2017/09/29 16:00

【書評】張り詰めた散文で粘り強くものを語った思索の記録

【書評】『湯殿山の哲学 修験と花と存在と』/山内志朗・著/ぷねうま舎/2500円+税

【評者】池内紀(ドイツ文学者・エッセイスト)

 山形県中央部にひろがる出羽三山は古来、修験道のお山として知られてきた。月山、湯殿山、羽黒山で宗教的聖域をつくり、そのスケールでいうと、西の伊勢よりもはるかに広大で奥深い。

 三山のうちでも湯殿山は東北最大の霊場として、江戸期を通じて人気スポットだった。全国からの参拝者は六十里街道を西にすすみ、正別当寺の本道寺宿坊に入って入山許可を得た。宿坊の主人は先達でもあって、夏は泊まり客を案内し、冬にはお札を配ってまわる。その本道寺は明治維新の排仏毀釈で寺格を失い、さらに戊辰戦争で堂塔伽藍を焼き払われた。

『湯殿山の哲学』の著者(一九五七年生まれ)は本道寺の宿坊の一つに生まれ、村を出て東京の大学で哲学を学び、現在は慶応大学教授。中世スコラ哲学を専門。ハハーン、西欧に学んだ人が中年すぎて先祖返りして、自分のルーツへ聖地巡礼をしたと思いがちだが、似ていて違うのだ。

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