2018/07/07 20:00

古内東子の歌詞は「嫉妬プレイ」? 横山剣が彼女の圧倒的才能に迫る

 東洋一のサウンド・マシーン、クレイジーケンバンドを率いる横山剣さん。その常人の域を超えた旺盛なクリエイティヴィティにインスピレーションを与える源泉のひとつが、魅力的な女性たちの存在です。これまでの人生で恋し憧れてきた、古今東西の素敵な女性について熱く語ります!


#003 古内東子


古内東子(ふるうち とうこ)

1972年生まれ。東京都出身のシンガーソングライター。93年、シングル「はやくいそいで」でデビュー。96年には自身最大のヒットシングルとなる「誰より好きなのに」をリリース。松任谷由実にも比肩する「恋愛の教祖」として讃えられる。98年に発表したアルバム『魔法の手』はオリコン首位を獲得。現在まで計17枚のオリジナルアルバムを世に送り、コンスタントに活動を続けている。

「Peach Melba」は名曲!

 1990年代は、日本に才能ある女性シンガーが綺羅星のごとく登場した時代でした。Chara、UA、MISIA……。そんな中でも、僕が最も注目していたのが、古内東子さんです。

 93年、僕は、神崎まきさんというシンガーの『joy』というアルバムに、作曲家として2曲を提供しました。

 このCDに「ON THE PLANET」という曲が収録されていたんですが、これがひと際光を放っていた。作曲のクレジットを見ると、古内東子とある。それを機に興味を抱き、彼女の作品を追いかけるようになりました。

 一番好きな楽曲は、94年にリリースされたサードアルバム『Hug』に収録されている「Peach Melba」。初めて聴いた時、何て色っぽい曲なんだと驚きました。とてもエロティックなのに、ヴィブラフォンとフルートが涼し気で、品がある。


『Hug』(94)。「Peach Melba」の編曲を手がけているのは、当時オリジナル・ラヴにキーボード奏者として所属していた木原龍太郎。

『Hug』には、この曲の他にも、「うそつき」「もっと」といった珠玉の名曲が収められています。一時期の僕は、このアルバムばかりを繰り返し聴いていたものです。

 その後に発表された『Strength』(95)、『Hourglass』(96)など、ニューヨークやロサンゼルスで録音を行ったアルバムもまたすごい。

 何しろ、デヴィッド・T・ウォーカー、デヴィッド・サンボーン、ランディ・ブレッカー、オマー・ハキムといった凄腕ミュージシャンが参加しているんだから、そのクオリティは半端じゃない。

 初めてご本人にお目にかかったのは、2001年ぐらいだったかな。青山のCAYで開催されていた「LATIN HARLEM」というイベントに、僕も古内さんもゲスト出演したんです。その時、僕のリクエストで彼女が歌ってくれた「Peach Melba」のラテン仕様がめちゃめちゃセクシーでドキドキしました。

幻のデュオ「ケンちゃんトコちゃん」


『Strength』(95)。初の海外録音を含む4枚目のアルバム。ニューヨークが誇る錚々たるプレイヤーたちが顔を揃えている。

 その後、雑誌の対談でお会いするなどしてだんだん打ち解けました。実際に話をすると、大阪のどこどこのホルモン焼が美味しいなんてことを教えてくれる。楽曲のイメージとは違って、気さくなんです。

「ケンちゃんトコちゃん」なるデュオを組もうなんて盛り上がったりしたこともあります。ちなみに「ケンちゃんトコちゃん」というのは、70年代初頭に放送されていた実在の児童向けTVドラマのタイトル(笑)。

 なお、クリスマスシーズンに開かれる彼女のコンサートでは、クレイジーケンバンドの「クリスマスなんて大嫌い!!なんちゃって」を歌ってくれていたそう。ありがたいことです。

 古内さんの綴る歌詞はというと、恋愛感情を抱いていた男性が、自分の友達と付き合ってしまうような、ちょっとねじれた内容のものが多い。上品な嫉妬プレイ。スタイリッシュなサウンドなのに歌詞は生々しい。そこに惹かれます。


最大のヒット曲である「誰より好きなのに」を収録した5枚目のアルバム『Hourglass』(96)。伝説的米国人ドラマーのジェームズ・ギャドソンと元オリジナル・ラヴの小松秀行がプロデュースを分け合っている。

 彼女の歌を聴くと、90年代に日本でも活躍した香港の歌姫、サンディ・ラムのほどよく濡れた歌声を思い出します。

 華僑系シンガポール人ミュージシャン、ディック・リーがサンディ・ラムとデュエットした「ラヴァーズ・ティアーズ」という曲があります。香港で親しまれているスタンダード「情人的眼涙」を、90年代初頭にこの2人が装いも新たにカバーしたものなんですが、このヴァージョンを、さらに古内さんにカバーしてもらいたいですね、できることならば本家のディック・リーと一緒に。

 彼女にカバーしてほしい楽曲について考えると、何だか楽しくなってきます。例えば、アリーヤの「エイジ・エイント・ナッシング・バット・ア・ナンバー」なんかはどうだろう?

「年齢なんてただの数字でしかないわ」と訴えるこの曲は、当時15歳の若さだったアリーヤが歌うことに意味があったわけだけれど、40代半ばを迎え、お子さんもいらっしゃる古内さんが今歌うと、また逆の深いメッセージが生まれるはず。

 自分が今、もしも彼女をプロデュースできるなら? 音数の少ない、跳ねたジャズファンク的な楽曲をSuchmosみたいなサウンドでやったら、さぞかしカッコいいんじゃないかと思いますね。


横山剣 (よこやま けん)

1960年生まれ。横浜出身。81年にクールスR.C.のヴォーカリストとしてデビュー。その後、ダックテイルズ、ZAZOUなど、さまざまなバンド遍歴を経て、97年にクレイジーケンバンドを発足させる。和田アキ子、TOKIO、グループ魂など、他のアーティストへの楽曲提供も多い。2018年、クレイジーケンバンドはデビュー20周年を迎え、8月1日(水)には3年ぶりとなるオリジナルアルバム『GOING TO A GO-GO』のリリースが決定。9月24日(月・祝)には、横浜アリーナでデビュー20周年記念ライブも行われる。
●クレイジーケンバンド公式サイト http://www.crazykenband.com/

構成=下井草 秀(文化デリック)

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