2019/02/02 07:00

インフルエンザの感染拡大を防ぐ「免疫保持者」の割合は?

年々、感染者数が増加傾向にあるインフルエンザ
年々、感染者数が増加傾向にあるインフルエンザ

 全国的にインフルエンザが猛威をふるっている。インフルエンザには、ワクチン接種による感染の予防効果があるとされているが、「時間がない」「効かない」などの理由で受けない人も多い。『できる人は統計思考で判断する』(三笠書房)著者でニッセイ基礎研究所上席研究員の篠原拓也氏が、インフルエンザなどの感染症の予防接種について、集団免疫の効果を数理的に解説する。

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 はるか昔から、人類は感染症にさいなまれてきた。現代は公衆衛生が向上し、予防接種が浸透しているが、それでも多くの感染症が発生している。

 感染症の中でも、毎年、世界的な拡大を見せるのがインフルエンザだ。日本では、毎年、秋から冬にかけて、インフルエンザの感染者が増加する傾向がある。疫学の研究者の間では、感染症に関する数理モデルが研究されている。その中で、感染症を定量的に分析する手法がいくつか示されている。そこで用いられる概念や用語について、みていくことにしよう。

 まず、「基本再生産数」という用語がある。Roという記号で、英語でアール・ノート(R naught)と呼ばれる。ある感染症にかかった人が、その感染症の免疫をまったく持たない集団に入ったときに、直接感染させる平均の人数を表す。

 もし、Roが1より大きいと、感染は拡大する。1より小さければ、感染はいずれ収束する。ちょうど1なら、拡大も収束もせず、風土病のようにその感染地域に根づくことになる。

 過去に発生した感染症のRoの値は、どのくらいだったのだろうか。医療や公衆衛生関係の研究機関でさまざまな分析が行なわれている。アメリカ疾病予防管理センターによると、はしかは12~18、天然痘やポリオは5~7、おたふくかぜは4~7などとされている。

 また、別の研究では、1918年に発生して世界的に流行したスペイン風邪(インフルエンザ)について、Roは2~3だったとのレポートもなされている。

 なお、1つ気をつけなくてはならない点がある。それは、Roは感染症が発生した時代背景、社会、国、病原体などによって異なるということだ。

 それでは実際に、Roを計算するには、どうしたらよいだろうか。

 分析対象の感染症について、「1回の接触での感染確率」、「単位時間当たりの接触の回数」、「感染症が感染性を保つ平均時間」の3つの要素を測定や推測によって求めて、これらを掛け合わせて算定することが知られている。各要素の測定や推測の方法については、さまざまな研究が行なわれている。

 感染症の拡大予防には、「集団免疫」が重要となる。これは、集団内に免疫を持つ人が多ければ、感染症が流行しにくくなることを利用した感染拡大を防ぐ考え方だ。具体的には、予防接種等がこれにあたる。

 ある集団で、Roが3である新たな感染症に備えることとしよう。この集団では、まだ誰もこの新たな感染症にかかったことがない。外部から感染症にかかった人がこの集団に入ったとする。1人の感染者から、平均して3人が直接感染する。

 もし、この集団の3分の1の人が免疫を持っていれば、感染は平均して2人に抑えられる。また、3分の2の人が免疫を持っていれば、感染は平均して1人に抑えられ、3分の2を超える人が免疫を持っていれば、感染は平均して1人未満に抑えられる。この感染症はいずれ収束することになるはずだ。

 これが、感染症拡大のモデル化を活用した集団免疫の設計だ。感染症のRoの大きさに応じて、集団内の免疫保持者の割合を、(Ro-1)/Roよりも大きな水準にまで高めておけば、集団免疫が働いて感染症は収束に向かうことになる。

 このように、感染症の拡大をモデル化することで、集団免疫が働くために必要な免疫保持者の割合を計算することができる。

 ただ、実際には、予防接種を受けたからといって、全員が免疫を獲得できるわけではない。仮に、10人が予防接種を受けても、5人しか免疫を獲得できないとしよう。この場合、免疫保持者が必要な数に達するためには、その倍の数の人に予防接種を受けてもらうことが必要となる。

 以上のRoや集団免疫などの考え方は、感染症の数理モデルの最も基本的な部分とされている。実際には、この数理モデルを発展させて、

・感染しておらず免疫を持っていない人(今後、感染・発症する可能性がある人)
・すでに感染している人
・感染から回復して免疫を持っている人

 の3つのグループに集団を分けるなどして、それぞれのグループ間の人の推移を方程式で表示して、より複雑な分析につなげている。(こうした数理モデルの詳細については、専門書に譲ることとする)

 なお、感染症に関する数理モデルについては、いくつか限界があるとの指摘もある。たとえば、

・そもそも性別や年齢などの違いによって、感染の仕方が異なるはずだが、モデルはこれを無視している
・感染して発症した人は、医療施設に入院したり、自宅で療養したりするため、他の人との接触の機会が減るはずだが、そうした点をモデルは加味していない
・本来、感染経路によって感染確率は異なるはずだが、モデルは感染経路を1つに限定している

 こうした数理モデルの限界をよく認識した上で、感染症を分析し、理論的に、感染拡大に備える取り組みが、進められている。

 日本では、毎年、秋になると、インフルエンザの予防接種が勧奨される。また、定期的に、乳児・幼児向けに、BCG、水痘、日本脳炎など、さまざまな予防接種が行われる。一方、65歳以上の人向けには、肺炎球菌ワクチンの予防接種が行われる。しかし、ワクチンの種類によっては、接種率がなかなか高まっていないものもある。

 集団免疫の考え方を理解したうえで、毎年予防接種を受けてない人は、まずは受ける習慣をつけてみてはいかがだろうか。

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