2018/01/11 12:00

葬儀での涙の量が供養になるのか?齊藤工の初監督作品『blank13』

 葬儀は必ず泣かなければいけないものか。その涙の量が先逝く人への供養になるのか。
人の死の悲しみや、命の価値を量れるものなんて存在しない。だけど、その“想い”が分かる時が、かつて生きていた身体が焼かれるその場所にあるのだろう。
それも、13年間のブランクがたった1日で取り戻されるほどに――。

 俳優として『団地』『昼顔』などで高い評価を得て、様々な分野で活躍する齊藤工による長編初監督作品。本人も松田家の長男・ヨシユキ役を演じ、その次男であり主人公・コウジを高橋一生が、コウジの彼女・サオリ役を松岡茉優が務める。
父・松田雅人役をリリー・フランキーが演じ、雅人の葬儀に参列する俳優陣に佐藤二朗、村上淳、神戸浩、川瀬陽太、くっきー(野性爆弾)など個性的な面々が連なる。

「既存のものではない映画」

 身近な人の“死”という誰にとっても普遍的な題材から、作品は意外な方向に寄り道をする。そのシリアスなムードを裏返すような笑いを含んだりもするが、最終的にはエンディングを飾る曲名の通り『家族の風景』に着地する。

 齊藤工監督は「既存のものではない映画」を目指したという。映画番組の番組MC、短編作品の監督、映画コラムの連載を手掛ける、映画をこよなく愛する齊藤工だからこそ、あえて“映画”の形式をひっくり返した。
役者だからこそ演出できる、芝居の中の“偶然性”。それが台本を超えたリアルとして積み重なることで、葬儀のシーンが強烈な印象を残す。

 前半は過去の回想シーンがメインで、シリアスな借金苦の家族の物語。しかし、後半の葬儀のシーンは現在のそれぞれの姿を切り取り、名バイプレイヤー・佐藤二朗の力技が引っ張る会話劇に発展する。その方向転換に魅了される。
全ての会話に意味など持たない。しかし、普段私たちが会話すること全てに意味などない。そのリアリティが単なるシリアスな物語に収めないのだ。

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