2019/02/14 07:00

脳梗塞治療の境目は発症4時間半以内、治療費に大差発生

治療費の不安は絶えない
治療費の不安は絶えない

 病気になったら医療費に関して漠然とした不安を抱くが、本当に怖いのは「お金がかかること」よりも「治療費の総額がいくらかかるかを知らないこと」だ。

 たとえば、脳梗塞治療では、いかに早く治療を開始できるかで、その後の医療費総額が変わる。くどうちあき脳神経外科クリニック院長の工藤千秋医師が解説する。

「発症から4時間半以内に治療を開始できる場合は、脳の血管に詰まった血栓を点滴で溶かす『血栓溶解術(t-PA)』を行ないます。t-PA治療を受けた患者のうち、4割は日常生活に復帰できるとされます。後遺症が出ないくらいまで回復することも多く、退院後も再発予防の内服薬の費用程度で済みます」

 この場合の治療費は、薬代と入院費(2週間)を合わせて約72万円(3割負担額)となり、患者の自己負担額に一定の上限を設ける高額療養費制度を適用すると、自己負担額は約10万円で済むことになる。

 一方で、発症から4時間半のタイムリミットを過ぎると、治療法は大がかりになってしまう。

「太ももの付け根の動脈から直径2mmほどのカテーテルを入れ、血栓溶解剤(ウロキナーゼなど)を投与したり、カテーテルの先端に専用の装置をつけて血栓を絡めとる術式(血管内治療)をとることが多い」(前出・工藤氏)

 この治療法では、入院が長期化し治療費がかさむ場合がある。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が指摘する。

「t-PA治療の入院日数は2週間程度ですが、カテーテルを用いた治療では4週間程度と長引く傾向があります。高額療養費制度は『ひと月ごと』に費用を計算するので、入院が月をまたぐと、ひと月目は治療+入院費、ふた月目は入院費のみとなり、それぞれ自己負担上限額の約10万円がかかることになる。つまり、t-PA治療に比べ、自己負担額が2倍になってしまうのです」

 これだけでも10万円程度の差がつくが、さらなる問題は“退院後”に潜んでいる。脳梗塞の闘病は退院したら終わりではなく、半身麻痺や言語障害などの後遺症と付き合っていくことになる。

「退院後は、理学療法士や作業療法士がいる病院に通ってリハビリを受けることになります。リハビリの効果が現われる期間は人によって異なり、病院では最大6か月までリハビリを受けることができます。週3回、1日2時間のリハビリを受けた場合、月額約4万3000円(3割負担額)となり、6か月続ければ約26万円の負担がかかる。

 それでも回復しない場合は、介護保険を使って介護老人保健施設でリハビリを続けたり、民間のリハビリ施設に通うことになります。ただし、介護施設では回復に向けた本格的なリハビリが受けられないケースも多く、民間では月額10万円以上の費用がかかる施設も珍しくない。1年間続けたとしても100万円以上の差が出てしまいます」(室井氏)

 当然、リハビリを受ける期間は安定的な収入の確保が難しくなることも予想される。

 医療関係者の間で、「脳梗塞のリハビリは退院してからが本番」といわれているのは、回復までのプロセスに加えて、治療費の出費と捻出という問題も大きいからだ。

※週刊ポスト2019年2月15・22日号

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