2017/11/17 21:00

『先に生まれただけの僕』が示す親の説明責任。理不尽な現実は伝えるべきか?

現在、日本テレビ系で放送中の『先に生まれただけの僕』櫻井翔ふんする教育現場のことなどなにひとつ知らない若きビジネスマンが旧態依然とした学校に風穴をあけていく奮闘劇です。

ただし、その大筋だけで見てしまうのはちょっともったいない。学園が舞台なのでティーン向けに思われがちですが、このドラマは違います。むしろ子どものいる親ほど意義深い内容になっているからです。

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■社会の理不尽や格差を伝えることの意義とは

5話までの個人的な見解ですが、もっとも考えさせられたのが、「社会の本音と建て前」をどこまで子どもに伝えるべきかということ。本音と建て前は、「社会のいいところ、悪いところひっくるめてのリアル」と言い換えていい。もっといえば、はたして自分はいまの現実社会の“明と暗”を子どもにきちんと伝えることができているかということです。

本ドラマの主人公で新米校長の鳴海涼介は、社会に“理不尽や格差”があることを生徒たちに隠しません。ちょっと前のめりの性格もあってか自分が良かれと思ったら、ネガティブなことも生徒にズバズバ伝えていきます。
●デジタル万引の愚かさと罪
ある生徒がコンビニエンスストアで漫画の全ページをスマホで写真に撮るデジタル万引をしでかしたとき。


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担当教師は、メールをみていただけとしらを切る生徒を、注意にとどめて一度見過ごす選択をします。本音のところでは追求しなくてはならないと思っているが、ここは穏便に済ます建て前を選択するのです。

対して、鳴海はどうか? 生徒を責めることはないが、「デジタル万引の愚かさと罪」を徹底的に説明。漫画家の著作権のこと、お店が被害をこうむること、価値あるものには対価が必ず生じることなど安易な隠ぺいには走らずに、きちんと説明することで反省を促していきます。

●企業の有名大学採用の現実
あるときは大学進学を前にした3年生に、学歴が及ぼす就職の現実を話します。

「うちの学校の学力でいける大学は、たかがしれている。そういう大学に入っても、残念ながら就職に有利になるとはいえません。企業は採用する際、優秀な大学の生徒をポイントに置いている現実がある。ですから、みなさんは人間力で勝負しなければならない」と。

●奨学金が借金である覚悟
家庭の事情で大学進学をあきらめかけた生徒に対して、担任は奨学金制度があることを報せ、大学進学を進めます。


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でも、鳴海は奨学金はじつは借金で、大学卒業したらすぐに返済が始まること、それで苦しむ学生が多い現実を伝えます。それでこう問います。「その覚悟があるか」と。

■理想論だけでは子どもは不安を増すだけなのか?


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たしかにいずれも厳しい言葉です。夢も希望もない(笑)。その言葉を受けた登場人物たちもはじめは戸惑いを隠せません。ただし、ドラマ上ではありますが、いずれも生徒たちは現実をきちんと受け止め、自分という人間について考えをめぐらせます。

先行きが不透明な時代。世界情勢をみてもけっして楽観視はできない。いま、社会に厳然とある現実は、それがたとえひどいことであっても変に包み隠さず、子どもには伝えるべきではないのだろうかということ。

むしろへんな理想論や絵空事だけ伝えていると、結果として子どもたちにわからないことの不安感を与え、かえって将来像を描きづらくさせているのではないだろうかという心配です。厳しい現実であっても情報を与えないことによって、きちんと物事を考える機会を奪ってしまっているのではないだろうか。親としてどう行動すべきなのか、突き付けられている気がします。

■危険を遠ざけてしまう親の立場を見直すべき?


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ふり返ってみると、社会人になったとき、“これは学生時代に知っておきたかった”“子どものころに教えてほしかった”といった仕事や社会の常識があります。逆に“夢が壊れるので知りたくなかった”という経験をした人もいるかと思いますが…。

いざ自身が親の立場になってみると、すっかり抜け落ちて子どもに伝えていない。わが子かわいさか、どうしても起きそうな危険や危惧されることをいち早く察知して、そこから子どもを遠ざけようとしがちです。

それでいて子どもになんでダメなのか聞かれると、“悪いことは悪いんだ”“これはいいことなんだからやっておきなさい”と、具体性に欠ける説明ですましがちです。私自身も思い返すと、そんな対応をした記憶がちらほら…。

ただ、そこは子ども。もし現実を伝えるならば、実例をあげてしっかり説明してあげなければならない。あいまいな説明では、大人ならなんとなく察しますが、子どもは納得できない。もちろん、時と場合をしっかり考えることが必要になるでしょう。

鳴海はいい意味で、子どもを子ども扱いしません。人として向き合う。人生の先輩として社会のリアルを伝えていく。それがいま必要ではないか? このドラマからはそんなメッセージが聞こえてくるようです。

もちろんこれが正解かはわかりません。ただ、やはり、現実の厳しさはいずれ体験するもの。いましきりに“説明責任”という言葉が報じられますが、われわれは大人として、子どもに説明責任を果たしているのか? 現実を見せないままでいいのか? そんな問いがなげかけられているように思います。

今後、どんな展開を見せるかわかりません。でも、本ドラマは大人が子どもに伝えるべき社会の現実のひとつの目安、ひとつの指針を与えてくれるような気がします。



(水上賢治)

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