2017/12/12 17:00

漫画家・おかざき真里のリアル『サプリ』、イス3つ寝睡眠遍歴とは

大人の恋愛模様を細やかでリアルに描く漫画『サプリ』や『&』が代表作で、女性から圧倒的な支持を集める漫画家、おかざき真里さん。かつては大手広告代理店で働きながら漫画の執筆を続け、現在は3人の子育てと両立させています。そんなおかざきさんの睡眠やライフスタイルは、結婚&出産を機に大きく変化したそう。会社員時代は、「会社で眠ることも少なくないほど、タフな生活を送っていた」というおかざきさんに、睡眠遍歴やライフスタイルの変化、漫画に対する想いについて語っていただきました。

目次

  • 1.平均睡眠時間は3時間!? 多忙な会社員時代
  • 2.『サプリ』の「イス3つ寝」は実話! おかざき作品・リアリティの秘密
  • 3.「もっと楽に仕事を続けられるように」おかざきさんから働く女子へアドバイス
  • 4.キャリアウーマンから母親へ。朝3時起床の超朝方生活にチェンジ!

平均睡眠時間は3時間!? 多忙な会社員時代

『サプリ』1巻39ページ

『サプリ』1巻39ページ

――おかざきさんが、漫画家を志したきっかけを教えてください。
 
「『手に職をつけなければならない』と思ったのがきっかけですね。実家が江戸から続いた造り酒屋なので、なんとなく実家を継がなくてはいけないと思っていたら、両親から『お前は出て行け』と言われたんです。だったら、子どものころから好きだった“絵”を仕事にしよう! と思って」(おかざきさん)
 
――大学卒業後は、会社員として働きながら漫画家として活動されていたそうですが、なぜ兼業を選ばれたのですか?
 
「大学進学時、美術大学の日本画科に入りたかったのですが、画材は高いし、日本画家として食べていけるようになるのは難しいと思いました。そこで、『デザイナーになれば、卒業後すぐに安定した収入が得られるはず』とデザイン学科に入り、卒業後にはデザイナーとして広告代理店に入社したんです。高校時代から何度か漫画雑誌の新人賞をもらっていたので、漫画もそのまま副業として描き続けていました。上司も、私が副業で漫画家をやっていることは認めてくれていたんですよ」(おかざきさん)
 
――会社には何年間勤めていたのですか?
 
新卒で入社してから、結婚して退職するまで11年間ですね。その間もずっと漫画家の活動は続けていました」(おかざきさん)
 
――広告代理店も漫画家も、とても忙しそうです。睡眠時間は当時何時間くらいとれていましたか?
 
1回の睡眠時間は平均3時間くらいで、まったく眠れない日もありました。ご想像のとおり、かなり無茶な生活です(笑)。会社に泊まることも多かったので、家は『シャワーを浴びて、着替えを取りに帰るだけの場所』という感じ。睡眠時間が5時間睡眠以下の日が3日以上続くとさすがにキツくて、徹夜の翌日はできるだけ7〜8時間くらい眠るようにして、なんとかバランスをとっていました」(おかざきさん)
 
――そんな生活の中で、どうやって漫画を描いていたんですか?
 
「時間を確保するためのルールを作って、その中で漫画を描いていたんです。例えば、“明け方に帰った日は、朝7時までは漫画を描く”“朝まで漫画を描いてベッドに入ったら、お昼の『笑っていいとも』が終わるまでには起きて会社に行く”といったルールです。勤めていた会社がフレックス制で、何時に出勤してもよかったからできたことでもあるんですけどね。執筆が終わらない場合は、打ち合わせと打ち合わせの合間の15分を使ったり、出張の移動時間を利用して新幹線の中で描いたりしていました」(おかざきさん)
 
――過酷な生活ですね…。寝坊で約束の時間に遅刻してしまったことはありますか?
 
「実は私、絶対に遅れちゃいけないときに、寝坊したことが何度かあるんです…。出張の日に寝坊して新幹線に乗り遅れてしまった経験もあります。あのころは、実家暮らしをしている後輩に頼み込んでモーニングコールをしてもらっていたんですが、それでも気づきませんでした(笑)」(おかざきさん)
 
大切な予定がある日でも寝坊をしてしまうほど「超多忙」な生活を送られていたおかざきさん。睡眠時間確保のために実践していたのは「あの漫画」に描かれていたシーンと同じ方法だった、といいます。

『サプリ』の「イス3つ寝」は実話! おかざき作品・リアリティの秘密

『サプリ』1巻22ページ

『サプリ』1巻22ページ

――代表作『サプリ』は、広告代理店で働く主人公の仕事と恋愛がテーマになっていますが、漫画内のエピソードには、ご自身の実体験も盛り込まれているのでしょうか?
 
