2017/10/10 11:05

新世代の睡眠時無呼吸症候群の国産治療機器「JPAP」とは?

新世代の睡眠時無呼吸症候群の国産治療機器「JPAP」とは?
新世代の睡眠時無呼吸症候群の国産治療機器「JPAP」とは?
<専門家インタビュー> 睡眠時無呼吸症候群のCPAP治療装置で国産第1号となる「ジャスミン」を2006年に開発・販売した株式会社メトランが、このたび新世代の持続的自動気道陽圧ユニット「JPAP(ジェイパップ)」を発売しました。株式会社メトランの創業者であり、自らも睡眠時無呼吸症候群の患者としてJPAPを愛用するトラン・ゴック・フック(新田一福)会長に、JPAP開発のエピソードをお聞きしました。
【トラン・ゴック・フック(新田一福)氏】 株式会社メトラン 会長
睡眠時無呼吸症候群のCPAP治療装置で国産第1号となる「ジャスミン」を2006年に開発・販売した株式会社メトランが、このたび新世代の持続的自動気道陽圧ユニット「JPAP(ジェイパップ)」を発売しました。株式会社メトランの創業者であり、自らも睡眠時無呼吸症候群の患者としてJPAPを愛用するトラン・ゴック・フック(新田一福)会長に、JPAP開発のエピソードをお聞きしました。

患者さんが自分で設定できるナチュラルサポート機能

JPAPでは、ナチュラルサポート(NS)機能といって、吸気と呼気のサポートレベルをそれぞれに調整が可能な機能を備えています。医療従事者モードではなく患者モードにしてあるので、患者さん自身が呼吸をしながら、もっと呼吸がしやすいように自分で設定することができます。これは私自身の患者としての体験から決めた方針ですが、このような仕様で機械を出したのはメトランが初めてです。 今まではこうしたことを誰も考えていませんでした。患者さんの考えていることを何もわかっていなかったのです。

JPAPは持ち運びが容易なコンパクトサイズ

装置を小型化するということについては、最初のうちはなかなか理解が得られず、「どうして小さくする必要があるのか」と言われることもありました。しかし、自分の今のライフスタイルを考えると、よりコンパクトな小型の機械が欲しいという思いがありました。 私は出張や旅行に出かける機会が多いので、そんなときにCPAPの大きな機械を持って行こうとすると、それだけでスーツケースをひとつ余分に引っ張っていかなければなりません。しかし、今ではリュックに2日分の着替えとJPAPを入れて持っていくというのが自分のライフスタイルになっています。 JPAPには専用のキャリングケースが付属していますが、ユーザーの多くは機械を全部ケースから取り出して使っています。しかし、実はJPAPの本体はキャリングケースに入ったままで使うことができます。ですから、私は機械をキャリングケースに入れたままAC電源のコードだけをケースから出し、コンセントに挿して使っています。朝はマスクとチューブを外してAC電源コードをぐるぐるっと束ねてカバンに入れるだけですので、本当に5分ぐらいで片付けが終わってしまいます。 先日、懇意にしている医師に会って話をしたとき、その先生も私と同じ使い方を考えていたことがわかったのですが、そのことをどうしてユーザーに教えないのかというご意見をいただきました。 そこで、メトランではこれからYouTubeの動画などを活用して、詳しい使い方なども提案し、ユーザーの皆様にアピールしていくことを考えています。今後は株式会社メトランのウェブサイト(http://www.metran.co.jp)で、ユーザーに密着するような使い方のアイディアなどのコンテンツを充実させていくつもりです。

