ドライアイの症状と原因とは|目の病気について
ドライアイは、目を潤す涙の量が減少するなどで目が乾燥し、異物感や充血、かゆみといった症状が生じる疾患です。スマホやパソコンを長時間使っていることや、睡眠不足などの乱れた生活習慣が主な原因とされています。
今回は、ドライアイの症状と原因、進行したときのリスク、対処法や治療法、予防法について、吉祥寺森岡眼科院長の森岡先生にお話を伺いました。
目次
- ドライアイの症状
- ドライアイが起こる原因
- ドライアイの対処法
- ドライアイが進行するとかかる疾患
- ドライアイの主な治療法
- ドライアイの予防法
ドライアイの症状

健康な目は涙で表面が潤っていますが、その涙の量と質が低下すると、目の表面が乾燥しドライアイになってしまいます。以下で、ドライアイで生じる具体的な症状と、ドライアイを簡単にセルフチェックする方法を紹介します。
ドライアイの具体的な症状
ドライアイになると目の表面の乾燥により、目の不快感や充血、かゆみなどの症状が出ます。以下でドライアイの症状について解説します。
ゴロゴロとした不快感
健康な目の表面は涙で潤っているため、まばたきの際に生じる目の表面とまぶたの摩擦は軽減されています。しかしドライアイでは涙が不足した状態のため、この摩擦が軽減されずに目の表面が刺激されてしまい、ゴロゴロとした違和感が生じたり、場合によっては痛みをともなったりします。
充血
結膜(白目の表面を構成する層)には、毛細血管と呼ばれる細い血管が走っています。目の表面の乾燥などによって毛細血管が刺激を受けると、毛細血管が拡張し、大量の血液が流れるので、白目が赤く見えるようになります。
「目の充血は、ドライアイ以外にも、例えば睡眠不足などからくる疲れによって毛細血管が拡張している場合などもあり、身体に何らかの不調が生じているサインです。睡眠をとって目や身体を休ませましょう」(森岡先生)
かゆみ
目の表面を潤す涙が減少すると、涙が担っている目の表面を保護する役割が弱まり、目が細菌や大気などから刺激を受けやすくなります。その刺激により、脂肪細胞からヒスタミンと呼ばれる物質が放出され、その影響でアレルギー反応である「かゆみ」が生じます。
ドライアイのセルフチェック法
目の乾燥を頻繁に感じる、または上記で紹介したような症状を感じるなど、ドライアイが疑われるときは、セルフチェックをしてみましょう。
チェックの方法は「10秒間まばたきをせずに、目を開け続ける」ことです。目の乾きを感じて、目を開けていられない人はドライアイの疑いが高いので、専門医に相談しましょう。
ドライアイが起こる原因

