2018/04/17 20:00

メンタルヘルス対策|企業経営者・担当者が知るべき睡眠の重要性

企業経営者や担当者にとって、従業員の生産性向上や精神的な不調による休職・離職の予防策として、メンタルヘルスケアの重要性が高まっています。安定した企業活動を継続させるために必要な対策や睡眠の重要性などについて、北里大学で産業精神保健学教授を務める田中克俊先生にお伺いしました。

目次

  • メンタルヘルス不調のリスク
  • メンタルヘルス対策に取り組むための導入ステップ
  • メンタルヘルス対策における睡眠の重要性

メンタルヘルス不調のリスク

企業業績の悪化を現すイメージ図と男性社員

メンタルヘルスとは、精神面での健康を意味しており、安定した企業活動を続けるためには従業員のメンタルヘルスケアが重要です。メンタルヘルスの不調は従業員だけでなく、企業にもリスクを与える可能性があります。

メンタルヘルス不調による従業員のリスク

キャリアアップや業務効率に悪影響を与えるメンタルヘルスの不調によって精神疾患を患う人は年々増加しています。例えば、厚生労働省の調査ではうつ病や統合失調症、不安障害に罹患して通院する人は平成18年に162万人でしたが、平成23年には224万人に増加しています。
 
また、WHOは日本での潜在的なうつ病患者数が506万人と発表しており、適切なメンタルヘルスケアを行わなければ、今後ますます精神疾患の患者が増えると考えられます。ここでは、最近の職場でみられる代表的な精神疾患を説明します。

うつ病

うつ病は、職場で見られる代表的なメンタル疾患です。うつ病の原因はさまざまで、まだわかっていない部分もありますが、持続的なストレスや不眠が発症の大きなきっかけになると言われています。
 
「うつ病の症状は、強い憂うつ感のほか、興味や意欲の低下、食欲低下や頑固な不眠といった症状が毎日のように続くといったもので、適切に対処しなければ重症化し、自殺を引き起こす可能性もあります。企業の早期発見・早期介入が大事になります」(田中先生)

適応障害

適応障害は、はっきりと特定できるストレスに対して心や体が過剰な反応を起こしてしまっている状態で、うつ病やその他の精神疾患ほど重篤でない場合をさします。しかし、原因となるストレスや心身の症状が放置されそのまま続いてしまうと、うつ病などの精神疾患に進展する可能性があります。
 
「日常生活でストレスフルな出来事に直面すると、それに反応して一時的に心が動揺するのは当たり前のことですが、その多くは時間の経過とともに落ち着いていくのが普通です。しかし、時として必要以上に動揺が高まり日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。特にストレスに反応して生じた不眠などが続くと症状は重症化しやすくなります」(田中先生)

不安障害

不安障害は、適応障害と違ってはっきりした理由がないにも関わらず、強い不安や恐怖を感じてしまう疾患です。
 
「過度で持続的な不安は、学校や家庭、仕事上で多くの支障をきたすほか、内科的検査では特定できない頭痛やめまい、不眠などのさまざまな身体的不調も引き起こします。不安は、正常と病気との区別がつきにくいものですが、必要以上に強く長く続く場合には不安障害を疑うことも必要です」(田中先生)

メンタルヘルス不調による企業のリスク

企業を支える従業員が健康問題を抱えていると、休職や業務効率の低下など、企業のリスクに発展することもあります。

生産性の低下

社員がメンタルヘルスに不調をきたし、精神状態が不安定になると、集中力や思考力、意欲などが低下します。
 
「人の心をつくり出すのは脳の役割ですから、メンタルヘルス不調は、いわば脳の不調状態とも言えます。脳は意思や感情、記憶、体調管理にも関わっていますから、メンタルヘルスが不調な状態では、当然ながら仕事の生産性や安全性は低下してしまいます。また、精神疾患だけでなく、身体疾患のリスクも高めてしまいます」(田中先生)

コスト面の問題

近年、メンタルヘルス不調で休職される労働者の数が増え続けています。休職者の増加は、休職中の給与や社会保険料の負担に加え、代替要員の手配など、コスト面での負担となります。
 