ベッドサイドで使うための優れたデザイン

JPAPは2016年度のグッドデザイン賞金賞を受賞していますが、このデザインはデザイナーの山本秀夫先生に依頼したものです。今までの当社の工業デザイナーの仕事は絵を描いたらほぼそれで終わってしまうことが多かったのですが、山本先生の仕事は本当に素晴らしいものでした。 先生はオフィスに布団を持ち込んで部下の社員さんをそこに寝かせて、我々が提供したCPAPの機械やマスクを使って、寝ているときの様子や機械の設置状況などを想定しながらデザインされていました。また、飛行機に乗るときにはどうやって使うかといったことまで考えて、いくつものアイディアをご提案いただきました。 デザインというのは本当にとても大事です。JPAP本体の丸みを帯びた形は、まず見た目がとても柔らかい印象を持っています。JPAPは医療機器ですが、私自身はたとえばApple製品のようなインテリジェンスを打ち出したデザインよりも、一般の人には柔らかく、手に持ったときに気持ちがいいと感じるようなものがいいのではないかと考えています。 色も非常にこだわったポイントです。本体が丸みを帯びた可愛い形をしているので、私たちは最初、白っぽい色がいいのではないかと考え、たとえば女性向けには桜の花のようなピンクがかった色はどうだろう、などと話し合っていました。 ところが山本先生は、この日本古来の茄子紺(なすこん)は睡眠を連想する色だからと言って絶対に譲りませんでした。しかし、私のほうも白バージョンを諦められないので、いつも山本先生に食い下がっていました。自分でも写真を撮っているので、デザインにはかなりこだわりがありますし、いつか皆さんにも白いJPAPを見ていただきたいと気持ちは今でもあります。 最近、山本先生にお会いしたときにも「先生、やっぱり女性には可愛いのを作りましょうよ」と言ったのですが、先生も根負けしたのか、やっと白色の花模様など私の意見にも少し耳を傾けてくれるようになりました。山本先生は本当に素晴らしいデザイナーですから、私が新しく立ち上げた別の会社で手がけている製品のデザインもこれからお願いしようと思っています。

小型化のもっとも大きな課題は「静音性」

機械のサイズを小さくするときに難しいのは静音性の問題です。機械本体のサイズがある程度大きければ、圧力を発生させるブロアーの雑音を消すことは比較的容易なのですが、今の技術では機械が小さくなるほど音を消すことが難しくなります。しかし、私たちが持っている別の技術を使えば、将来的にはより音が静かでコンパクトなものができます。 ただし、私たちは技術的に少し先行しすぎているのかもしれません。市場に出すタイミングが早すぎると受け入れられない場合もあります。そういった意味では、現在の技術で小型化の壁となるのは静音性ではないかと思います。 また、本体が軽いため、寝返りをうつと引っ張られてしまうという問題もあります。まだ詳しくは言えませんが、将来的にはそういった問題も解決できるような、画期的な製品の開発を目指しています。

自然な潤いと深部体温の低下で快眠をもたらす

もともとJPAPは開発当初からあまり電気を使わないようにしようと考えていました。出張や旅行の際に大きな機械を持って行かなくても済むように、ヒーターを使わずに自然の水分蒸発で加湿するということが製品開発のコンセプトだったのですが、実際に使ってみると、それがとても気持ちいいということがわかったのです。 他のCPAPの場合は空気の温度を上げているので、マスクをつけた直後は気持ちいいのですが、一晩中8時間も吸い続けると逆によく眠れなくなってしまいます。 JPAPは、マスクをつけて最初のうちは少し冷たいのですが、人が眠るときには深部体温が下がるということがわかっています。ですから、最初は少し冷たくても、朝起きたときにとても気持ちがいいのです。ただ、一般の患者さんはマスクからいきなり冷たい空気が入ってくることにやや抵抗があるかもしれません。その壁をどうやって乗り越えるかということが今後の課題となります。寝る前には気持ちよく温め、眠りについた後は深部体温を下げるような方向へ持っていくというコンセプトで次の開発を進めているところです。 その製品に関しては、私の考えに異を唱えていた先生と共同で開発しようと考えています。意見の合わない人とケンカをするのではなく、学校のように議論しながら、こちらの考えに巻き込んで一緒にやっていこうというのが私のやり方です。反対していた人にも賛同してもらえるというのは、何よりも説得力があるのではないでしょうか。

