2018/06/01 17:00

痛風はなぜ起こるのか?|高尿酸血症の原因と予防法

痛風とは、血中の尿酸値が高い状態である高尿酸血症が原因となり、突然、関節に激しい痛みが起こる病気です。特に夜間や睡眠中に痛風発作は起こりやすいと言われます。また、尿酸値が高い状態をそのまま放置すれば痛風発作が慢性化するほか、さまざまな病気につながる可能性もあります。

痛風の原因や症状、高尿酸血症の対処法、予防法などについて、東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センターの教授を務める山中寿先生に話を伺いました。

目次

  • 痛風の症状
  • 痛風の原因「高尿酸血症」とは?
  • 痛風が起きたときの治療法と正しい対処法
  • 高尿酸血症の治療法
  • 高尿酸血症と関連性が高い病気
  • 痛風の予防法
  • 痛風と睡眠の関係

痛風の症状

足の指の付け根に痛みを抱える患者の足

痛風は、関節などに炎症が起こり激しく痛む「痛風発作」が起こる病気です。関節炎が起きた患部は赤みをもって腫れ、歩けないほどの痛みを感じます。症状は7〜10日程度で治まりますが、痛風の原因を改善しない限り、痛風発作の頻度は増し、次第に慢性化していきます。

痛風発作の前兆症状

激しい痛みを感じる痛風発作の前兆症状は、関節に「違和感」や「ムズムズするような感覚」があるとされています。発作を防ぐためには、こうした前兆症状を感じた際に「コルヒチン」という薬が有効です。そのため、痛風患者はコルヒチンを常に携行することが推奨されています。

痛風の原因「高尿酸血症」とは?

尿酸値のチェック

痛風は、高尿酸血症が原因となって引き起こされます。高尿酸血症とは、体内にある窒素化合物の一種である尿酸の血液中濃度が高い状態を指し、その基準は血清尿酸値(体液中の尿酸の濃度)が7.0mg/dLを超えることと定義されています。この状態が続くと、尿酸が体液に溶け切らず、関節に尿酸の結晶(尿酸塩)ができます。すると、身体に備わっている免疫系が、本来は体内に存在しない尿酸塩を異物と見なして攻撃し、痛風関節炎(痛風発作)が起こります。

尿酸の濃度が高くなる原因

そもそも尿酸は、「プリン体」が体内で分解されてできるものです。プリン体は、主に下記3つの要因によって体内に蓄積されます。

  • 食品からの摂取
  • 新陳代謝による細胞の老廃物として生成
  • 筋肉を動かす、体温の維持など、人が活動する際に消費されるエネルギー源・ATP(アデノシン三リン酸)が分解される際に発生

通常、体内に蓄積したプリン体は肝臓で分解されて尿酸となり、体液に溶けて体内を循環し、尿として排泄されていきます。しかし、何らかの原因で尿酸が過剰に産生されたり、尿からの排泄量が少なくなったりすると、尿酸が体内に蓄積し、尿酸の濃度が上がってしまいます。

痛風発作が起きたときの治療法と正しい対処法

足を上げて横になる

痛風発作が起きたときは、医師に指示された薬を服用して痛みを和らげることが基本的な治療法です。痛風が疑われる痛みを感じた場合、できるだけ早く医師の診察を受ける必要があります。

薬の服用

痛風発作に対しては、炎症や痛みを抑える効果がある非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を1日などの短期間に比較的多量投与する方法で治療します。痛みが軽くなっても関節痛は続くため、生活に支障をきたす場合には、痛風発作が改善するまで投与を続けます。
 
NSAIDが効かない場合や複数箇所に関節炎が生じている場合は、強力に炎症を抑える副腎皮質ステロイドを使用することがあります。3週間ほど投与を続けるのが一般的ですが、重症の場合、数カ月間にわたって少量を投与し続けることもあります。

痛みに対する応急処置

突然の痛風発作で激しい痛みを感じた場合、次のような応急処置が効果的です。

痛みを感じたときの応急処置

  • 仰向けで横になり、発作が起こった箇所を心臓より高い位置に置く
  • 患部を冷やし、炎症を鎮める

避けるべき処置

痛みのあまり、思わず患部を揉んでしまうと、炎症を悪化させてしまう可能性があります。また、アセチルサリチン酸(アスピリン)系の痛み止めを服用すると、痛風発作の症状が強くなることもあります。市販の痛み止めを購入する場合は、薬剤師に確認するようにしましょう。

