2018/08/17 20:00

「阿佐ヶ谷スパイダース」の看板役者 中山祐一朗の演劇人らしからぬ素顔

「阿佐ヶ谷スパイダース」が劇団となって初めての舞台「MAKOTO」に出演中の中山祐一朗さん。阿佐ヶ谷スパイダースが演劇プロデュース・ユニットだった時代からの中心人物であり、それ以外の舞台や映像作品にも数多く出演している、彼の人となりに迫りました。



阿佐ヶ谷スパイダースの看板役者・中山祐一朗さん。演劇の街・下北沢を散策しながら、たくさんの質問にお答えいただきました。

――俳優になろうと思ったのはいつ頃、どんなきっかけでした?

 中学高校時代の先生に、上智大学でシェークスピア劇を英語の原文のままやるサークルにいた方がいて。その先生がずっと僕の担任だったんです。吉田鋼太郎の先輩なんですけど……。で、文化祭とかになるとその先生の元で、すごく頭のいい同級生がシェークスピアの脚本を短く書き直して芝居をやっていたんです。

 男子校だったし僕は背が低かったから、最初は女の子の役「ヴェニスの商人」のポーシャ役をやったんです。その劇中で男性になったり女性になったりするのでドレスの下にズボンを穿いていて、それがずり落ちてくるから直しながらやったら笑いをめっちゃとったんですよ(笑)。それでクセになったんですね。


「劇」小劇場の隣「喫茶ギャラリーGeki」でコーヒーを買う中山さん。下北沢ならではの光景。

――何年生のときですか?

 中学1年の時です。次の年は「ハムレット」でオフィーリアをやりました。あと高校生になってから、つかこうへいさんの映画『熱海殺人事件』を観て感動して、自分で舞台の脚本に書き直してやったりして……。でも、つかこうへいさんが舞台の人だって知らなくて(笑)。

 そのときは演出もやって、ただ自分が好きって理由で最後にイルカの「なごり雪」をかけたり。それで、「これは早稲田に行って演劇やるしかない」と思ったんです、早稲田の付属校だったし。でも結局2浪して明治に行ったんですけど(笑)。


お酒が大好きな中山さん。ご自身の身体の中で一番自信があるところは「肝臓」だそうです!

――仲のいい役者さん、気に入ってる後輩、可愛がられている先輩は誰ですか?

 山内圭哉とか……長塚圭史はもう親戚みたいな感じです。八嶋智人とも家族ぐるみで付き合っていて、最近会ってないけどイケテツ(池田鉄洋)も僕は大好きです。イケテツと山内くんと出会った時に、「30歳超えても友達できるんだ!」ってすごく嬉しかったです。

 ヨーロッパ企画のみんなは、いい後輩だなぁって思ってるし、昔は富岡晃一郎はいい後輩だと思ってたけど、今はもうしっかり自立できてるし。

 先輩は、みんなにとっての先輩ですけど古田新太はやっぱりすごいなと。あんまりお酒飲みすぎないでほしいですけど、確実にいつも飲みすぎてる(笑)。


下北沢のお気に入りのお店をご紹介いただきました。「お好み焼 だいこんまん」前にて。

――役者仲間とのエピソードは何かありますか?

 結婚する時に圭史と山内くんにグルームズマン(男版ブライズメイド)をしてもらいました。3人で仕立て屋に行って、揃いのスーツを僕がおごって、その代わり結婚式で一緒に並んでもらうよって。

 最初、外国人のかっこいいモデルがタキシードを着ている写真を僕が仕立て屋さんに見せたら「これはちょっと……日本人と体型が違いますから……」って言われたのに、そのうち山内くんが来て、さらに圭史が来たら、圭史の頭身を見た店員さんの態度がガラッと変わって、僕が見せた写真と同じような玉虫色のすごく変わった生地を奥からひっぱり出してきて「これならできるんじゃないですか」って(笑)。

 八嶋智人には披露宴の司会をしてもらいました。きっとアドリブでも大丈夫だろうに、事前にすごく打ち合わせして、それで当日は臨機応変に面白くしてくれました。


役者仲間とのエピソードを本当に楽しそうに話してくださる中山さん。取材陣も大爆笑でした。

撮影に参加された息子さんと談笑中の中山さん。優しいお父さんの表情に。

――中山さんは正直あまり結婚に興味があったようには見えないんですが、結婚は何で決めたんですか?