加湿器に代わる技術-人工鼻(HME)とメトランのHummax QE

おそらくこれからは海外のCPAPメーカーもさらなる小型化に向かっていくと思われますが、彼らが機械を小さくするために一番問題になると考えているのは加湿器です。タンクに水を入れて温める方式では、どうしても加湿器を小さくすることができません。せっかくブロアー本体を小型化しても、大きな加湿器がついていたのでは携帯性が損なわれてしまい元も子もありません。 最近アメリカで発表されている小型のCPAPを見ていると、どうやら加湿器の問題を解決するために、人工呼吸器の「人工鼻」と呼ばれている機構を取り入れているようです。 人工鼻(Heat Moisture Exchangers; HME)とは、人工呼吸器を使っているときに吸気ガスを加湿するための器具です。患者さんの呼気中の水分を吸収して、吸気時にその水分を再び患者さんに吸わせることによって、人間の鼻腔粘膜と同様の加湿効果を得ることができるというものです。 人工鼻の場合には中にセルロース系の材料を入れて水分を蓄えますが、メトランのHummax QEではチューブの中に500ミクロンのホローファイバー(多孔質の中空糸膜)を入れてあります。このファイバーは疎水性なので、この中に水を入れても水は外に出ませんが、蒸発する面積はセルロースの6倍にもなります。この中空糸を使うことによって、まったくヒーターを使わなくても自然に水分が蒸発して、喉が乾かないように湿度を補うことができるのです。 CPAPは人工呼吸器のように吸気と呼気の通り道が分かれておらず、1本のチューブになっています。そのため、マスクには吐き出した炭酸ガスが溜まらないように外へ逃がす穴が開いています。 アメリカのあるメーカーが出している小型のCPAPはチューブの途中にHMEをつけているのですが、実はそれでは意味がありません。呼気がHMEに戻らないと、そこで湿度を逃さないようにトラップしておくことができないからです。それにもかかわらず、チューブの途中にHMEをつけた製品が売られているのですが、私から見ればこれは本当に意味のないことです。 しかし、CPAPを使うユーザーにはもちろんそんなことはわからないので、HMEがついていればそれだけいい製品だと思うでしょう。もちろん、海外でも技術レベルの高いメーカーでは、ちゃんとマスクから呼気が漏れるところにHMEを取り付けるようにしているところもあります。

コントローラーを本体から分離した理由-メトランが目指す未来像とは

実は最初のコンセプトでは、音の問題さえ解決すればブロアー本体はもっと小さくできると考えていました。現在の大きさになったのはあくまでも音の問題で大きくしただけであって、将来的にはもっと小型化することが可能です。ところが、機械を制御するためのコンピューターやセンサーなどを本体に内蔵して、そこにコントローラーまで付いていたのでは小さくすることができません。 そこで私たちはコントローラーを本体と分離してAC電源のアダプターと一体化させました。私たちが将来目指しているのは、必要なものをすべて中に入れて小型化した本体を胸元につければ、あとは電源コード1本だけで済むようなものです。このような将来のビジョンがあるからこそ、コントローラーを本体から分離してAC電源のアダプターと一体化すること自体も特許として出願しているのです。 私たちがどうして今このような製品を作っているのかというと、それは将来の目標があるからです。知らない人から見れば、なぜコントローラーを本体と一緒にしないのかと思われるかもしれません。仮にそうした要望が多いのであれば一緒にすることはできますし、現時点では技術的な問題は何もありません。 開発している私の頭の中には、今の製品が将来に結びつくような明確なロードマップがあります。現時点での技術と、今それを必要としているユーザーが納得してくれるところをすり合わせた結果が製品に反映されているのだと言ってもいいでしょう。 スティーブ・ジョブズのiPhoneも、将来発表する機種までの道筋を全部最初から持っていました。しかし、当時の技術でそれを実現しようとするととても高価なものになってしまいます。今、私が持っている特許の技術だけでも、もっと小型で音がしないものを作ることはできますし、すでに試作も行なっています。しかし、そうするとやはり非常に高いものになってしまうので、とても現実的とは言えません。 将来的に睡眠時無呼吸症候群の治療機器を買い取りできるようなシステムに持なれば、製品化してもいいのかもしれませんが、現状はレンタルですから、我々のような小さな会社がビジネスをするマーケットとしてはあまり向いていません。もしも患者さんが本当に自分の責任で治療機器を選んで買えるようになれば、もっといろいろなことが思ったようにできるのではないかと考えています。

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