2017/11/24 17:21

「隠れ誤嚥」にご用心! 眠っている間に進行する「誤嚥性(ごえんせい)肺炎」とは?

日本人の死因として多く挙げられていたのはがんや心疾患でしたが、2011年以降急増しているのが「肺炎」です。中でも高齢者に多い“誤嚥(ごえん)性肺炎”は、死に直結してしまうこともある危険な病気です。今回は、この誤嚥性肺炎について、『肺炎にならないためののどの鍛え方』の著者で池袋大谷クリニック院長の大谷義夫先生にお話を伺いました。

肺炎による死亡例が増えた背景とは

厚生労働省が毎年調査している人口動態統計によると、2011年以降、日本人の死因の1位はがん、2位は心疾患、3位に肺炎が挙げられます。肺炎は、ウイルスや細菌が肺に感染することで炎症が起こる病気です。主な症状は熱や咳など、風邪に似ていますが、症状が起こるメカニズムが異なります。また、高齢者の場合には、こうした典型的な症状がみられないこともあり、注意が必要です。
高齢者の肺炎については、

“2015年の厚生労働省・人口動態統計によると、肺炎による死亡者数12万人のうち、約96%が65歳以上”(大谷義夫『肺炎にならないためののどの鍛え方』P.16)

という調査があり、肺炎が死因として急増している背景として、日本人の高齢化が挙げられます。また、高齢者が罹患する肺炎のうち、7割以上が「誤嚥性肺炎」であるそうです。
 
では、高齢者の肺炎の大多数を占める「誤嚥性肺炎」とは、一体どんな病気なのでしょうか。

誤嚥性肺炎を引き起こすメカニズム

「誤嚥性肺炎」とは、食べ物や飲み物が肺に入ってしまい(誤嚥)、そこに混ざっているウイルスや細菌によって肺に炎症が引き起こされる肺炎のことです。通常であれば、唾液や食べ物が気管に入っても、「むせる」ことによって排出されますが、高齢者は気管に入った異物を吐き出す力が弱くなっていることが多く、誤嚥したものが肺へと到達してしまいやすくなっています。それにより炎症が起きてしまうのです。

肺炎を引き起こす不顕性誤嚥とは

喉を気にする女性

食べ物や飲み物が原因となり、本人が自覚している誤嚥は「顕性(けんせい)誤嚥」といい、一方で知らないうちに唾液が気管に入ってしまう誤嚥のことを「不顕性誤嚥」といいます。大谷先生によると、誤嚥性肺炎の7割以上は不顕性誤嚥が原因で起こるそうです。

不顕性誤嚥は睡眠中に起こりやすい

不顕性誤嚥は主に唾液の誤嚥が原因で、睡眠中に起こりやすくなっています。睡眠時は、気付かぬうちに唾液が気管に入ってしまっても、咳などで排出しようとする反応が起こらないため、そのまま唾液とともに雑菌などが肺へと到達してしまうのです。

“特に40代以降は口が乾きやすく唾液に雑菌が増えるため、就寝中に唾液の誤嚥をくり返すと肺炎のリスクが上がる”(大谷義夫『肺炎にならないためののどの鍛え方』P.20)

とのこと。つまり、唾液がダイレクトに肺に届いて肺炎の原因になりやすくなってしまうのです。年齢を重ね、飲み込む力や異物を吐き出す力が衰えてくると、無意識のうちに不顕性誤嚥を繰り返し、どんどん肺炎のリスクが上がります。

高齢者だけでなく若年層も注意

誤嚥は、食事の介護が必要な高齢者や、飲み込む力や吐き出す力が衰えた高齢者ばかりが発症するのかといえば、必ずしもそうではないと大谷先生は指摘します。
 
「30代の睡眠時無呼吸症候群に悩んでいる患者さんで、いびきや無呼吸を防ぐために横向きやうつぶせで寝ていたのですが、なぜか肺炎を繰り返している方がいました。年齢的に肺炎の症状が常態化するのはおかしいと考え、詳しく調べてみると寝る時の姿勢のせいで逆流性食道炎を起こしていたことが分かりました。逆流してきた胃酸が気管に入って炎症を起こしてしまい、誤嚥性肺炎を繰り返し発症していたのです」(大谷先生)
 