「労働者の休業事由の多くをメンタルヘルス不調が占めています。また、昨今の民事訴訟では、従業員のメンタルヘルス不調を予防するために必要な安全(健康)配慮義務を十分に果たさなかったとして、多額の損害賠償が企業に求められるケースも少なくありません。職場のメンタルヘルス対策の推進は、企業のリスクマネジメントの面からも欠かせなくなっています」(田中先生)

社会的な信用の低下

メンタルヘルス不調者が一度休職すると、周囲の社員のストレスも増大し、企業イメージを悪化させる要因にもなります。
 
「メンタルヘルス不調者が多い企業で働きたいと思う人はいません。健康経営に積極的に取り組んでいる企業では就職希望者も増えていると聞きます。メンタルヘルス対策は、有能な人材や良好な企業イメージの確保という面からも大変重要です」(田中先生)

メンタルヘルス対策に取り組むための導入ステップ

医師のカウンセリングを受ける女性

ここでは、企業経営者や担当者が知っておきたい、メンタルヘルス対策における望ましい導入ステップについて紹介します。

メンタルヘルス対策の導入ステップ

企業が主体となってメンタルヘルス施策を導入するには、3つのステップが重要です。

ステップ1:経営者がメンタルヘルスについて正しい知識を持つ

「まずは、経営者がメンタルヘルスに関する正しい知識を身につけることが大切」と田中先生。
 
「会社は働く場所ですから、社員が主体となって健康づくりを行う余地はそれほどありません。まずは、経営者が主体となってメンタルヘルス対策に取り組む姿勢を示すことが重要です。その上で、社員一人一人のメンタルヘルスリテラシーを高めるための教育や支援を行い、社員自身で自己のメンタルヘルスケアができるようにすることが大切です」(田中先生)

ステップ2:社内に気軽に相談できる窓口をつくる

メンタルヘルス不調者の中には、本人だけでは解決できない問題や、職場では相談できない問題を抱えている人もいます。そうしたケースに備えて、社内に気軽に相談できる窓口があるとよいでしょう。
 
「社内に産業医や保健師などの健康管理スタッフがいれば、いつでも安心して相談できる環境が生まれます。社員に対して具体的なアドバイスや指導を与えられるよう健康管理スタッフにはメンタルヘルスに関する研修を十分受けてもらう必要があります。また、必要に応じて精神科専門医によるセカンドオピニオンやアドバイスも受けられると理想的でしょう」(田中先生)

ステップ 3:社内状況に合わせた施策、取り組みを検討する

企業のメンタルヘルス対策は、仕事内容や企業規模、経営状況など、さまざまな要因を考慮しなければならないため、企業ごとに適した施策や取り組みを実施する必要があります。
 
「近年、過重労働の防止やストレスチェックの実施などメンタルヘルス対策に力を入れる企業は増えてきています。しかし、その効果はなかなか現れず、かえって不調者の数が増える一方という企業も少なくありません。単に労働安全衛生法を守るだけではメンタルヘルス不調者を減らすことはできません。法律は最低限と考え、『本当に効果的な施策とは何なのか』をそれぞれの会社が真剣になって考える必要があります」(田中先生)

メンタルヘルス対策における睡眠の重要性

メンタルヘルス対策における睡眠の重要性

心身の健康に保つうえで欠かせないのが睡眠です。ここでは、メンタルヘルス対策における睡眠の重要性について紹介します。

睡眠とメンタルヘルスの関連性

不眠などの睡眠の問題が生じると、うつ病などの精神疾患につながる可能性が高くなります。海外の研究では、睡眠の問題がその後のメンタルヘルス不調の最も大きなリスク要因であると報告されています。日本の男性労働者を対象とした調査でも、不眠の問題を抱えている人はそうでない人と比較してうつ病の発症リスクは約7倍高かったという研究結果があります。田中先生も、「メンタルヘルス不調のほとんどが、不眠から始まっている」と語ります。
 
