2017/11/11 16:00

【著者に訊け】吉村萬壱氏 欲深い人間を描く長編『回遊人』

『回遊人』の著者・吉村萬壱氏
『回遊人』の著者・吉村萬壱氏

【著者に訊け】吉村萬壱氏/『回遊人』/徳間書店/1700円+税

 大阪在住の芥川賞作家・吉村萬壱氏(56)は、日頃からよくゲンを担ぐらしい。

「喫茶店のあの席に座ると、筆が進むとかね。でも僕ら作家はその作品から書き手としてたまたま選ばれただけで、芥川賞受賞作はあっても、芥川賞作家はいないと思う」

 だが文学や人生の一回性に、何度生まれ変わろうと気づけないのも人間だった。最新作『回遊人』の主人公〈江川浩一〉は、お世辞にも売れっ子とは言いがたい中年作家。ある時、妻子を残し、〈プチ家出〉した彼はドヤ街の食堂で誰かが落とした〈錠剤〉を見つける。そしてそんなものをあえて飲むのが作家たる所以。宿に戻り、遺書まで認(したた)めた彼は、まだ結婚前で、工作機械の営業マンだった10年前にタイムリープするのだ。

 ずっと手に入れたかった成功やカネや豊満ないい女。だが何度も生き直し、それらを手にしてなお満足とは程遠く、人間とはつくづく懲りない生き物らしい。

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