2017/07/24 16:00

【書評】現在のこの国の思想状況の整理に有効な「博士論文」

【書評】『大正知識人の思想風景 「自我」と「社会」の発見とそのゆくえ』/飯田泰三・著/法政大学出版局/5300円+税

【評者】大塚英志(まんが原作者)

 本書は、ポスト明治ナショナリズムとしての大正知識人の思想的な見取り図を「自我」問題系と「社会」問題系の双極で描こうとするものだ。その時、二極の半端な妥協として「自我と共同体のロマン的融合」が成立するという指摘が興味深い。大正知識人が「私」であることに耐えかねて「民族共同体」を志向し、それが昭和ファシズムへと連なっていくと示唆する。

 すると柳田國男のロマン主義民俗学や、そこへの起点としての「私」への嫌悪も、本書によって改めて正確に大正思想史の中に位置付け可能となる気がして興味深かった。

 柳田という「思想家」は、一方では甘美な「私」の自意識を伊良湖の浜辺に流れついた椰子の実に重ね合わせるロマン主義的民俗学と、他方では、それを克服せんとして、「社会」の実証的記述と社会政策論からなる「公民の民俗学」の二極に引き裂かれている。

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