2019/02/25 16:00

「死んだらあげる」の証文 遺族による贈与拒否は有効か

「死んだらあげる」という証文は有効か
「死んだらあげる」という証文は有効か

「私が死んだら、○○はお前にあげる」──家族や親戚などにこのように言い残すことは珍しくないが、その多くは口約束だろう。ところが、「死んだらあげる」という証文まであるのに遺族から贈与拒否された場合、どうすれば良いのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 故郷に盆栽好きなおじさんがいて「自分が死んだら、高価な盆栽をあげる」と証文まで書いてくれました(署名だけ)。その後、おじさんが亡くなり、遺族に証文を見せたところ、「遺書には書いてない。盆栽の管理は遺族に託す、と書かれている」と受け渡しを拒否。この証文、法的に役に立たないものですか。

【回答】
 死んだら盆栽をあげる──との約束は「贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与」(死因贈与)です。文書によらない死因贈与は、取り消し可能ですが、証文があれば、取り消しできません。押印がなくても、署名で本人の文書であることがわかりますから、大丈夫です。

 死因贈与は、贈与者の死亡で効力が生じる点において遺言と類似しているので、民法は「(死因贈与の)性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する」と定めています。そこで「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる」との遺言者の最終意思を尊重した民法1022条の準用が問題になります。

 遺言は遺言者が単独でしますが、死因贈与は贈与者と受贈者との間の契約で、法的な性格が異なり、撤回できないとする説もありますが、通説は不当な結果になる例外を除き、遺言の撤回の規定が準用されることを認めます。

 次に、「管理は遺族に託す」とある遺言の趣旨が重要です。通常、遺言で遺産の帰属を決める場合、誰々に相続させるとか、遺贈するといった表現が多いので、「管理を託す」というのでは、果たしてあなたへの死因贈与と矛盾し、贈与の撤回になるかは微妙です。

 遺言の解釈は、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきもので、本件遺言書作成当時の事情を考慮し、遺言の趣旨を確定すべきとされています。この点、他人の家のことですから、遺族も教えないかもしれません。

 とはいえ、撤回に疑問があるのですから、証文を示して、遺言で撤回されたと解される根拠についての説明を求めつつ、盆栽への愛着や故人との約束について詳しく説明し、理解してもらえるよう話し合ってはいかがでしょうか。

【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2019年3月8日号

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