2018/05/31 16:00

鎌田實氏 言葉によって人生が変わった高校時代の体験

「息子さんが困ったら、いつでも来るように言ってください」

 その名刺をぼくは父から渡された。結局、一度も榊原教授を訪ねたことはなかったが、しばらくの間、その名刺はぼくのお守りになっていた。困ったことがあったら、この人のところに行こう、そう思えるところがあるだけで、どんな障壁にも負けないで生きていけるような気がしたのだ。まったくもって、脱帽である。

 人生が言葉をつくり、言葉は人を変える。そんな力をもった言葉との出会いを『曇り、ときどき輝く』(集英社)という本にまとめた。

 人間がどのように言語を獲得したのかはわからない。言語学者のノーム・チョムスキーは非連続的な突然変異が起きたと考えている。心の震えが、声帯を震わせて言葉になったという説もあるし、言語の起源は祈りや歌だったとする説もある。

 しかし、言葉を手に入れて人類の生き方が変わったことは間違いない。そして、それ以来、ぼくたちは言葉を羅針盤にして、人生を切り開いている。

●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。近著に、『人間の値打ち』『忖度バカ』。

※週刊ポスト2018年6月8日号



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