2018/04/27 10:01

寺島しのぶ、“イタい”アラフォーヒロインを好演「ドラマはふとした偶然から始まる」

寺島しのぶ、“イタい”アラフォーヒロインを好演
寺島しのぶ、“イタい”アラフォーヒロインを好演

女性が持つ多面性を表現する女優という仕事。美しさも醜さも、すべて生々しくさらけ出す胆力において、日本の女優の中で寺島しのぶさんは抜きん出た存在です。

平栁敦子監督による日米合作映画『オー・ルーシー!』(4月28日公開)で演じたのは、東京で鬱屈した日々を送るアラフォーの女性会社員・節子。

欲望を押し殺してきた女性が悦びを見つけ、ハジけ、傷つき、新たな可能性を見つけようとする姿をチャーミングに演じた寺島さんに話を聞きました。

“イタい”ヒロインを好演

『オー・ルーシー!』の主人公・節子は、東京で暮らす43歳の会社員。独身の住まいはゴミだらけの“汚部屋”。職場でも日陰の存在で、同僚たちと積極的にかかわろうとせず、斜め上から他人を見て心の中で悪態をついているような心が乾いた女性です。

ある日、姪の美花(忽那汐里さん)から、自分の代わりに英会話教室に通ってほしいと頼まれます。怪しげな教室に足を踏み入れると、イケメンの米国人講師ジョン(ジョシュ・ハートネットさん)が待っていました。金髪のカツラと、“ルーシー”という英語名を与えられた節子。“ハイ、ルーシー!” ——ジョンにハグされた瞬間、節子の中で押し殺していた何かがスパークします。

突然アメリカに帰国してしまったジョンを追って、節子は一路カリフォルニアへ。歯止めがきかなくなった彼女が、そこで見つけるものとはーー?

ドラマはふとした偶然から始まる?

——英会話教師にハグされて舞い上がってしまう節子さんは、平たく言うとかなりイタい女性ですよね。

寺島しのぶさん(以下、寺島):節子とおなじくらいの年齢の人には、「わかる」という人と、あまりにもイタすぎて「ここまでは見たくない」という人がいるのかなと思います。

若い人の目には一体どう映るのかな……と思いますけど、平栁監督がよく言っていたのは、「偶然は必然である」ということなんですよね。

ふとした瞬間に燃え上がってしまうトキメキみたいな、ふっとした瞬間からドラマが始まっていく。ちょっとした出会いがきっかけになるというのは、普遍的なことだと思います。

——私も節子と同じアラフォーなのですが、自分も含めてまわりを見ていると、やりたいことがあってもその欲望を何となく押し殺してしまう女性が多い気がします。

寺島さんからは、仕事もプライベートもアグレッシブな印象を受けるのですが、タイプの違う節子という女性を演じることに難しさはなかったですか?

寺島:意外と撮影現場で困ることはなかったです。だって、あれだけの二枚目にハグされたら、そりゃもう……(笑)。ハグのシーンは私のなかで一大イベントだったから、ホントは頭上からカメラがぐるぐる回るような、「ここから始まった!」みたいなめくるめく演出をやってほしかったんですが、意外とあっさり進んでいきました(笑)。

平栁監督は、そういうところではなく、人間の陰湿さとか、日本人のちょっと“しっとり”してる部分を描きたかったのかなと思いました。

——確かに、通勤風景や会社の描写はかなり“しっとり”暗かったですね……。

寺島:グレーの地味なスーツを着て、会社にいるシーンを撮影しているとすごく湿った気分になったんです。

節子さんは思い切ってロスに行きますけど、私自身、ロスで撮影が始まったとき、気分が変わったんですよね。空気は乾いてるし、まず広い! あまりに近すぎた日本での人と人との距離感が、一気にアメリカで遠くなる。

そこで生まれる節子さんの開放感があって、私自身、演じていくなかでロスの環境に助けられた気がします。顔も全然変わってきちゃった(笑)。

——勇気を出して一歩踏み出してみると、思わぬ心の変化を実感することはあります。必ずしもメイクの力ではないと思いますが、節子さんがロスに行ってからどんどんキレイに、可愛くなっていくのが面白かったです。

寺島:それはやはり節子さんの開放感からくるものなんですよ。「ジョンのために来た」って思い込んじゃっているから。入れ墨まで入れちゃうし。

私も「ここまでやっちゃいましたか……。そりゃ彼、引いちゃうよね」って思いながらも楽しんで演じていました(笑)。きゅーって縮こまっていた人がポーンっとハジけたとき、こうなっちゃうんだ……って思いました。

ロスという土地のカラカラの気候と太陽の光、人との距離と広大な土地が、ああいう風に彼女をオープンにさせちゃったのかなという気がします。

——ところで、寺島さんはモヤモヤした気分になったとき、どう発散していますか?

寺島:千葉の海に行きますね。主人がすごく海が好きという理由もあるんですけど、海って果てしないから、見ていると開放感を得られます。

「共感できない」作品があってもいい

——本作は日米合作映画として製作されていますね。監督・脚本を手がけたのは、本作が長編映画デビューとなる平栁敦子さん。17歳で渡米し、海外で映画を学んだ新鋭として、カンヌなど海外の映画祭で高い注目を集めています。

寺島:監督はアメリカに住んでいるから、感覚が日本人とはまたちょっと違うんです。日本の会社の描写の切り込み方も、普通の日本人が描く職場じゃない。そういういろんなバランスが面白いなと思うし、説明過多ではなく「勝手に考えてください」みたいな投げかけ方も好き。

主人公に共感できないって言われちゃうとそこまでなんですが、そこを入り込んでいけると、いろんなことを考えることのできる映画だと思います。万人ウケする映画ではない気がしますけどね。でも、そういう作品があってもいいんじゃないかな。

——すでにフランスで公開され、好評を博しています。

寺島:主人のフランスの友だちも何人か見に行ってくれて、「すごくおもしろかった!」って言ってくれました。

アメリカ映画というより、ヨーロッパで受けるような余白が多い映画だと思います。もうちょっとドラマティックにつくる方法もあったし、コメディチックにする方法もあった。日米合作ということもあって、もっとハリウッド向きにわかりやすくつくれという声も周囲からあったようで、監督はそこで闘っていたみたいです。

でも監督は、人間の心のひだといった部分をとても大事にしてくれた。日本で受けるか、受けないか、それは全然わからないけど、私はこの映画を気に入っていますね。

後編に続く。

(文:新田理恵、写真:宇高尚弘/HEADS)

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