「そうですね。自分が広告代理店時代に体験したエピソードを、部分的に織り交ぜています。ヒロインの藤井ミナミがオフィスで仮眠をとるときに、イスを3つ並べてベッド代わりにするシーンは、まさにリアルな描写です」(おかざきさん)
 
――あれは、実話なんですね。
 
「当時は、同僚もみんなやっていましたね(笑)。漫画で描いたように、自分の身体のラインに合うようにイスの高さを微妙に変えると、フィットして寝やすいんです。役職がある人のイスには肘掛がついていて寝にくいので、後輩のイスを勝手に使って眠っていました。局長室にあるソファが一番寝心地がいいですけど、いつも“先客”がいてなかなか使えない(笑)。ソファもオフィスのイスも埋まっているときは、撮影に使う発砲スチロールのボードを床に敷いて眠っていました。意外と暖かくて寝やすいんですよ(笑)」(おかざきさん)
 
――ストーリー展開や結末も、ご自身の経験からくるものが多いのでしょうか?
 
「実は、ストーリーの流れや結末を考えてから描くことはしていないんです。まず『うれしい』とか『泣きたい』とか、自分が描きたい感情を自由に描くようにしています。そうすると、あとはキャラクターが勝手に動いて、ストーリーを変えてくれるんですよね」(おかざきさん)
 
――キャラクターにリアリティがあるからこそ、自然とストーリーが展開されるんでしょうね。では、病院を舞台にした『&』は、何をベースに執筆されたのですか?
 
「『&』の場合は、Twitterを使ってお医者さんや看護師さんの生活について伺い、物語にリアリティを持たせていったんです。医療業界は本当に忙しい方が多いので、取材時間をとってもらうのが忍びない。だからこの方法が最善かなと思って…」(おかざきさん)
 
――SNSでの取材には、どんなメリットがあるのですか?
 
「気になる医療関係者の方をTwitterでフォローしていると、『これからオペに行ってきます』とか、『今日も当直だ、眠い』とか、『朝ごはん食べ損ねた』とか、かしこまった取材じゃ絶対に聞けないことを、リアルタイムで知ることができるんです。もちろん、私からリプライやダイレクトメッセージを送って、実際にお会いして取材させていただいた方も何人かいらっしゃいますが、形式的な段取りをして取材依頼をするより、Twitter上でコミュニケーションをとる方がスムーズなこともあるんです。実際に『漫画家にフォローされた!』と面白がって、会ってくださる方も意外と多くいらっしゃいました」(おかざきさん)
 
――ところで、作品の中で登場人物のモデルになった方はいますか?
 
「『サプリ』なら会社員時代の上司やデザイナーさん、『&』ならTwitterで知り合った女医さんなど、身の回りの人をモデルにしたキャラクターやエピソードはたくさん。漫画を読んだ本人から『あの漫画のあのキャラクター、私でしょ?』と言われたこともあります(笑)」(おかざきさん)
 
「おかざき作品」の細部に宿るリアリティの理由は、緻密な取材と現実の人が織りなす“生のエピソード”でした。そこには、会社員として苦労してきたおかざきさんだからこそ描ける「仕事論」も織り込まれています。

「もっと楽に仕事を続けられるように」おかざきさんから働く女子へアドバイス

『サプリ』8巻124ページ

『サプリ』8巻124ページ

――作中の実体験の中で、一番印象に残っているエピソードは何ですか?
 
「『サプリ』で、責任者であるはずの上司がクライアントの要望を無視したまま、撮影当日に現場をすっぽかす…というシーンですね」(おかざきさん)
 
――何も知らされていないヒロイン藤井ミナミが、激怒するクライアントに必死に頭を下げて挽回しようとするシーンですね。
 
「責任のある人が頭を下げてしまうと、それは『会社』の責任になる。だから、役職もなく、何も知らない若い女の子に謝罪させて、お互いに納得できるやり方をその場で探らせるのが賢明…。今思えば、上司の思惑が、手に取るようにわかりますね(笑)」(おかざきさん)
 
