1杯の珈琲を味わうのではない、思い出を味わうのだ
昭和オヤジ限定「ノスタルジー喫茶めぐり」 第3回 カフェーパウリスタ(銀座)
1日に何度も喫茶店に行く。多い日は5回も6回も行く。喫茶店代、正直バカにならない。でも喫茶店にはそれに代えられない価値があるのだ。
仕事の合間に空白の時間ができたら、カフェではなく喫茶店に向かおう。俺が愛するノスタルジー喫茶とは、昭和の香りがする喫茶店だ。その香りに包まれていると、懐かしくてちょっとせつない気持ちになる。

銀座8丁目にたたずむカフェーパウリスタ(撮影/青野正、以下同)
この喫茶店の話をすると、極めて個人的な思い出になってしまうことを許してほしい。
そもそも最初の珈琲の思い出は、日曜日の朝に母親がやかんのお湯をドリップして淹れるMJBの珈琲だった。MJBは緑色の缶に入っていて、開けたての香りは子供心にもうっとりするくらいいい匂いだった。子供はその珈琲に温めたミルクを入れて飲んだ。
珈琲とミルクを同時に注ぐのが正式のカフェオレだと父が聞きかじった知識を披瀝して、慎重にふたつを注いで飲んだ。
正直味の違いはわからなかった。でもちょっとした異文化体験だった。