ドライアイは、涙の量の減少と質の低下によって引き起こされます。涙の量が減る原因は、分泌量自体の減少と、過剰な蒸発によるものが挙げられ、涙の質の低下は、涙を構成する成分のバランスが崩れることによって引き起こされます。
ここではドライアイの原因となる、涙の量と質の低下について解説します。
涙の成分とドライアイのメカニズム
涙は、「油層」「涙液層(るいえきそう)」「ムチン層」の3層の成分によって構成されています。それぞれの分泌量が何らかの要因によって減ったり、3層の分泌量のバランスが崩れ、質が低下したりすることで、目の表面の乾燥につながります。以下に涙を構成する3層の役割についてまとめました。
油層
まぶたの際にあるマイボーム腺から分泌され、涙自体の蒸発を防ぐ役割があります。油層を成す油分が減ると、涙液の蒸発を正常に防ぐことができず、目が乾燥しやすくなります。
涙液層
涙の大部分を占める涙液層は、眉尻の下あたりにある涙腺から分泌される涙液で構成され、目の保護など重要な役割を持ちます。分泌量の減少や、過剰な蒸発などで涙液が減ると、目の表面に留まる涙そのものの減少につながります。
ムチン層
ムチン層は結膜(白目の表面)から分泌され、涙液が目の表面に均一に定着する役割を担っています。ムチン層を成すムチンの分泌が減ると層が不安定になり、涙液が目の表面に正常に定着しません。そのため、目が乾燥してしまいます。
涙の量と質が低下する要因
涙の蒸発、分泌量の低下、質の低下の要因は、エアコンやコンタクトレンズの使用、加齢、ストレスなどさまざまです。以下に涙の量と質に影響を与える要因についてまとめました。
エアコンなどによる空気の乾燥
「エアコンなどにより空気が乾燥していると、涙が過剰に蒸発しやすくなります。空気が乾燥したオフィスで長時間パソコンを見続けたり、エアコンをつけたまま就寝したりするのは極力避けましょう」(森岡先生)
スマホやパソコンの長時間使用
「パソコンやスマホなどを長時間使用し目を酷使していると、目の周りの筋肉が硬直し血行不良になります。その影響で涙腺が機能低下を起こし、ドライアイになる恐れがあります。また、集中してパソコンの画面などを見続けていると、自然とまばたきの回数も減ってしまいます。まばたきには、目の表面へ涙を行き渡らせ、乾燥から目を守る働きがあるので、まばたきの回数が減ると目が乾燥しやすくなってしまうのです」(森岡先生)
コンタクトレンズの使用
「コンタクトレンズを装用すると、当初はこれを異物として判断し流し出そうとして涙が分泌されます。コンタクトレンズの装用に慣れてくると、次第に異物として判断されなくなり涙の分泌も減っていきます。裸眼でも涙は蒸発していますが、コンタクトレンズ装用時はさらに蒸発量が増えてしまうため、結果として目が乾燥してしまいます。特に使い捨てのソフトレンズは、装着感がよいのでハードレンズよりも目が異物として認識しにくくなる上に、レンズそのものが涙を吸収しています。そのため、涙の量が減る、涙の3層構造を不安定にして涙の質の低下などにつながりやすくなります」(森岡先生)
加齢
「涙の量と質は、加齢の影響を受けます。涙の成分である涙液は、眉尻の下あたりにある涙腺で生成されますが、加齢とともに血管が老化し、涙液を生成するための水分やタンパク質などの栄養分が涙腺に届きにくくなっていきます。そのため、涙の量そのものが減ってしまいます。同時に、マイボーム腺から分泌される油分も減るため、油層が不安定になり涙の質の低下も生じてしまうのです」(森岡先生)
ストレス
「涙の分泌は、自律神経における副交感神経がコントロールしています。疲労やストレスを強く感じている人は副交感神経の働きが鈍い状態なので、涙が正常に分泌されなくなる可能性があります」(森岡先生)
特に以下のような睡眠不足や疲れ目には注意してください。
睡眠不足
睡眠不足が続くと、疲労やストレスが解消されず蓄積し、自律神経が乱れることがあります。自律神経の乱れは、副交感神経がコントロールする涙の分泌に影響を及ぼす可能性があるため、睡眠をしっかりとって、ストレス解消に努めましょう。
疲れ目
パソコンなどで目を酷使することによる疲れ目を対処せずに放置し続けると、「疲れ目」自体をストレスと感じてしまいます。「疲れ目→ストレス→自律神経の乱れ→涙の分泌に影響→乾燥→疲れ目」の悪循環が生じてしまう前に、早めに対処しましょう。
シェーグレン症候群
「シェーグレン症候群は自己免疫機能に異常をきたす疾患で、ドライアイの原因となる病気です。遺伝子などに原因があるといわれていますが、はっきりとは解明されていません。免疫機能が、涙液を分泌する器官である涙腺を異物として判断し攻撃してしまうため、涙腺が正常に機能しなくなっていきます。そのため涙の量が減り、ドライアイになるのです」(森岡先生)
ドライアイの対処法

ドライアイの最も一般的な対処法は目薬をさすことですが、ほかにも目を温めたりツボ押しをしたりすることも効果的です。ここではドライアイの対処法について具体的に解説します。
目薬をさす
目薬は、含まれる成分によって、それぞれ以下のような効用が期待できます。
人工涙液:涙の成分に近い配合の目薬で、涙の量を補い、目の乾燥を和らげることができます。
ヒアルロン酸:高い保湿力で目の潤いを保ちます。
ジクアホソル:結膜に作用することでムチン層を成すムチンの分泌を促し、涙を安定的に目の表面に保たせ、目の乾燥を防ぎます。
「目薬は目尻にさしましょう。涙は目尻から目頭に流れるため、涙と一緒にまんべんなく目薬の成分が行き届くようになります」(森岡先生)
目を温める
蒸しタオルや市販のホットアイマスクなどを使用して目を温めることで、目の周りの筋肉の硬直や血行不良を解消し、涙腺の機能低下やまばたきの減少を改善することができます。
・蒸しタオルの作り方
水で濡らしてよくしぼったタオルを、電子レンジで500Wなら1分半、600Wなら1分間温めます。温めたタオルで火傷をしないように注意しましょう。
「蒸しタオルで目を温める時間は2〜3分、市販のものは商品に記載されている使用時間を守り、温度が下がったと感じたら使用を終えます。冷えた状態で使用し続けていると、かえって血流悪化や筋肉の硬直を助長する恐れがあるので避けましょう」(森岡先生)
目の周りのツボを押す
目の周りには、涙腺を刺激して涙液の分泌を促す効果のある「ツボ」があります。
「黒目のすぐ真下にある『承泣(しょうきゅう)』と呼ばれるツボと、眉尻の下あたりにある涙腺周辺を押しましょう。それぞれ3秒ほど痛みを感じない程度に押してください。左右とも、5回ずつ行いましょう」(森岡先生)
ドライアイが進行するとかかる疾患

