2018/10/27 15:00

『霊は"見える人"へ寄り付いてくる』 不動明王を信心する母に育てられた男|川奈まり子の奇譚蒐集

 たとえば、10年ほど前のことだが、某産婦人科病院を解体していたところ、若い作業員が赤ん坊の泣き声を聞きつけた。呼ばれて加藤さんが駆けつけてみたところ、本当にどこかから赤ん坊の声がしていた。
 しかし解体工事の最中だ。赤ん坊などいるはずがない。
 一応、作業の手を止めて数人で手分けして声の出どころを探してみたが、赤ん坊も、赤ん坊の声を発しそうな物も何にも見つからなかった。その日は早めに作業を切り上げて、翌朝おそるおそる来てみたら、もう赤ん坊の泣き声はしなかったという。

 また、これも解体工事の話だが、あるとき総合病院の解体工事を請け負って作業をしていたらこんなことが起きた。
 朝、作業を始めたら、どこからともなくピンク色のパジャマを着た60歳前後のおばさんが現れて、
「すみません。私の部屋は何号室ですか?」
 と、作業員たちに訊きながら工事現場を徘徊しはじめたのだ。
 明るい陽射しの中を歩きまわり、目が合った全員に同じ質問をして回る。外国人の作業員にも問いかけて、「わかりません」と首を横に振られると、すぐまた別の作業員のところへ歩いていく。
 あまりにも姿形がはっきりしている。裸足にスリッパを履いていて、そのスリッパが立てるペッタンペッタンという音まで聞こえる。
 これは生きた人間であるとその場に居合わせた20人を超える作業員全員が思った。
 しかし、このパジャマのおばさんを捕まえようとすると、どうしても捕まらない。体力自慢の男たちが本気で捕まえようとして、逃げられるはずがないのだが、魔法のように身をかわされてしまう。
 おまけに、よく見たら、おばさんの足もとには影が無かった。
 そこで加藤さんは、このおばさんを無視するように作業員たちに命じて、作業を再開させた。すると程なく、人骨が発掘された。
 掘り当てた作業員は動悸がひどくなり、胸の痛みを加藤さんに訴えた。
 おばさんの幽霊も出没していることだし、作業員の動悸や胸の痛みも霊障かもしれない。咄嗟にそう思った加藤さんは、たまたま持っていたお清めの塩を作業員の胸ポケットに入れてやった。
 ......たちまちこの作業員の動悸と胸の痛みが治まった。

 このことから、霊の仕業に違いないと確信した加藤さんは、翌朝、作業員全員に小袋に詰めた粗塩を渡して、作業服の胸ポケットにしまっておくように言い渡した。

 以後、この解体工事現場では、おかしなことは何も起きなくなったそうだ。(川奈まり子の奇譚蒐集・連載【十六】)

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