――「謝ることも仕事のうち」というわけですね。
 
「組織に所属して働く人にとっては、特にそうだと思います。社会人になる前、某銀行の重役だった叔父から『若くて責任がないうちは、謝っても何も起こらないから、うまくいかなかったらとにかく謝っておけ』とアドバイスをもらったことがありますが、本当にそうでした。反対に、うまくいっているときって、自分の実力だと思いがちですけど、実は誰がやってもうまくいくものなんですよね」(おかざきさん)
 
――確かに、うまくいかないときや思いとおりに進まないときは、どう頑張っても何も変わらないような気がしますね…。
 
「会社員として仕事をしている以上、仕事の“流れ”は自分が思ったとおりにコントロールしづらいですよね。せいぜい、自分がその流れを止めないようにすることくらい。広告代理店の仕事では特に、クライアントやタレント事務所の意向を尊重して行動しなければならず、最初に自分たちが思い描いたとおりになることはほとんどありませんでした。だからこそ、1から10まで自分が思ったままに作ることができる漫画は、唯一の癒やしでした」(おかざきさん)
 
――漫画が息抜きになっていたんですね。
 
「『逃げ場』と言ってしまってもいいかもしれません。『&』のヒロイン青木薫も、医療事務をしながら副業でネイルサロンを経営しているんですけど、彼女も副業を逃げ場にしていますね。どちらかがうまくいかなくなっても、もう一方がある。そっちがうまくいかなくなればまたもう一方…って具合に、常に互いの存在が自分を支えてくれるんですよね」(おかざきさん)
 
――会社員時代につらいと感じたとき、どうやって乗り越えていたんですか?
 
「イライラすると、何もかもうまくいかなくなる。特に睡眠不足のときはイライラしやすくなるので、まずは冷静になること、人にあたらないこと、仕事の“流れ”を止めないように、自分のやるべきことをできるだけ効率よく終わらせられるよう、心がけていました。あとは、寝る前に嫌なことを思い出さないこと。家で寝るときも、会社で寝るときもそうです。今でも1日の終わりにベッドに入ったら、“自分の役目はもう終わった”と思うようにしています。それこそ、死んでまた生まれ変わるくらいの気持ちです。溶鉱炉に沈むターミネーターにでもなったつもりで、サムズアップして、潔く横になってますよ。“I’ll be back…”って(笑)」(おかざきさん)
 
――頼もしいですね(笑)。潔く寝て、起きたらまた頑張ろう! ということですね。
 
「一日の終わりに全てリセットするイメージです(笑)。働く女性を描いた漫画を描いてきて感じるんですが、今の働く女性はみんなすごく頑張ってますよね。少し頑張りすぎなくらい。『手を抜け』というのとは少し違うけど、もっと楽に仕事を続けられるようになるといいなと思います。副業だったり、趣味だったり。仕事で『もうダメだ!』と思っても、案外自分がそう思い込んでいるだけで、本当は大丈夫なことが多い。だから、もう少し肩の力を抜くヒントがあるといいと思うんですよね」(おかざきさん)
 
会社員として経験を積み、作品にも生かしてきたおかざきさんですが、今は退職し、3人の子どもを持つ母親になっています。会社員時代と比べて、生活スタイルはどのように変化したのでしょうか?

キャリアウーマンから母親へ。朝3時起床の超朝方生活にチェンジ!

『かしましめし』1巻30ページ

『かしましめし』1巻30ページ

――会社を退職されたのは、どういった理由からでしょうか?
 
「将来的に子どもが生まれたときのことを考えて、『会社員と母親と漫画家』の3つは、さすがに兼務できないだろうな、と思い、結婚を機に退職しました。おかげで長女が生まれるまでの1年間は、完全に専業漫画家でいられました」(おかざきさん)
 
――その1年間は、どんな生活リズムだったんですか?
 
「それが、会社員時代よりも不規則だったんですよ。一日中漫画を描いていられるのがうれしくて、ずっと家にこもって、漫画を描き続けてしまって。あまりに集中しすぎて、お正月の三が日もずっと漫画を描き続け、『初日の出』を1月4日に見たこともありましたね。長女が生まれるまでは、完全に昼夜逆転の生活でした」(おかざきさん)
 
――お子さんが生まれてから、睡眠時間を含めどのような生活の変化がありましたか?
 
