2017/08/03 16:00

【書評】文化的観点から政治家に影響を与えた山崎正和の歴史

【書評】『舞台をまわす、舞台がまわる 山崎正和オーラルヒストリー』/御厨貴、阿川尚之、苅部直、牧原出・編/中央公論新社/3000円+税

【評者】関川夏央(作家)

「オーラルヒストリー」とは個人史の長大な聞き書きだ。当事者の記憶と証言で「文書に残っていない情報」を現代史探求の材料に加えるのが目的で、おもに政治家が対象だった。実際、発想者の御厨貴とそのチームは多くの政治的「回想」を公刊してきた。

 山崎正和は劇作家、また哲学・文学・歴史の間を論じる評論家である。だが同時に、三十代後半から文化的観点から政治シーンに影響を与え、国際交流基金という大きな組織の作り手ともなった。その意味では「オーラルヒストリー」の好個の人で、この本の「語り」は二年弱で計十二回、原稿用紙千枚強におよんだ。

 満洲・奉天(瀋陽)からの引揚げ直前に父親を亡くした山崎正和は、十三歳で「闘う家長」とならざるを得なかった。帰国後入学した京都の新制鴨沂(おうき)高校では全国最年少、十五歳の共産党員となって京都大学に指導に行ったという。先進的「植民地文化」と悲惨な敗戦を経験した彼は、驚くほど、また気の毒なほど早熟であった。

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