2019/01/25 07:00

肝がん患う玉村豊男氏 「今は病巣を飼いならしている」

エッセイスト、画家、ワイナリーオーナーの玉村豊男氏
エッセイスト、画家、ワイナリーオーナーの玉村豊男氏

 グラビア写真界の第一人者、渡辺達生氏(69)が“人生最期の写真を笑顔で撮ろう”とのコンセプトで立ち上げた『寿影』プロジェクト。渡辺氏は、自然な笑顔を引き出すべく、撮影する人に「一品」を持ってきてもらって、それにまつわるエピソードを聞きながら撮影する。

 エッセイストで画家、ワイナリーオーナーの玉村豊男氏(73)が持ってきたのは、イスラエルのソドムで拾った塩の塊。

 1983年にイスラエルに旅した際、死海のほとりにあったソドムという地名看板がある場所で拾った塩の塊である。旧約聖書ではソドムの町が滅亡する時、預言者ロトの一家だけが逃げることを許されたが、振り返ってはいけないという命に背いて振り向いたロトの妻は塩の柱になった、という伝説がある。

「“過去を振り返るな”という戒めとともに、ずっと書斎の机の傍らに置いています」

 41歳で大量吐血、現在は肝がんを患う。「今は病巣を飼いならしている」と語るが、ずっと意識してきたのは死であり、日々の暮らしの大切さだ。

「いつものように些事を片づけ、犬と散歩に行く。食事を作り、夜にはワインを飲みながら馬鹿話をして眠る。そんな日常が最期まで続けられたら最高に幸せだ」

 遺言は遺骨をぶどう畑に撒くこと。特別なビンテージができそうだが、「“玉村豊男粉骨砕身畑”で作ったワインの味は格別でしょう」と豪快に笑う。

【プロフィール】たまむら・とよお:1945年、東京都生まれ。東京大学仏文科卒業。エッセイスト、画家、ワイナリーオーナーなど多くの顔を持つ。長野県東御市に移住、農園「ヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリー」を経営。

◆撮影/渡辺達生、取材・文/スペースリーブ

◆小学館が運営する『サライ写真館』では、写真家・渡辺達生氏があなたを撮影します。詳細は公式サイトhttps://serai.jp/seraiphoto/まで。

※週刊ポスト2019年2月1日号

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