「睡眠は脳を休める唯一の時間ですから、睡眠が不十分だと脳の疲労は蓄積し、うつ病をはじめとするさまざまなメンタルヘルス不調が生じやすくなります。食べることと眠ることは、ヒトが生き物として健康に生きて行くための必須の条件です。良質な睡眠がとれない状況は、まさに万病のもとであり、心身の健康の黄色信号(未病)の状態と言えるでしょう。メンタルヘルスに限らず、社員の健康管理のためには、まず睡眠に注目することが大事だと思います」(田中先生)

睡眠とストレス耐性の関係性

睡眠が、高ストレス者対策にも有効との結果も示されています。
 
「高ストレス労働者(うつ・不安調査票のK6で5点以上)に対して睡眠教育・指導を行ったところ、3カ月後のうつ・不安得点が大きく改善しました。十分な時間と質の高い睡眠の確保は、単に睡眠を改善させるだけでなく、労働者のメンタルヘルスを改善させるための方法としても有効です。また、同様の研究で、睡眠介入によって労働者のワークモチベーションも向上したことが示されています。良質な睡眠は脳の健康度を高め、ストレスに対する耐性やポジティブメンタルヘルスの向上に役立つと考えられています」(田中先生)

不眠の認知行動療法によるうつ・不安得点K6の変化

Yamamoto, M. et al., “Efficacy of sleep education program based on principles of cognitive behavioral therapy to alleviate workers’ distress”, Sleep Biol. Rhythms (2016) 14:211–219

睡眠からはじめる健康経営

生産性を高めるために、睡眠時間を削って仕事をしているという人もいるかもしれません。しかし、田中先生は、「生産性を上げたいからといって長時間労働を続けていては、かえって作業効率の低下を招く」と警鐘を鳴らします。
 
「米国では、労働者の安全性・生産性を向上させるためには睡眠に注目すべきとの国家的な報告(Wake up America)が出されています。日中のパフォーマンスは、脳の健全さがあってこそ成り立つものです。脳の疲労回復のために欠かせない睡眠をないがしろにしては、本来の力が発揮できず、仕事の質が低下して業務効率も自然と下がっていきます。社員の健康と生産性の向上を目指すためには、まずは睡眠時間を確保するための労働時間管理をしっかり行うほか、労働者が自ら良質な睡眠を維持できるような睡眠教育や指導の機会を準備しておくことが必要です」(田中先生)

メンタルヘルス対策としての睡眠改善は、企業にとっても効果が目に見えやすいアプローチ方法かもしれません。メンタルヘルス対策の必要性は実感していても、何から取り組むべきか分からない、という経営者や担当者は、導入を検討してみてはいかがでしょうか?

タイプ別の睡眠ソリューションで健康経営を支援
「Sleep Styles睡眠力向上プログラム」とは?
経営的な視点から社員の健康管理をサポートする法人向けプログラムです。社員が抱える睡眠の課題を、それぞれのタイプに合わせたアプローチで効果的に解消へ導くことで、医療費削減や生産性の向上など、企業課題の改善をお手伝いします。
 
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<参照>
心の健康サポートガイド
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/docs/supportguide.pdf
 
社員の心の健康の保持増進のための指針
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/roudou/an-eihou/dl/060331-2.pdf
 
東京都労働相談情報センター
http://www.kenkou-hataraku.metro.tokyo.jp/mental/index_01.html
 
知ることから始めようみんなのメンタルヘルス
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_depressive.html
 
うつ病の初期症状とメンタルケア方法のまとめ
https://fuminners.jp/newsranking/8082/
 
統合失調症ってどんな病気?症状・対策・治療法まとめ
https://fuminners.jp/newsranking/5669/
 
改訂 心の健康 問題により休業した社員の職場復帰支援の手引き
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/101004-1.pdf
 
基礎からわかる職場のメンタルヘルス(働く人たちのこころの健康づくりのために)
http://www.city.nagoya.jp/shiminkeizai/page/0000033428.html
 
ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/
 
社員の心の健康の保持増進のための指針
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/roudou/an-eihou/dl/060331-2.pdf
 
職場におけるメンタルヘルス対策の推進について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000060315.pdf

photo:Getty Images

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