2018/08/21 12:00

おいしくて美しい中央アジアの国 カザフスタンで女性ふたりの気まま旅

 世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、交替で登板します。

 第190回は、名前は知っていてもどんな国かは知らない人が多いあの国を、芹澤和美さんが訪ねます。


最大の都市アルマトイは
居心地のいい街


カザフスタンの人たちはみんな笑顔がチャーミング!

 カザフスタンにウズベキスタンにトルクメニスタン……。いつか、国名に「スタン」と付くところを旅してみたいと、ずっと思っていた。日本と同じアジアだけれど、旧ソ連の名残もあって、シルクロードや遊牧民族の歴史を思い浮かべる中央アジアの国。その夢が、ようやく2018年の夏に実現した。


カザフスタン最大の都市はアルマトイ。山麓に広がる住宅街はカラフルでかわいらしい。

 行き先は中央アジア最大の国、カザフスタン。2017年から、最長30日までビザが不要になった今こそ、行き時だ。この国最大の都市アルマトイと首都アスタナを1週間で巡る旅に出た。


アルマトイの絶景スポット、「コクトベ」から市内を一望。天山山脈を背景に高層ビルが立ち並ぶ。

 ソウルからアルマトイまで、カザフスタンのフラッグ・キャリアであるエア・アスタナで約6時間半~7時間。帰路はアスタナからソウルまで同じく約6時間。中央アジアというと遠いイメージがあるけれど、意外と日本からアクセスしやすい。


アルマトイの街中は、夏だけに炎天下は暑かったけれど、湿度が低く日陰はとても爽やか。

 今回は女性ふたり旅。道連れは、ソウルで翻訳家として活躍している旧友だ。お互い、出発前はドタバタで街の下調べをする余裕はなく、「予定は立てず、その日の気分で気ままに街を歩こう!」と開き直って、旅がスタートした。

 アルマトイの空港で合流した後、ホテルのフロントでもらった地図を片手に、さっそく街歩きへ。


有名な観光スポットだけでなく、通りに立つ銀行や企業の建物も美しい。

アルマトイは、1997年までこの国の首都だった大都会。天山山脈に見守られるなかに、緑豊かな街並みが広がっている。旧共産圏らしい巨大で無機質な建物があるかと思えば、ヨーロッパ風のかわいらしい建物が並ぶ通りもあって、風景はなかなか面白い。


アルマトイの語源は「リンゴの里」。かつて、街にはリンゴの花の香りが漂っていたという。

 歩くに連れ感じたのは、街が清潔なこと。道にゴミは落ちていないし、歩道も広くて歩きやすい。道行く人も、見間違えてしまうほど日本人とよく似たアジア系が多くて、なんだか和む。


街中には、アイスクリームショップやバーガーショップがたくさん。言葉が分からなくても、それほど買い物には困らない。

 ホテルや大き目のレストラン以外はほとんど英語が通じないし、店名もロシア語なのかカザフ語なのか、ちんぷんかんぷん。

 でも、人に地図を指さして道を尋ねれば、なんとか頑張って答えてくれようとする。ちょっと愛想笑いをしてしまうところも日本人と感覚が似ていて、親近感が湧く。


女性がビールを頼むと、ストローが付いてくる。「女性は上品にビールを飲みましょう」ということらしい。

 旅先では、有名な観光スポットを巡らなくても、ぶらぶらと歩くだけで、心が満たされることがある。居心地のいいアルマトイは、まさにそんな場所。1日歩いて、すっかりこの街が気に入ってしまった。

馬肉と羊肉のおいしさに取りつかれる


観光スポットでも串焼きスタンドがいい香りを漂わせていた。

 なにより、アルマトイの居心地を最大限にしてくれたのは、食材のおいしさだ。

 カザフスタンの定番食材といえば、馬肉と羊肉、乳製品。とくに馬肉がおいしくて、滞在中、毎日食べても飽きることがなかった。臭みもないし、お腹いっぱい食べた翌日も、胃がもたれない。

 日本では馬刺しぐらいでしか食べることがないけれど、こちらでは、ピザの具にも、ステーキにも、串焼きにも、使われている。


伝統料理の「ベシュバルマク」。モチモチの麺に旨味のある馬肉ソーセージを絡めて食べるのがおいしい。

 気に入ったのは「ベシュバルマク」。茹でたラビオリ風の麺の上に蒸した馬肉や馬肉ソーセージ、玉ねぎなどをのせた、カザフスタンと隣国キルギスの伝統料理だ。

 現地の言葉で「5本の指」を意味するこの料理は、その名のごとく、もとは遊牧民が手でつかんで豪快に食べていたものなのだそう。茹でた馬肉の出汁は旨味たっぷりで、日本人の口にはなじみやすい。


ラムのシャシリク(串焼き)。日本で食べる羊肉より臭みが少なく感じた。

 羊肉料理は、中央アジア全般で食べられている串焼きの「シャシリク」が定番。窯でじっくり焼いた大ぶりのラムチョップは、羊好きにはたまらないご馳走だ。



左:主食はパンやお米。「バウルサク」はふんわりとした揚げパン。
右:「ピラウ」はしっとりとした炊き込みご飯。

 店で必ずといっていいほど勧められるのが、揚げパンの「バウルサク」。外側はパリッとしているけど中はふわふわしていて、甘くないドーナツのような感じ。テーブルに置いておくと、つい手が伸びいつの間にか平らげてしまう。


