2018/04/16 17:00

成長ホルモンとは|分泌量を増やすメリットと増やし方

成長ホルモンは、成長期の子どもだけが必要とするホルモンでありません。「健康的な身体」や「健康的な精神」を保持していくために、成長期を過ぎた大人にとっても重要な役割を果たすホルモンです。

今回は、成長ホルモンの働きと身体への影響、分泌量の増やし方などについて、同志社大学大学院生命医科学研究科教授で医学博士の米井喜一先生にお話しを伺いました。

目次

  • 成長ホルモンとは
  • 成長ホルモンの働きと身体への影響
  • 成長ホルモンの分泌を促す生活習慣
  • 成長ホルモンの分泌を妨げる生活習慣
  • 成長ホルモンが正常に分泌されないときの影響

成長ホルモンとは

子どもと大人

成長ホルモンは、骨や筋肉、各組織の成長を促進し身体を作ったり、健康的な身体を維持したりするのに必要なホルモンです。脳の下にあり、脳にぶらさがっているように見えることから、「脳下垂体(のうかすいたい)」と呼ばれる内分泌器官から分泌されるホルモンの一つで、191個のアミノ酸からなるタンパク質でできています。

成長ホルモンの働きと身体への影響

身体測定されている子ども

脳下垂体から分泌される成長ホルモンは、直接、あるいは、肝臓に働きかけその刺激によって分泌される「IGF—I(インスリン様成長因子—I)」を介して、全身の筋肉、骨、心臓、消化器などの各器官に働きかけます。
 
「成長ホルモンは、成長期に最も多く分泌され、背が伸びるなど身体の成長に影響します。成長期を過ぎると、分泌量は低下しますが、筋肉量の保持や増加などの身体面への影響のみならず、精神的な健康維持にも影響して重要な役割を果たします」(米井先生)
 
ここでは、成長ホルモンの働きと身体への影響について説明します。

成長ホルモンの働き

成長ホルモンの働きは、以下の2つに大別することができます。

細胞に働きかけて身体を作る

骨、筋肉、心臓やその他全身の臓器などの細胞において、タンパク合成を促進し、細胞増殖を促す働きがあります。この働きことをアナボリック(同化)作用と呼び、この働きによって骨や筋肉、各器官などが発達し保持されます

代謝を調節して健康的な身体を作る

糖質の代謝や脂質の代謝を調節して、身体のエネルギー源となる糖質の量や、身体に蓄える脂肪の量のバランスを保ちます。また、身体の老化を促進させる糖化現象(※)を防ぐ働きも併せ持ちます。これらの働きは「抗インスリン作用」と呼ばれます。
 

(※)必要以上に摂取され蓄積された余分な糖質により、細胞に悪影響を与える現象。

成長ホルモンの身体への影響

上記のような成長ホルモンの働きによって、成長ホルモンが、身体にどのような影響を与えるのか、以下にまとめました。

  • 骨が成長、発達する。
  • 筋肉が成長、発達する。
  • 肝臓など全身の臓器や器官が成長、発達する。
  • 骨や筋肉を保持する。
  • 健康な皮膚や毛髪を作る。
  • 脂質の代謝を促し、脂肪がたまらないようにする。
  • 糖代謝の正常な状態を維持し、血糖値を正常に保つ。
  • 血圧を下げる。
  • 傷の治りを促す。
  • 生殖機能に影響を及ぼす。
  • 記憶力を高める。
  • 精神的な安定を保つ。
  • 物事に取り組む意欲を高める。

成長ホルモンの分泌を促す生活習慣

自然の中で眠る女性

成長ホルモンの分泌を促すには、成長ホルモンが分泌されるタイミングを知って、タイミングに合わせた正しい生活習慣を身につける必要があります。以下に、成長ホルモンのタイミングと分泌を促す生活習慣についてまとめました。

成長ホルモンが分泌されるタイミング「睡眠中」

睡眠中は、成長ホルモンが最も多く分泌されるタイミングです。
 
入眠時、約90分かけて「浅いノンレム睡眠→深いノンレム睡眠→浅いノンレム睡眠」に移り、その後「レム睡眠→ノンレム睡眠」のサイクルを約70〜110分かけて数回繰り返します。成長ホルモンは、入眠直後の「深いノンレム睡眠」の段階のときに分泌します。
 
「寝入ってから約30〜60分後、深いノンレム睡眠が現れるときが、最も多く成長ホルモンが分泌されるタイミングです」(米井先生)
 
