2017/08/01 16:00

ロシアの極東の小さな町に生きる市井の人々を描いた短編連作

 新潮社の海外文学シリーズ、クレスト・ブックスは、これまでベルンハルト・シュリンクの『朗読者』や、ジュンパ・ラヒリの『停電の夜に』などの名作を出してきたことで知られるが、またひとつ、思いがけない作品が刊行された。

 一九八三年、ロシア生まれのクセニヤ・メルニクという女性作家の九つの短篇から成る『五月の雪』。この作家は、十五歳の時に家族と共にアメリカに渡り、ニューヨークの大学で学んだ。ロシアの極東の小さな町に生きる市井の人々を主人公にした短篇連作だが、英語で書かれたという。

 一九七〇年代、ソ連邦の後期から、ソ連の崩壊、そして二十一世紀のロシアと、年代記になっている。

 冒頭の「イタリアの恋愛、バナナの行列」がまず面白い。一九七五年の物語。スターリン時代はすでに去り、なんとか自由の兆しは見えてきているが、それでも庶民の経済生活は苦しい。まともな日常用品がなかなか手に入らない。

 主人公は極東の町に住む三十三歳の女性。二児の母。町の博物館で働いている。仕事でモスクワへ行くことになる。

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