ドライアイは、適切な対処をせず放置していると、「角膜潰瘍」に発展し視力低下や失明などを引き起こす恐れがあります。角膜潰瘍について以下にまとめました。
角膜潰瘍(かくまくかいよう)
ドライアイにより目の表面が乾燥することで、角膜が傷ついたり、角膜がウイルスや細菌に感染しやすくなったりしてしまいます。その結果、角膜を構成する層「角膜実質」まで傷が及ぶ病気が「角膜潰瘍」で、ヒリヒリとした痛みや、角膜が白く濁って目がかすむなどの症状が出ます。症状が悪化すると、角膜の濁りが強くなり、視力低下や失明につながる恐れがあります。
ここまで症状が進行してしまうと、目の休息や市販の目薬などでは対処できなくなりますので、早めに専門医に相談してください。
ドライアイの主な治療法

専門医のもとで行われるドライアイの治療においても、主に目薬が使用されます。ただし「市販の目薬」と「病院で処方される目薬」は、症状の重さや原因によって使い分ける必要があります。また、症状が治まらない場合は、「涙点プラグ」と呼ばれる手術による治療が施されることもあります。
目薬
目薬は症状に応じて使用する必要があります。ドライアイによって引き起こされた症状が軽度の場合は市販の目薬で問題ありませんが、痛みや見えにくさなどがある場合は専門医を受診し、目薬を処方してもらいましょう。
「ドライアイにより角膜(黒目の表面)が傷つき、目の痛みや見えにくさなど重度の症状があらわれた場合は、眼科で処方される症状に応じた目薬を使用することが望ましいです。また、軽度でも症状が長く続いている場合は、専門医に相談してみてください」(森岡先生)
涙点プラグ
涙点プラグは、涙の流出口である涙点に、直径0.7〜0.9mmほどのシリコンでできたプラグ(栓)をさしこむ手術による治療です。
「涙点をふさぐことで涙の排出が抑制され、涙が目の表面に留まりやすくなります。プラグをさしこんでいる限りはその効果が続き、ドライアイを防止します。目を強くこすり過ぎてしまうなどして外れてしまった場合は、再度施術が必要になることがあります」(森岡先生)
ドライアイの予防法

ドライアイを予防するためには、「目の休息」と「目を乾燥から守る」ことが大切です。日常的に予防をすることでドライアイの症状が出づらくなるので、意識的して実践しましょう。
スマホやパソコンの使用時はこまめに休息する
スマホやパソコンを使用する際は、定期的に目の休憩時間を設けることが重要です。
「休憩を入れるタイミングの目安は、1時間に5〜10分程度です。目をつぶったり、目を温めたりするとよいでしょう。意識的にまばたきの回数を増やすことも効果的です。1分間に10回以上を目安に、まばたきをしてみましょう」(森岡先生)
エアコン使用時は部屋の湿度を40%以上に保つ
夏場や冬場にエアコンを使用する際は、空気の乾燥に十分に注意を払うことが重要です。
「エアコンの使用時は、加湿器などを併用して湿度を40%ほどに保つとよいでしょう。空気の乾燥による、涙の過剰な蒸発を和らげることができます」(森岡先生)
規則正しい生活を送る
規則正しい生活を送ることでストレスが蓄積しにくくなり、ドライアイの予防につながると森岡先生はいいます。目薬やホットタオルの使用と合わせて、ストレスをためないよう、睡眠や運動などの生活習慣を見直してみましょう。
「ストレスは、自律神経の乱れや目の周りの筋肉の硬直などを生じさせ、ドライアイの原因になることがあります。疲れやストレスが溜まっているときは、ストレス解消に努め、質のよい睡眠をとれるようにしましょう。夜更かしをせず、就寝前の入浴やストレッチで心身をリラックスさせるなどが効果的です。また、適度な運動は全身の血行をよくしてくれるので、ドライアイにつながる筋肉の硬直を軽減してくれます。1日30分程度のウォーキングなど、無理なく続けられる運動を習慣づけましょう」(森岡先生)
<参照書籍>
「1日3回ツボを押すだけで目はすぐによくなる!」森岡清史(KADOKAWA)
photo:Getty Images
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