お肉が気に入り、ついにスーパーのミートコーナーで買い物。イスラム教徒が多いカザフスタンでは、豚肉はほとんど食べない。

 アルマトイに来てその日に食べた馬肉と羊肉は、想像以上のおいしさだった。すっかりその味に胃袋をつかまれてしまった私たちは、「バーべキューにして、思い切り食べよう!」と思い立ち、スーパーマーケットへ。

 ミートコーナーには新鮮なお肉が並んでいるし、ワインの棚にはカザフスタン産はもちろん、近隣国ジョージア産も豊富にある。おつまみになりそうなチーズの種類もたくさん。

 宿泊していたホテルがキッチン付きのアパートメントタイプだったことを幸いに、私たちは2晩にわたり、中央アジアのワインとともに、大いにこの国の食材を堪能した。

近未来都市のイメージをくつがえす
旅情あふれるアスタナ


ビルの向こうに見えるタワーは、アスタナのシンボル。バイテレク。

 アルマトイの次の目的地はアスタナ。カザフスタンは中央アジア最大、世界第9位の面積を誇るだけに、都市間も距離がある。南東部のアルマトイから北部にあるアスタナまで飛行機で2時間弱かかるけれど、便数が多いので、旅のプランは立てやすい。


機内で出会ったローカルが勧めてくれた中央アジア最大のモスク「ハズレット・スルタン・モスク」。幾何学模様の装飾が施された天井が美しくて、頭上ばかり見上げてしまう。

 アスタナに向かう機内では、出会いもあった。

 アスタナの情報が載った在カザフスタン日本国大使館の資料をパラパラと読んでいると、隣席のお兄さんが写真を指差しながら、「この建物はすごく大きい」「この建物は外から見たほうがキレイ」と、カザフ語もロシア語もちんぷんかんぷんな私にジェスチャーで解説してくれたのだ。

 それなりに弾んだ会話(?)の最後には、スマホの英訳アプリを使って、「僕のオススメは必ずではない。自由に楽しんでください」と、はにかみながら伝えてくれた。


巨大ショッピングモールの「ハン・シャティール」。館内にはジェットコースターも。

 アスタナは、1997年にアルマトイからアクモラに遷都された後に、改名された新首都。都市建設のデザインコンペで選ばれた黒川紀章の都市計画案に基づいて開発が進められた……という話は有名で、私はすっかり、この街にSFチックな印象を持っていた。カザフステップと呼ばれる草原地帯に点々と斬新な建造物が並ぶ、そんなイメージだ。


新市街には、新しい建物やマンションが。左に見えるのは「ハズレット・スルタン・モスク」。

 はたして、初めて目にしたアスタナは、そんな想像とはちょっと違っていた。

 全面が黄色に輝く円錐形のツインタワーや、ガラス張りのピラミッド風建物、白とブルーで統一された巨大な国立博物館など、新しく巨大な建物はインパクトがあるけれど、SFチックには感じない。

 夜にライトアップされた風景はともかく、日中は人影も少なく、むしろ過去の遺産を見ているかのようにも思えた。


旧ソ連の名残がどこか哀愁を感じさせる旧市街。

 むしろ惹かれたのは、旧市街で見る素顔のアスタナだ。旧ソ連時代の名残らしき無機質な建物もあるけれど、逆にそれらが哀愁を帯びていて、旅情をかきたてる。

 有名な建物以外に、企業や政府の建物もことごとく重厚感があって、ビジネス街でさえ、ぶらぶらと歩くのが楽しかった。


夏の間だけオープンしている、遊牧民のテントをイメージした屋外レストラン。

 もちろん、アスタナでも中央アジア料理を満喫。遊牧民のテントをイメージした屋外レストランに引き寄せられ入ってみると、雰囲気だけでなく料理もおいしい。


アスタナで味わったカザフスタン料理。このほか、ワインもボトルで入れて5,000円ほど。

 夏は夜9時近くになっても空が明るく、民族衣装をまとったスタッフの控えめなサービスも心地いい。レストランではつい長居をしてしまった。


遊牧民のテント風の露店が並ぶ通り。夜遅くまでローカルで賑わっていた。

 でも、この旅で何より印象に残ったのは、ローカルの人々だった。

 人懐こいけれど距離は保つ。ちょっとだけ世話を焼いてくれるけど押し付けるでもない。カザフスタンで出会った人はだいたいこんな感じで、それもまた、私たち日本人と感覚が似ているな、と思えてならないのだ。


中央アジア料理店では、スタッフに勧められて、馬乳飲料「クムス」も味見。

 中央アジア、なかなか面白いかもしれない。伝統楽器のドンブラや「ラハット」のチョコレートをお土産に帰路についた日、友人とは、「次はウズベキスタンを旅しよう!」と約束して別れた。


旧市街にある旧大統領官邸。現在はこの国の文化や大統領の功績を紹介する博物館となっている。カザフスタンは1990年からずっと大統領が変わらない。


芹澤和美 (せりざわ かずみ)

アジアやオセアニア、中米を中心に、ネイティブの暮らしやカルチャー、ホテルなどを取材。ここ数年は、マカオからのレポートをラジオやテレビなどで発信中。漫画家の花津ハナヨ氏によるトラベルコミック『噂のマカオで女磨き!』(文藝春秋)では、花津氏とマカオを歩き、女性視点のマカオをコーディネイト。著書に『マカオ ノスタルジック紀行』(双葉社)。
オフィシャルサイト http://www.journalhouse.co.jp/

文・撮影=芹澤和美

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