2017/05/12 16:00

【書評】起承転結をすり抜けて抽出された「怪」のエッセンス

【書評】『かわうそ堀怪談見習い』/柴崎友香・著/角川書店/1500円+税

【評者】鴻巣友季子(翻訳家)

 あの柴崎友香が怪談話を書いたと聞いて、一瞬、耳を疑い、すぐに購入した。なにしろ、柴崎友香といえば、芥川賞受賞作の『春の庭』など、「ストーリーらしいストーリーのない」「日々のひとこまを截りとった」作風で知られている。

 一方、古風な名称の「怪談」といえば、明確な起承転結があり、だんだん恐怖を盛り上げていって、オチがつく、というのがスタンダードな構成のはずだ。柴崎友香的なものの対極にあるのではないか。

 本作の主人公は女性小説家。デビュー作の恋愛小説が当たったために、その後も傾向の似た作品を書き、恋の悩み相談などに登場していると、「恋愛小説家」のレッテルを貼られることになった。それに嫌気がさし、怪談ものを書いてやろうと思い立つが、怪談作家修業をするうちに、うっすらと奇妙なことが起こりだす。

 誰だかわからない「鈴木さん」という人が自分の周りをちらちらする。怪談本を何度読んでもあるページの手前までくると、本が失くなってしまう。地面の上に、蛙の喉のような白くて丸い不思議な生き物を見る。暗闇で見つめてくる蜘蛛の光る目。ちっとも進まない人。やけに古臭い服装で写真に写っている女性……。

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