2019/02/25 16:00

自宅評価額高い場合の「配偶者贈与」 二次相続で税金10倍も

相続大改正「あなたが確認すべきポイント」早見表
相続大改正「あなたが確認すべきポイント」早見表

 父親が家を建てた時は周囲に畑もあったが、都市化でいまやマンションが建ち並び、地価も上がった。親の資産に預貯金はそれほどないが、自宅の不動産価値はかなりある──。都市部の相続で多いのがそんな「主な資産は自宅の土地建物」というタイプだ。

 遺言がなければ妻(配偶者)と子供たちで遺産分割を話し合うことになるが、預貯金が少ない場合、法定相続(妻と子で遺産を折半)で分配するには自宅を売って現金化しなければならないケースがある。そうなると妻は住む家を失ってしまう。

 そんな事態を防ぐために7月1日の改正(※民法の相続規定/通称「相続法」の改正)で新たに創設されるのが「配偶者居住権」という権利だ。

 これは自宅の財産価値を「所有権」と配偶者の「居住権」に分割し、所有権は子供が相続、妻は居住権を持つ。そうすれば、残された妻が自宅に生涯住み続けながら、亡夫の残した預貯金の一部で生活できるようになる。

 もうひとつ、配偶者の生活を守るために新設される制度が自宅の「配偶者贈与」の優遇措置である。

 結婚20年以上の夫婦間で自宅を生前贈与(遺贈)した場合、自宅を「相続財産から外す」という制度だ。現行制度では夫が妻に自宅を生前贈与や遺贈した場合、「遺産の先渡し」とされ、相続財産に含められてしまう。結局、自宅分を含めた財産は子供と遺産分割しなければならない。

 それに対し新ルールでは、妻に贈与された自宅は「妻のもの」とされ、それ以外の資産を妻と子供で遺産分割すればよくなる。法務省は「遺産分割における妻の取り分が増えることになります」(新ルールのパンフレットより)と説明している。

 2つの新ルールによって妻が自宅に住み続けることが容易になるが、税金面で注意が必要なのは「配偶者贈与」を選ぶケースだ。自宅の評価額が高い場合に「配偶者贈与」を選ぶと、より多く税金を取られる可能性がある。

 例えば、相続人が妻と子供2人のケース。財産が自宅(評価額4000万円)と預貯金2000万円の合計6000万円の場合、通常の相続なら合わせて60万円の相続税がかかる(パターン1)。しかし、妻が自宅の配偶者贈与を受ければ、相続財産が減るため、相続税はかからない(パターン2)。一見、得なように見える。

 ここで気をつけておきたいのが、「二次相続」と「贈与税」だ。

 遺産分割を考える場合、父親の遺産の相続税額だけでなく、将来、残された妻が亡くなった時(二次相続)にかかる相続税まで計算してトータルで税金が少なくなる方法を選ぶのが賢明なやり方だ。

 パターン1で妻が相続する財産は3000万円だから、二次相続では相続税はかからない。

 パターン2では、妻の財産が亡夫から受け継いだ自宅と預貯金を合わせた5000万円だから、二次相続になると子供たちに80万円の相続税がかかる。また、見落とせないのが妻が夫から自宅を贈与された時にかかる贈与税だ。

 贈与税には20年以上連れ添った夫婦間で自宅を贈与する時に2000万円まで非課税(控除)になる通称「おしどり夫婦特例」がある。だが、このケースのように自宅の資産価値が4000万円あると控除額を大きく超え、695万円の贈与税がかかるのだ。

 通常の相続を選べば相続税は60万円の税金で済むはずが、配偶者贈与を利用すると税金は10倍以上になってしまうのである。

 相続ルールの改正前に押さえておきたいのは、「配偶者居住権」と「配偶者贈与」は、必ずどちらかを選ばなければならない、というものではないことだ。円満相続税理士法人代表の橘慶太氏が語る。

「2つの新ルールは基本的には相続人の間に係争があるケースを前提に配偶者の権利を守る制度です。遺産分割が円満に行なわれるのであれば、現行制度でも自宅を妻と子供たちの共有名義にして妻がそのまま住み、金融資産も分割相続することができる」

 税制面で不利なら新制度を使わない選択肢もある。

※週刊ポスト2019年3月8日号



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