2019/02/22 18:00

ある一家と霊 「母が見たという女の霊はこれに違いない!」|川奈まり子の奇譚蒐集二三

《鳥屋野潟の漁師が真っ暗い夜、舟をこいで行くと向こうからも舟がこちらへ向かってくるのがうすぼんやりと見える。その舟はだんだん近づいてこっちの舟に寄って来る。よけようと舟を動かしてもその舟は同じ方向に向かってくる。ぶつかると思った瞬間、舟は影も形も見えなくなっていた。その舟は亡者舟と呼ばれ、鳥屋野潟では遭難して成仏できない霊が亡者舟となって出てくるのだと言われていた。そして亡者舟にあった人間は間もなく死ぬといわれた。》

~新潟市潟環境研究所「新潟市潟のデジタル博物館/くらし・文化」より「鳥屋野潟の亡者舟」(初出:『新潟市史(平成3年度版)』)~

 初めて鳥屋野潟を前にしたときは素直に「湖だ」と思った。南北から引っ張られて出来た大地の裂け目は水面を広々と延べており、「潟」という字からイメージする沼地とは異なって開放的で明るかった。

「良いところに官舎があるのねぇ。春んなるのが待ち遠しいて思わん?」

 周囲9キロ余りもあるという水際を埋める並木を眺めながら母は幸せそうなため息をついた。並木は桜で、鳥屋野は花見の名所として有名だ。佐藤茂男さんは勤め先が分割民営化されたのは何十年前だろうと思いながら、「今は社宅だよ、官舎じゃなくて」と誤りを訂正した。
 母は笑顔で「そうだった、そうだった」といい加減に応えた。

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