「うちは子どもが3人ともすごく夜泣きをする子で…長女、長男、次女がみんな大きくなるまで、のべ10年間、3時間以上しっかり眠れたことがありませんでした。会社員時代も含めると、合計で30年間くらいはまとまった睡眠時間がとれていなかったことになりますね」(おかざきさん)
 
――30年間も! ということは、十分な睡眠時間がとれるようになったのはつい最近なのでしょうか?
 
「そうですね。今は一番下の子も小学生なので、それに合わせて朝型生活になっています」(おかざきさん)
 
――現在の1日のスケジュールを教えてください。
 
「寝る時間はすごく早いです。21時ごろには床について、起きるのは明け方の3時。それから長男が野球部の朝練のために起きてくる5時まで仕事をしたら、長男の朝食を作って、そのときに夕食の仕込みも一緒に済ませます。順番に起きてくる子どもたちのお弁当と朝食を作って見送ったら、8時〜16時まで仕事。そのあと買い物と夕食作りを済ませて、21時までの間に食事をしたり、子どもたちと過ごしたりしています。昼寝をする日もあるので、最低でも1日6時間は眠れていますね」(おかざきさん)
 
――さすが、家事にも手を抜いていないんですね! 無駄な時間が一切ない。
 
「料理は手の込んだものを作っているわけではなく、簡単かつ栄養がとれる煮込み料理ばかりですよ。最近だと、圧力鍋に切った野菜とコンソメと牛乳を入れて煮込むだけのミルクスープにハマっています。現在連載中の『かしましめし』という作品にも、圧力鍋はよく登場させています」(おかざきさん)
 
――仕事や恋に悩む主人公たちが、みんなで食事をして癒やされる…というお話ですよね。
 
「独身時代は食事も睡眠もおろそかにしていたけれど、今はどんなに忙しくても、子どもたちにちゃんとしたごはんを食べさせたい。それに、子どもたちと一緒に寝るのがすごく幸せなんです。上の子たちはもうそんな歳じゃなくなってきて、少し寂しいんですけど(笑)」(おかざきさん)
 
――確かに会社員時代の生活とは全然違いますよね。
 
「今は理想的な生活スタイルだと思う反面、もう一度会社員時代のように、クタクタになるまで起きて働いて、『あー、疲れた!』といってバタン! と寝てみたいという気持ちもあるんです。短時間で気絶するように熟睡して、ガバッと起きる、あの快感が忘れられなくて(笑)」(おかざきさん)
 
――寝る間もなく活動しているのが、おかざきさんの性に合っているんでしょうか(笑)。今後もおかざきさんの作品、楽しみにしています!
 
「ありがとうございます。漫画家って、会社員以上に『自分との戦い』みたいな部分が大きくて。自分の作品に対して、常に『もうダメだ』と『大丈夫』を繰り返しているんですよ。そういうときに、ポジティブな反応があるとすごく励みになります。これからも自分に負けないように、続けられる限りよい作品を描き続けていきたいと思います」(おかざきさん)
 
上品な佇まいかつ、パワフルで前向きなおかざきさん。会社員時代の激務と3人の子育てを乗り越えながら、多くの人の心をつかむ代表作を世に送り出すことができたのは、忙しい中でも常にポジティブに、「続ける」ための工夫を忘れずにいたから。お疲れ気味のフミナー女子は、ぜひお手本にしたいところですね。

【眠りの黄金法則】

  • どんな過酷な環境にいても寝心地を追求!
  • 1日の終わりにベッドに入ったら、“自分の役目はもう終わった”と考え即切り替え!
  • 現在は21時〜3時の“超”早寝早起きでゴールデンタイムを逃さない!

【ウィークデーの平均睡眠時間】

  • 毎日規則正しく6時間睡眠

【睡眠タイプ】

  • 無駄な時間を一切作らず、短時間でも熟睡するタイプ
おかざき真里さんのフミナー度は『40%』、今一歩よい眠りがとれていないようです。
bnr_list_check

おかざき真里さん
おかざき真里さん
漫画家・イラストレーター。1967年6月15日生まれ。美術大学卒業後、大手広告代理店に入社し、CMプランナーとして正社員勤務しながら執筆活動を続ける。1994年『バスルーム寓話』でデビュー以降、2000年に退職するまで、会社員と漫画家の仕事を両立。代表作に『サプリ』『&』など。「フィールヤング」にて『かしましめし』、「月刊スピリッツ」にて『阿・吽』連載中。
ツイッターアカウント:@cafemari

今日の運勢

おひつじ座

全体運

エネルギッシュに行動するけど、無理をしすぎる傾向も。何事も...もっと見る >