしまったのかと思うくらい。おかげでいつも気恥ずかしさに背を丸めて歩いていました。だから、いまでもひどい猫背です。

 女の子たちが話す、眼科で視力検査をした時の体験や、最初は先生がコンタクトレンズを目に入れてくれる恐怖(自分でやるよりずっと怖いらしい)などを、女子トイレでふんふんと聞きながら、鏡の前で失敗して涙する姿を見ては、大人への階段を勝手に感じていたものです。
 一方で私の視力は、それから車の免許を取ったり、お酒が飲めるようになったり、そういうことと一緒に年相応に悪くなっていきました。

 そして先日、映画撮影の衣装で使った眼鏡をいただいたので、眼鏡屋さんでレンズを入れてもらいました。遠くの景色も細かく鮮やかに見えるのが懐かしかったです。

視力の悪さが大人っぽさの証だと思っていたのに

 実はコンタクトレンズは、まだつけたことがありません。
 まず自分の目に何かを入れる勇敢さがないし、目玉の裏にレンズが回ってしまったらどうしていいかわかりません。その話をするたびに笑われるのですが、とにかく「こわいこわい、無理」なのです。

 しかし、こうしていざ大人になってみると、みんなお洒落のために伊達眼鏡をかけるという小技を身につけていて、なんならコンタクトレンズの上に伊達眼鏡までかけているのに、私はというと「えっ、それ本物の眼鏡?」なんて聞かれてしまうのです。

 眼鏡をかけると昔のように視力は上がるし、見た目はやや野暮ったくなるし、まさかこんなことで子供じみた気持ちになるとは思いませんでした。

 そしていま私は密かに「黒コン」というものに憧れています。黒目を縁取って大きく見せるコンタクトレンズがあって、それをつけている女の子につい目を引かれてしまうのです。

 明らかにコンタクトレンズをしているとわかる彼女たちを見ると、先生にコンタクトレンズを入れられて怯えたり、鏡の前で泣いたりした経験を乗り越えて来たのかと愛おしいような畏れ多い気持ちになります。
 そして眼鏡をかけている自分が、ますます子供だなあと感じられるのでした。

Text/姫乃たま

今日の運勢

おひつじ座

全体運

しっかりした意見をいうと、周囲から認められるよ。現実的な大...もっと見る >