そのため、成長ホルモンの分泌にとって、途中で目が覚めることのない質の高い眠りが大切なのです。以下で、成長ホルモンの分泌を増やすための睡眠法について説明します。

毎日決まった時間帯に眠る

成長ホルモンの分泌を最大限にするためには、毎日決まった睡眠のリズムで眠ることが重要です。
 
「成長ホルモンが睡眠中に分泌されるタイミングは、睡眠のリズムに伴います。夜寝て朝起きる生活の人もいれば、仕事の都合などで、朝寝て夜起きる生活の人もいるでしょう。成長ホルモンの分泌にとっては、どちらか一方が良いということではなく、毎日決まった時間に寝て起きる、睡眠のリズムを保ち続けることが重要なのです。稀に、『夜11時から2時までは成長ホルモンが分泌されるゴールデンタイム』といわれることがありますが、睡眠のリズムは人によって異なるため、すべての人に当てはまるわけではありません」(米井先生)

深く眠れるよう心がける

睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠が交互に訪れるサイクルがあります。このサイクルが崩れてしまうと、成長ホルモンの分泌を妨げることになるので注意してください。
 
「就寝1〜2時間前に入浴し、身体を温めるとよいでしょう。温まった深部体温が就寝時に下がってくることで、スムーズに眠りにつくことができ、深い眠りにつながりやすくなります」(米井先生)
 
睡眠のサイクルについては以下の記事で詳しく解説しています。レム睡眠・ノンレム睡眠について知りたい方は参照してみてください。

Check

フミナーズ記事「レム睡眠・ノンレム睡眠とは?周期や脳波から知る適切な睡眠時間」

→眠りのメカニズムについて図説入りで解説しています

心地よさを感じる寝具を使う

ストレスを感じた時に分泌される「コルチゾル」というホルモンは、成長ホルモンの分泌をさまたげてしまうため、リラックスした状態で眠ることが重要です。リラックスして心地良く眠るために、自分に合った枕やマットレスなどの寝具を使用するとよいでしょう。

環境音でリラックスする

「音が一切ない方が眠りの邪魔にならないと考える人もいるようですが、耳栓などで音を完全に遮断すると、自分の心音などが際立ち、かえって神経が冴えて眠れなくなる場合があります。せせらぎの音や木々が揺れる音など、自然の中にある音が聞こえてくる方が、リラックスして、深く眠れるようになると思います」(米井先生)

就寝前はスマホやパソコンの使用を控える

スムーズな入眠を促すホルモンである「メラトニン」が正常に分泌されていることが大切です。就寝前にスマホやパソコンの画面を見ていると、メラトニンの分泌が抑制され、寝つきが悪くなり、睡眠の質も低下してしまうため、成長ホルモンの分泌を妨げてしまいます

成長ホルモンが分泌されるタイミング「運動中」

運動によって蓄積される筋肉の疲労を軽減させるために、乳酸が生成されます。この乳酸が脳下垂体を刺激し、成長ホルモンの分泌を促します。そのため、乳酸を発生させやすい「スロートレーニング」が、成長ホルモンの分泌には効果的です。

自宅でできるスロートレーニング

スロートレーニングとは、軽い負荷で、ゆっくりかつ持続的に筋肉を動かすことにより、激しいトレーニングをした時同様に乳酸を分泌させるトレーニングメニューのことです。自宅で行うなら、気軽にできるダンベル運動がよいでしょう。

やり方

  • 0.5〜1.5kgのダンベル(水を入れたペットボトルでも可)を両手に持つ。
  • ゆっくりと腕を伸ばしては、またゆっくりと腕を曲げるという動作を20回ほど繰り返す。

「約2週間トレーニングを続けると、1〜2割ほど成長ホルモンの分泌量がアップします。日常的にトレーニングに取組むことは、加齢による身体の変化に対応するために必要なことですが、きつすぎるトレーニングはかえってストレスになりますので、自分にあったメニューで継続することが大切だと思います」(米井先生)

パラレルスクワット

「成長ホルモンの分泌量をアップさせるには、より多くの乳酸が分泌される、大腿四頭筋(太ももの前側にある筋肉)など太もも周辺の大きい筋肉を中心にトレーニングするとよいでしょう」(米井先生)
 
下半身の筋肉を重点的に使う「パラレルスクワット」がおすすめです。大腿四頭筋を中心に、下半身の筋肉が満遍なく鍛えられるメニューです。最初は自体重で、慣れてきたら負荷をかけてやるのがよいでしょう。

