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2019/08/03 07:00

藩邸、社寺、町駕籠から都心の発展を論考【山内昌之氏書評】

『シリーズ三都 江戸巻』吉田伸之・編
『シリーズ三都 江戸巻』吉田伸之・編

【書評】『シリーズ三都 江戸巻』/吉田伸之・編/東京大学出版会/5600円+税
【評者】山内昌之(武蔵野大学特任教授)

 江戸が成立する上で、東西に立地した品川と浅草の演じた役割は大きい。多摩川と隅田川の河口に面した両地域は、今日まで及ぶ江戸・東京の繁栄を支え続けた。なかでも品川は、江戸の近郊地として行楽・遊興の場ともなり、御仕置場などの負の側面を担う境界地域でもあった。本書はシリーズ三都の初回出版として江戸の発展を多面的に扱う文章を集めた最新の論集である。

 世田谷に彦根・井伊家の藩領があったと聞けば驚く人も多いだろう。豪徳寺近くの二三〇〇石の村が彦根藩の所領であり、藩邸で必要な労働力を御用人馬という名目で供給していた。これは農民にとり大きな負担であった。他方、江戸に永住する旗本は経済的理由から家臣や奉公人を最小限に抑えたことも興味深い。

 また、主家を転々とする曲亭馬琴のような事例は珍しくない。旗本の家に仕えた馬琴は叔父が御船手同心に婿入りし、孫に御持筒(おもちづつ)同心の株を買ってやった。江戸の町では旗本の家臣と御家人が密接に交流する素地もあった。

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