2017/07/19 14:00

阿部サダヲ、早乙女太一、森山未來の色気がハンパない! 劇団☆新感線「髑髏城の七人」こそがクールジャパン

 劇場へ足を運んだ観客と出演者だけが共有することができる、その場限りのエンターテインメント、舞台。まったく同じものは二度とはないからこそ、時に舞台では、ドラマや映画などの映像では踏み込めない大胆な表現が可能です。

 ライブだからこその勢いには、少年漫画のような熱血テンションや劇画のような荒唐無稽な世界観もしっくりハマります。2020年の東京五輪・パラリンピック開催へ向け、海外へ日本のサブカルチャーの魅力を発信するクールジャパン戦略はますます拡大していますが、「もっともチケットが取れない劇団」の評価をほしいままにしている人気劇団「劇団☆新感線」も、劇画の温度感を舞台上で再現することに取り組んできた団体のひとつです。

 現在、東京・豊洲の新劇場で上演されている代表作「髑髏城の七人 Season鳥」は、まさに少年漫画のような時代活劇。健全そのもの……と思いきや、愛と友情と、過去の因縁や後悔のなかで息づく俳優たちの演技には、やっぱりエロスがいっぱいなのです。

「髑髏城の七人」は、劇団の看板俳優である古田新太が主演した1990年の初演以降、キャストだけでなく脚本や演出を変えて何度も再演されています。豊洲に新設されたIHIステージアラウンド東京のこけら落とし(オープン)公演として、「花」「鳥」「風」「月」と3カ月ごとに出演者や演出を一新しながらの1年間以上におよぶロングランを実施中で、「Season鳥」はその第2弾。

 ちなみに同劇場は、客席が舞台やスクリーンに囲まれており左右に回転して場面転換する「ステージアラウンドシステム」を搭載したアジアで初めての劇場で、世界でもオランダに続いて世界で2例目のオープンです。

男と男のキスシーンよりエロいもの

 舞台は戦国時代末期。織田信長が本能寺で亡くなり、豊臣秀吉による天下統一を目前にしたころ、関東平野に現れた忍び装束の男、捨之介(すてのすけ)は、武装集団「関東髑髏党」を率いて天下を覆そうとする天魔王の命を狙っています。色里「無界」の主人を務める無界屋蘭兵衛は、髑髏城の偵察に向かい、無界屋の花魁、極楽太夫はその身を案じていました。

 Season花がスタンダードな演出だったのに対し、Season鳥は、歌あり踊りありで、コミカルなにぎやかさが強調されています。

 主人公の捨之介を演じるのは阿部サダヲ。これまでの上演では捨之介は着流し姿の色男な造形で、Season花と、通称「ワカドクロ」を呼ばれている2011年版では小栗旬が演じていました。人情深く腕も立つのに「すべての縁は、三途の川に捨之介」とうそぶくキャラクターだったのですが、阿部の捨之介はうつけものの振りをして正体を隠し、笑いを誘う場面の連続。それが天魔王に遭遇した瞬間に、真剣な表情に切り替わるギャップにドキっとさせられます。

 捨之介と天魔王、蘭兵衛はかつて、ともに織田信長に仕えた仲間でした。本能寺で信長をみとった天魔王はその野望を再度かなえようと、「蘭兵衛」を名乗り過去を手放そうとしている森蘭丸を仲間にするべく口説き落とします。

 天魔王は森山未來、蘭兵衛は早乙女太一で、ワカドクロ版でも同役で出演していました。当時まだ10代だった早乙女太一の蘭兵衛はとてもヒリヒリしていて、だからこそ、森蘭丸と納得できる美しさでもあったのですが、今回は無界屋での新しい生き方を受け入れた穏やかさが、大人の男性の魅力そのもの。偵察から戻り、松雪泰子演じる極楽太夫へ声をかける姿は包容力にあふれ、俳優としていい成長をしていると感じさせられました。

 天魔王は蘭兵衛を説得しながら、洗脳効果のある酒を口移しで飲ませます。ある意味で最大の見せ場なのですが、早乙女の成長ぶりが再度実感できたのも、この場面。キス自体よりも、口から血のように見える酒をこぼして着物が赤く染まるさまと、信長のしゃれこうべで作った仮面を抱きしめて慟哭する姿のほうが、とてもセクシーだったのです。

 大衆演劇がメーンフィールドの早乙女と、身体能力が高く優れたダンサーである森山の殺陣ももちろん見どころ。速さもですが、まるでダンスのような振り付けの殺陣でもひたすらかっこいいのは、新感線作品の魅力でもあります。

 信長を討つよう明智光秀をそそのかしたのは、実は天魔王でした。捨之介はそのために殺されそうになった罪のないひとびとを見捨てることができずに、本能寺に間に合わず。その罪悪感から、自分の命もすぐに捨ててしまいそうな不器用な阿部はまるで子犬のようで、歴代の捨之介でいちばん若い青年のようにみえました(実年齢は最年長なのに!)。

2020年に期待したくなる!

 天魔王も、自分には看取ることを命じた信長が蘭丸には逃げて生き延びるよう言ったことへの哀しみがにじんでいる一方、蘭兵衛は天魔王との再会で封印してきた自分の心に引き込まれてしまい、オトコって本当にバカねと思うとともに、その青さや必死さがとても愛しくもあります。

 新感線は、「髑髏城の七人」のようなドラマ性にとんだ時代活劇シリーズ「いのうえ歌舞伎」や、笑いをふんだんに盛り込んだ「ネタもの」とよばれる作品群など、エンタテインメント性にあふれた多彩な作品を上演しています。演出家は、劇団の旗揚げメンバーであるいのうえひでのりで、2015年には、新感線の作品を基にした歌舞伎公演「阿弖流為(アテルイ)」も手掛けています。

 東京五輪・パラリンピックの開会式の総合演出を誰が担当するか否かは、スポーツファンでなくても気になるところです。クールジャパンを押し出すにしてもアニメコンテンツをあしらえばそれでいいというわけではないし、漫画の世界観のノリを洗練された舞台表現にする経験と手腕があるいのうえひでのりに任せてみるというのは、意外にアリなんじゃないかな。「髑髏城の七人」を見ていると、そんなことがつい頭をよぎってしまうのです。



 

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