2017/08/31 16:00

【書評】なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか

【書評】『蔵書一代 なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか』/紀田順一郎・著/松籟社/1800円+税

【評者】平山周吉(雑文家)

 本好きにとって、涙なしには読めない本である。最初に涙し、最後も涙でにじむ。身につまされるエピソードばかりで、やるせなくなる。

『蔵書一代』の意気込みで、著者の紀田順一郎が十歳から七十年をかけて買い集めた本は三万冊を超えた。食費を削り、家具を買い控え、本に理解のある夫人にも恵まれた。横浜の郊外に建てた鉄筋二階建ての家は本で埋まり、還暦を過ぎては、岡山に快適な書斎住宅を建て、セカンド・ハウスとした。

 専門の怪奇幻想文学やミステリーから辞書、叢書類まで、集めた本をもとに数々のユニークな著書が生まれた。順風満帆、温雅芳醇な羨ましい限りの読書人生、と傍目には見えていた。

 本書で報告されるのは、その残酷なる総決算である。蔵書はわずか六百冊のみを手もとに置くことが許され、あとはすべて処分された。蔵書との永遠の別離は愁嘆場である。蔵書を「血祭りにあげた」などと強がってはみたものの、本を見送った後、紀田は道路にグニャリと倒れ込んでしまう。

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