2019/01/05 07:00

がん治療「究極の二択」 放射線か手術か、開腹か内視鏡か

初期のがん治療のベストな選択は?
初期のがん治療のベストな選択は?

 身体の異変に気づいた時、患者が冷静な判断を下すことは難しい。医者の言いなりになってしまったり、勝手な思い込みで行動してしまったり……。後々になってそれが重大な分岐点だったことに気付いても、後悔先に立たずだ。

 定年退職し悠々自適な生活を送っていたA氏(71)は数日間、「微熱」と「だるさ」を感じていた。平熱は36度前後だが、熱を計ってみると37度ほど。息切れと胸痛が生じて、ゴホゴホと咳き込む日が続く。

「この程度なら、放っておけば治るだろう」と自宅で静養していたが、症状はなかなか収まらなかった。

 もともとA氏はコレステロール値が高めで、近所にあるかかりつけのクリニックで薬を処方してもらっていた。

 かかりつけのクリニックを受診したA氏は、胸部レントゲン検査を受けた。その結果、肺に小さな“影”があり、精密検査を受けることに。胸部CT検査を受けると、結果をこう告げられた。

「初期の肺がんです」

 思わぬ言葉に目の前が真っ暗になったA氏。あれこれ考える時間的猶予も精神的余裕もない中で、がん治療に実績のある病院に移る必要が出てきた。A氏は悩んだ末、がん治療に実績のある総合病院を受診することにした。

◆初期のがん治療は「放射線」か「手術」か

 A氏の肺がんは「腺がん」と呼ばれる進行の早いタイプだったが、幸いなことに転移の見られないI期だった。

 総合病院の担当医からは、「すぐに手術して腫瘍を切除しましょう」と言われたが、A氏は即決をためらった。告知以来、がんに関する情報をネットで調べたところ、「初期の肺がんには放射線治療が効果的」とあったからだ。

 がん治療では、手術などの「外科治療」、エックス線などの「放射線治療」、抗がん剤などの「化学療法」が標準治療とされる。

 特に早期がんを治療するケースでは、がんの寛解を期待して、「手術」か「放射線」かを選ぶケースが多い。浜松オンコロジーセンター院長(腫瘍内科)の渡辺亨医師は、「手術を選ぶべき」との見解を示す。

「年々放射線治療の技術は高くなっていて、がん細胞をターゲットとする狭い範囲に放射線を照射することができるようになった。とはいえ、腫瘍の周辺にある健康な細胞まで照射するリスクは避けられません。

 特に肺は放射線に弱く、炎症を起こす怖れがあります。もちろん、がんの発生部位や患者の年齢、体力などにもよりますが、切り取ることのできる早期がんならば、手術を選ぶことがベターです」

 年齢に比べて体力のあるA氏は、医師の勧めに従って手術を選んだ。

◆手術受けるなら「開腹」か「内視鏡」か

 外科手術の先には、新たな2択が現われる。「開腹手術」か、スコープの先についた特殊なナイフでがんを切除する「内視鏡手術」かである。渡辺医師は「内視鏡」を勧める。

「早期がんの場合、体への負担が少ない内視鏡手術を行なうのが一般的です。ただし進行した胃がんや大腸がんの場合は、医師が開腹手術をしてがん病巣を見極め、転移していたらリンパ節まで合わせて切除します」

 患部近くの腹部に数か所の穴を開け、そこからスコープや器具を挿入してがんを切除する、内視鏡を用いた「腹腔鏡手術」は患者の体への負担が少ない。ただし、注意点もある。

「『腹腔鏡手術』は、モニターに映されたカメラ映像を見ながら行なうため医師は思ったようにメスなどの器具を動かせず、開腹手術より難度が高い。熟練した医師かどうかの見極めが重要です」(医療経済ジャーナリストの室井一辰氏)

◆前立腺がんを「切る」か「切らない」か

 手術するのが得策でないがんもある。患者の90%以上が60歳以上で“高齢者のがん”といわれる前立腺がん。医師からは「とりあえず切ってしまいましょう」と言われることが多いが、いまや“切らないほうがいい”という学説が主流だ。

「複数の研究で『前立腺がんは放置しても死亡率に影響しない』『手術により排尿障害などのデメリットが生じる』と示されました。これを受けて、米国放射線腫瘍学会や日本泌尿器科学会は、ガイドラインに、積極的な治療をしないで様子を見る『監視療法』を盛り込んでいます」(室井氏)

※週刊ポスト2019年1月11日号



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