高尿酸血症の治療法

高カロリーの食事が並ぶ食卓の様子

痛風発作を起こさないようにするためには痛風の治療だけでなく、原因となる高尿酸血症を改善する必要があります。

食事療法

尿酸値が高い人は、大食漢や肥満気味の人が多い傾向にあります。まずは過食をやめるなど、食生活をあらためることで肥満の解消を目指しましょう。食事の総量が減れば、プリン体摂取量も減ります。多くの場合、肥満の解消とともに尿酸値も下がっていきます。
 
食事の内容面では、プリン体が多く含まれる動物の内臓や魚の干物などを食べる頻度を減らすほか、尿路結石を防ぐため、尿をアルカリ性にする野菜や豆腐、海藻といった食品をとることを意識しましょう。

運動療法

高尿酸血症患者の中でも肥満気味の人、メタボリックシンドロームの恐れがある人は、食事療法と並行して運動を取り入れることがあります。過度な運動や無酸素運動は血中尿酸値を上げてしまうため、治療では軽い有酸素運動を週3回程度行い、適正体重(BMI<25)を目指す形で行われます。
 
血清尿酸値には直接影響しませんが、体脂肪が減少することで血圧、コレステロール値など、痛風や高尿酸血症と同時に現れやすいメタボリックシンドロームの病態を改善する効果が期待できます。

薬物療法

痛風発作を繰り返している場合や痛風結節ができている場合、生活習慣だけでは改善が難しいため、血清尿酸値を6.0mg/dL以下に抑える薬物治療が必要になることがあります。また、痛風発作が起こらない無症候性高尿酸血症であっても、腎障害、高血圧、メタボリックシンドロームなどの合併症が見られる場合、血清尿酸値8.0mg/dL以上であれば薬物治療が考慮されます。一度、尿酸値を下げる薬を飲み始めると、5年、10年という長いスパンで飲み続けることになります。

高尿酸血症と関連性が高い病気

メタボな男性

放置すれば痛風を引き起こす高尿酸血症は、痛風だけでなく、ほかの病気のリスクも上昇させてしまいます。また、痛風患者は、生活習慣病と呼ばれる症状、メタボリックシンドロームを併発する傾向があります。

尿酸塩(尿酸の結晶)による症状

尿酸が結晶化(尿酸塩)することで発症リスクが高まる病気には、次のようなものがあります。

痛風結節

尿酸塩が皮下組織に沈着し、かたまり(結節)ができます。体温が低いところにできやすいため、ひじや手の甲、耳たぶなどに発生することが多く、痛風が進行して慢性期に入ってしまっていることを意味します。高尿酸血症の期間が長く、また尿酸値が高いほど、発症リスクが高まります

痛風腎

高尿酸血症が続くと、尿をつくる腎臓にも尿酸塩が沈着し、腎臓の働きが低下していく「痛風腎」と呼ばれる症状が出ることもあります。痛風腎によって血清尿酸値が高まると、慢性腎臓病のリスクも高まります。ある調査結果では、血清尿酸値が8.0mg/dL以上の場合、5.0mg/dLの集団と比べて男性で2.9倍、女性で10.4倍も危険度が高まるといいます。

尿路結石

尿酸値の上昇により尿が酸性に傾き、尿中の尿酸が溶けにくくなり、結石ができることがあります。尿路結石は尿量の減少や尿酸の排泄量との関連性が高いとされていますが、高尿酸血症や痛風患者の場合、尿が酸性化しやすい特徴があり、その状態が続くことが尿酸結石形成における最大の危険因子と考えられています。

高血圧

血清尿酸値が高いと、高血圧を合併しやすくなります。腎臓と血圧には深い関係性があり、高尿酸血症と高血圧を併発すれば腎臓に負担がかかり、腎障害のリスクがさらに高まる危険性もあります。

脂質異常症(高脂血症)

脂質異常症とは、血液中の脂肪分の濃度が異常な値になることです。目に見える症状はありませんが、知らないうちに血管が傷み、動脈硬化を引き起こします。コレステロールが高いタイプや中性脂肪が高いタイプなど、いくつかの種類がありますが、高尿酸血症の患者には中性脂肪が高い人が多く見られます

メタボリックシンドローム

痛風患者には、メタボリックシンドロームの患者が多いことがわかっています。メタボリックシンドロームとは、内蔵肥満に高血圧・高血糖などが組み合わさり、動脈硬化症や2型糖尿病を引き起こしやすい状態です。
 
血清尿酸値が高い人ほどメタボリックシンドロームになっている人が多く、高血圧などのメタボリックシンドロームを構成する要素を多く有する人ほど、血清尿酸値も高いという関係があります。ただし、そのメカニズムについてはまだはっきりと解明されていません。

