2017/11/27 16:00

【鴻巣友季子氏書評】都市生活者を夢うつつの感触で紡ぐ

柴崎友香・著『千の扉』
柴崎友香・著『千の扉』

【書評】『千の扉』/柴崎友香・著/中央公論新社/1600円+税

【評者】鴻巣友季子(翻訳家)

 昭和のなつかしい風景が都市開発の陰に埋もれつつある。『千の扉』で作者は、新宿区牛込辺りに実在するマンモス都営団地をモデルにしたという。築四十年以上、三十五棟、三千戸もの部屋があり、七千人近い人々が住んでいる。

 ここで新婚生活を始めることになった大阪出身、三十九歳の女性「千歳」を中心として、団地の住人、かつての住人、住むに至らなかった者、住人たちと触れあった者、団地でヒーローものの撮影をした俳優、広大な団地のどこかに消えていった盗人などなど、数々の人生が断片的に語られていく。

 夫の「一俊」は仕事の忘年会で千歳と軽く話をしただけで、求婚してきた風変りな男。結婚が決まった頃、都営団地に暮らす彼の祖父「勝男」が入院し、新婚夫婦がその四〇一号室に住むことになったのだった。千歳は勝男から奇妙な人捜しを頼まれる。

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