2018/07/01 20:00

娘が綴る破天荒な父親のライフストーリー 『生きるとか死ぬとか父親とか』

知っている人の知らない話を
聞くのっておもしろい


今月のオススメ本
『生きるとか死ぬとか父親とか』

父のライフストーリーを綴った1冊は、娘と父が膝を突き合わせた約2年間のドキュメントでもある。初耳エピソードが開陳されるたびに、娘が抱く父のイメージが微妙に変化し、父との関係性がかすかに変わっていく。ハードボイルドの香りすら漂う文体も魅力的。
ジェーン・スー 新潮社 1,400円

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 本誌巻頭コラムでもお馴染み、ジェーン・スーの最新エッセイ集の題材は、父だ。2016年の元旦、娘は父に彼自身についての話を聞き、書き留めようと決めた。

「母は私が24歳の時に亡くなっているんですが、彼女の母以外の顔を知らないんです。彼女の人生を、本人の口から聞く機会はなくなってしまいました。父について、同じ思いをしたくなかったんですよね。ただ、とてもじゃないけどあの人を受け入れられないって時期が長かった(苦笑)。私自身、40歳を過ぎて吹っ切れることも多かったし、父も後期高齢者になって丸くなってきた今なら、向き合えるんじゃないかと思ったんです」

 とにかく、破天荒な人だ。事業に成功し一時は小石川に自宅兼用のオフィスビルを構えたが、のちにコカした借金は4億円。不倫相手の存在を妻も娘も知っていた。とはいえ、ユーモア溢れる魅力的な人なのだ。

「もともと父親のエピソードは、人に話すと大抵笑ってもらえる鉄板ネタだったんです。ただ、おもしろネタは今回、ほとんど入れなかったんですよね。そうじゃなくて、父はどういう経験をしてきて、どうしてこういう人間になったのか。例えば、自営業者として独立してからの30代の頃の話を、父の友人から初めて聞きました。これまでは“父と一緒に働く人は災難だな”としか思っていなかったのに、“自分が父と同世代だったら、一緒に働いてみたかったな”と思ったんですよ。ちなみに、どうしてこういう人間になったかの答えは“元から”でした(笑)」

 父の話が「おもしろ」に流れそうになったら、手綱をぐっと引き戻す。と同時に、自身の筆が「美談」のノリを求め始めたら、己を𠮟責する。できるだけクールに、客観的に、自分が抱えている問題意識や感情を整理しながら、書く。その結果、「『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』という本を書いた時、“女は30代のうちに結婚出産”という価値観と向き合ってみて、どうでもいいやと憑き物が落ちたんですよね。この本でも、世間一般の“父と娘”という関係への執着が解けて、私達なりの家族の形を受け入れられるようになったんです」

 本書を読み、自分も両親に話を聞いてみたという人が続出するだろう。

「聞けるタイミングがあったら、聞いたほうがいいと思います。その理由は、親孝行になるからとか道徳的なことではなくて、知っている人の知らない話って単純に、めっちゃおもしろいんですよ」


ジェーン・スー

作詞家/ラジオパーソナリティ/コラムニスト。
『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)で第31回講談社エッセイ賞を受賞。
『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』(文藝春秋)、『 今夜もカネで解決だ』(朝日新聞出版)が好評発売中。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」(月~金、11:00~13:00)が放送中。

文=吉田大助

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