痛風の予防法

ビールで乾杯する人々

痛風を予防するためには、その原因となる高尿酸血症の治療と同様、食生活の改善や運動、ストレスの解消などが中心となります。

食生活の改善

食べすぎ、食べ方に注意する

痛風の原因となる血清尿酸値が高い人は食べ過ぎの傾向にあるため、食事の量を減らし、適正体重を目指してダイエットに励みましょう。早食い、テレビや新聞を見ながらのながら食べ、朝食を抜いて夕飯を大量に食べるなど、不規則な食生活は食べ過ぎを助長します。食べる物や量だけでなく、食事の摂り方にも注意を向けましょう

アルコールは控えめに

ビールをはじめとするアルコールは、摂取量に比例して尿酸値を上げる要因になります。尿酸値が高いときはお酒を控えるのがベストですが、それが難しいようであれば、尿酸値を上げない程度の適度な飲酒量を心がけましょう。ビールなら500ml(中びん1本)、焼酎なら25度120ml、日本酒なら1合180mlが目安となります。週に2日以上は休肝日を設けることも大切です。

水分を十分にとる

体内の水分が少なくなると尿の量も減るため、排泄されるはずの尿酸が体内にたまり、尿酸値が上がってしまいます。尿量が増えれば、それだけ尿酸が排出されやすくなります。そのため、喉が渇いたとき以外にも、こまめに水分補給を行うようにしましょう。しかし、砂糖を含むジュースやスポーツドリンクは、肥満の原因となり、痛風のリスクも高めてしまいます。水分補給は水か、無糖のコーヒーや紅茶などで行うようにしてください。

適度な運動

運動は高尿酸血症の治療と痛風の予防に効果的です。運動内容は、負荷をかけすぎないこと、継続しやすいものであることが大切で、1回20分の早歩きや1回15分程度の適度なジョギングやサイクリングを、週3回以上行うのがオススメです。普段運動をしていない人が無理をして激しい運動を行うと、エネルギー源としてATPが消費され一気にプリン体が増えてしまい、逆効果になることもあるので注意しましょう。

ストレスをためない

ストレスが尿酸値に与える直接的な影響については明らかになっていませんが、ストレスを受けたときに暴飲暴食をして解消しようとしたり、激しいスポーツに興じて解消しようしたりすると、尿酸値が上がってしまいます。「ストレスに対処するために精力的に行動したり、競争意識が強かったりする」傾向が強い人ほど注意が必要です。

痛風と睡眠の関係

口を開けて眠る男性

痛風と睡眠について直接的な関連は明らかになっていないものの、痛風発作が夜間や睡眠中に起こりやすいこと、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と尿酸値には関係があるといわれています。

痛風発作が夜間や睡眠中に起こりやすい理由

痛風発作は、尿酸値が高いときではなく、体内の尿酸値が下がり、尿酸塩が溶けてくるタイミングで起こります。そのため、夕食を済ませ、いったん上がった尿酸値が下がっていく夜間や睡眠中に起こりやすいと考えられています。
 
夜間に痛風発作が起これば痛みで眠りが阻害されてしまい、睡眠不足に陥るほか、眠りも浅くなってしまいます。実際、痛風患者は眠りが浅く、睡眠時間も短い傾向にあるということが報告されています。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と尿酸値の関係

眠っている間に無呼吸状態に陥るSASによって酸素不足に陥ると、低酸素状態になってエネルギー源であるATPが通常時よりも多く消費され、プリン体の代謝が促進されます。前述のように、尿酸はプリン体が体内で分解されてできるため、過剰なプリン体の代謝は尿酸値の上昇を招きます。
 
また、SAS患者には肥満気味の人、メタボリックシンドロームを抱えている人も多く、それらの人ほど尿酸値が高い傾向があります。これは、メタボリックシンドロームを抱えている人ほどインスリンの働きが悪くなっている可能性が高く、それ補うために多くのインスリンが分泌された結果、腎臓での尿酸の排泄を妨げるためと考えられています。
 
激しい痛みで睡眠を妨害するだけでなく、さまざまな病気につながる危険性もある痛風を発症しないよう、尿酸値を適切にコントロールすることが大切です。
 
 
<参照元>
『尿酸値を下げたいあなたへ』山中寿(保健同人社)
『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版』メディカルレビュー社
 
日本生活習慣病予防協会
厚生労働省e-ヘルスネット

photo:Getty Images

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