身体の右側を下にして眠ると、胃の形が変わって胃酸が逆流しやすくなり、逆流性食道炎を発症する可能性が高まるとのこと。右側を下にして寝るクセがある人は、睡眠時の姿勢を見直しましょう。

不顕性誤嚥の予防法

喉を触る女性

本人が自覚しづらい不顕性誤嚥は、どうすれば予防できるのでしょうか。大谷先生に具体的な方法を伺いました。

誤嚥性肺炎を防ぐ方法1:のどを鍛える

誤嚥性肺炎の引き金となる「誤嚥」が起こる原因は、筋力の衰えです。人間の身体には飲食物を飲み込むときに、のどぼとけが上がる仕組みになっています。のどの筋力が弱まると、のどぼとけの位置が下がるため、のどぼとけを上げるのにより多くの筋力が必要になります。これによりものを飲み込みづらくなってしまうのです。また、食道の筋力が衰えると、食道の入り口の開閉がうまくいかなくなって、誤嚥につながることもあります。そのため、のどまわりの筋力を鍛えることが誤嚥の予防になります。

のどを鍛えるトレーニング

大谷先生の著書『肺炎にならないためののどの鍛え方』から、簡単にできるトレーニングをいくつかご紹介します。

<あごもち上げ体操>

  • あご下に両手の親指の腹を当てます。
  • 下を向いて力いっぱいあごを引き、親指はあごを押し戻すように上方向に力を入れ、5秒間キープします。

1〜2を1セットとして、5〜10回ほど行いましょう。

<舌出し体操>

  • 口を大きく開いて、舌を出したり、引っ込めたりする動きを2〜3回くり返します。
  • その後、舌先を左右に動かす動きを2〜3回くり返します。

1〜2を1セットとして、1日2回行いましょう。舌をできるだけ大きく動かすのがポイントです。

誤嚥性肺炎を防ぐ方法2:1日4回の歯磨き

不顕性誤嚥の場合、肺に流れ込む唾液に含まれる細菌やウイルスが原因となって炎症を引き起こします。そのため、口腔内のケアは非常に重要です。
 
「患者さんには1日4回歯磨きしてもらうようお願いしています。タイミングは、毎食後と就寝前ですね。夜間の不顕性誤嚥を完全に減らすことはできませんが、唾液の中の雑菌を減らすことで肺炎になりづらくなるのです」(大谷先生)
 
口内の汚れをよりしっかりと落とすには、歯磨きだけでなく、歯間を掃除するデンタルフロスも積極的に活用しましょう。
 
死につながる可能性がある恐ろしい病気、肺炎。そのリスクを認識していても、睡眠中の唾液の誤嚥が肺炎を引き起こすことまでは知らなかったという人も多いのではないでしょうか。今回ご紹介した予防法を実践し、誤嚥性肺炎を予防しましょう。
 
監修:大谷義夫

writer2
大谷義夫
1963年東京都生まれ。1989年群馬大学医学部卒業後、九段坂病院内科医長、東京医科歯科大学呼吸器内科医局長、同大学呼吸器内科兼任睡眠制御学講座准教授、米国ミシガン大学留学などを経て、2009年池袋大谷クリニック開院。呼吸器内科のスペシャリストとして、メディアへの出演も多い。著書に『長引くセキはカゼではない』(KADOKAWA)など。
 
池袋大谷クリニック
東京都豊島区西池袋1-39-4 第一大谷ビル1F
TEL.03-3986-0337
http://otani-clinic.com/

肺炎にならないためののどの鍛え方 (扶桑社ムック)
「隠れ誤嚥」にご用心!
誤嚥は、実は「食事中」より「就寝中」が危険です。
40代からの「のど」の衰えと悪い生活習慣で、死因第3位・誤嚥性肺炎のリスクが増大!
本書は、日本一の患者数を誇る呼吸器の名医が、耳鼻科の医師では語れない、誤嚥性肺炎を防ぐトレーニングと生活習慣についてわかりやすくまとめた1冊です。

photo:Getty Images

今日の運勢

おひつじ座

全体運

何かと目立つ今日のあなた。カリスマ的に見られがち。思いっき...もっと見る >