やり方

  • 肩幅より少し広めに両足を開き、つま先がやや外側を向くように立つ。両腕は胸の前で組む。
  • 太ももの裏側が床と平行になるまで、5秒かけてゆっくりと膝を曲げる。その際、お尻を後方につき出し、背筋は反るように伸ばし、膝がつま先より前に出ないように曲げる(直角に近い曲げ方)のがポイント。
  • 5秒かけて1の姿勢に戻る。ただし、このときは、膝を伸ばしきるまで戻らないようにする(慣れてきたら5秒を10秒にする)
  • 2と3の動作を10〜20回を目安に繰り返す。回数や負荷をかけ過ぎたり、正しくないフォームで行ったりすると、膝を痛める恐れがあります。正しい知識を身につけ、適度な休息をとるなど自分に合ったペースで行ってください。

成長ホルモンが分泌されるタイミング「空腹時」

空腹を感じると、食欲を増進させる「グレリン」というホルモンが分泌されます。グレリンは成長ホルモンの分泌を促す作用もあるため、空腹を感じる前に間食をすると、グレリンの分泌が妨げられて、成長ホルモンの分泌も低下します。
 
「胃の中の食べ物は、個人差はありますが、食後2〜3時間ほどで消化されます。成長ホルモンの分泌のためには、消化されるまでのあいだに食べ物を胃に入れる間食をしないことが望ましいです」(米井先生)
 
タイミングとともに成長ホルモンの材料となる、以下のような栄養素を意識することで、分泌促進につながりやすくなります。

成長ホルモンの材料となる栄養素

成長ホルモンはタンパク質で構成されているため、食事でタンパク質を摂取することが重要になります。また、栄養素は相互的に作用するので、PFCバランス(※注)を守った食事をしましょう。
 
「タンパク質は肉や魚、脂質は植物油やバター、炭水化物はお米やパン、などに多く含まれます。メニューを工夫し、PFCバランスの比率を調整するとよいでしょう」米井先生
 

(※注)「PFCバランス」とは、タンパク質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)という3栄養素、それぞれから摂取するエネルギーのバランスのことで、総カロリーが「P:F:C=2:2:6」の比率になるように摂取することが理想的とされています。

成長ホルモンの分泌を妨げる生活習慣

飲酒をしている女性

日常生活の中には、「ストレス」や「過度な飲酒」など、成長ホルモンの分泌を妨げる要因もあります。ここでは、主な要因を解説します。

ストレス

成長ホルモンは、ストレスを感じると分泌量が増えるホルモン「コルチゾル」に、分泌を妨げられます。そのため、成長ホルモンが最も分泌されるタイミングである睡眠時は、精神的にリラックスできていた方がよいのです。就寝まで昼間のストレスを引きずりがちな人は、入浴や就寝前の軽いストレッチ、リラックスできる音楽を聴くなど、自分に合った解消法を探してみてください。

過度な飲酒

飲酒によって摂取したアルコールが体内で分解されると、「アセトアルデヒド」という毒素が発生し、蓄積されます。アセトアルデヒドには、神経を刺激し眠りを浅くする作用があるので、過度な飲酒は、成長ホルモンが最も分泌されるタイミングである睡眠の質を下げてしまいます
 
「日本酒なら1合、ビールら中瓶1本など、適度な飲酒量(※)にとどめましょう」(米井先生)

(※)厚生労働省「飲酒ガイドライン」

成長ホルモンが正常に分泌されないときの影響

白衣と聴診器

成長ホルモンが正常に分泌されない場合、病気につながる恐れがあります。以下で、その代表的な病気を解説します。

下垂体性小人症(かすいたいせいこびとしょう)

成長ホルモンの欠乏により、低身長などの成長障害が生じる病気です。原因不明と言われていますが、成長ホルモンが分泌される脳下垂体に異常が生じていることを原因とする説もあります。主な治療法は、注射によるヒト成長ホルモンの投与です。

アクロメガリー(先端巨大症)

成長ホルモンが過剰に分泌され、あごや鼻など身体の一部が肥大化する病気です。脳下垂体にできた腫瘍が原因といわれます。発症した場合は、腫瘍を切除する手術を行うことが一般的です。
 
このような症状については、専門医を受診し適切な対処をする必要があります。
 
<参照>
「48歳からも成長ホルモンできれいになる。」 監修:米井嘉一 ほか(ブルーロータスパブリッシング)
厚生労働省「飲酒ガイドライン」

photo:Getty Images

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