 僕はぜんぜん結婚する気がなかったんですよ。で、そういう僕の自由な感じに、お付き合いする方はだいたい飲まれちゃうんです。でも、奥さんはそれに飲まれないで「結婚はマストだから」「子供を作るのが人生だから」って。その真っ当さに乗っかったおかげで今の幸せがあるっていう。

 結婚式も僕の中では絶対ないと思ってましたから、奥さんにすごく説得されました。やるからには自分の中でも落とし所を見つけなきゃならないから「そうだ! 自分の好きな人ばっかり呼んだ大きな飲み会だと思えばできるわ」って気づいて。でも、最初は意味がわからなかったです(笑)。今はやって良かったと思ってますけど。


演劇界のキング オブ メガネ男子の呼び声も高い(!?)中山さん。こだわりのメガネをたくさん持っていらっしゃるそうです。

――意外にも中山さんはハワイ好きだそうですね。

 そうなんですよ。最初は富岡晃一郎くんに誘われたんです。すごく安くて、初日から免税店に連れて行かれてパイナップルを売りつけられるようなベタなツアーでした。

 最初はぜんぜん楽しくなかったんです(笑)。でもせっかく来たんだからと思って、最終日にそれまでを取り戻すべく、ものすっごく忙しく予定を詰め込んでみたら、初めて汗をかいたんです。そして、それまでは一切汗をかいてないなかったことに気づいて。

 その瞬間、「そうか、ここはこのカラッとした気候が素晴らしいんだ! ハワイはただ来て本を読むだけでも価値があるんじゃないか!」って思ったんです。それ以来、ハワイが大のお気に入りの場所になりました。

 結婚式でグルームズマンをお願いしたときも「こんなことをする演劇人はいないだろう」ってとこがポイントだったんですけど、ハワイもそうです。「演劇人なのに何チャラいこと言ってんの」って言われるのがいい(笑)。


「ここ、ハワイっぽくていいな~」と中山さん。

――ハワイでのオススメな過ごし方を教えてください。

 最近はハッピーアワーが流行ってるので、予約をしないで「ウルフギャング・ステーキハウス」に行って、すごく安いステーキをぱっと食べて帰ってくるとか。

 後はベトナム料理店「マイラン・ベトナミーズ・レストラン」のカニカレーを持ち帰りにして、ホテルの部屋でフランスパンと食べる。そして、次の日にそうめんか何かの乾麺でつけ麺にするんです、カレーを和風だしで割って。そうすると恐ろしくおいしい。パクチーも異常に安いし。

「バクナム」のカニカレーも殻が入ってなくていいんですけど、つけ麺にするには殻入りの「マイラン」がオススメです。


息子さんを抱っこしながら。舞台上の中山さんとは全く違う一面が垣間見えます。

――「阿佐ヶ谷スパイダース」が劇団になって変わったことはありますか?

 若者化されるっていうか(笑)。SNSも苦手な3人でずっとやっていたので。パンフレット作るにしても圭史は文章が多いものじゃないとダメなんじゃないかと思っていて、僕は写真が多いほうが好きなタイプなんです。で、人数が増えたら僕派の人も多くなりました。

 完全な多数決である必要はないと思ってるんです。圭史がどうしてもやりたいことはやればいいし。でも多数決だと「え? そっちだったの? 普通の人は」ってことが表面化されてちょっとポップになることもあったりして面白いですね。

――稽古着のこだわりはありますか?

 ありますよ。ゴリゴリのスポーツジャージはまず着ないです。だいたいスウェットとTシャツとその上にカーディガンを羽織ってやるんですけど、最近は夏なんで、汚れてもいいカッコして行って、そのまま稽古して、そのまま帰ってきます。私服と稽古着の中間みたいな。

 稽古のために真新しいジャージを買う方も多いみたいなんですけど、僕は着古したものが好きです。


いつもオシャレな中山さん。新作公演のグッズ(Tシャツ・トートバッグ)のデザインも手がけているそうです。

――差し入れの鉄板を教えてください。

 僕は「オザワ洋菓子店」のイチゴシャンデ。これをもらったときに感動して、それ以来自分でもイチゴシャンデを差し入れるようにしてたんですけど、うっかり主役クラスの方よりいいものを差し入れして「中山さんのシャンデすっごく良かったですよ」ってなると「あ、まずいな……」と思ったり(笑)。でも、誰に差し入れてもすっごくかわいいって言われます。

 差し入れって、どんな現場でも必ず同じものがあるんですよ。「天のや」の玉子サンドなんかはそうです。でも、イチゴシャンデはちょっとスペシャルで、毎回はないんですよね。

 それ以外だと松陰神社の「肉の染谷」の唐揚げとか、「亀戸升本」のお弁当とかも喜ばれますね。大阪では地元の方に調べてもらって、蕎麦寿司を差し入れたこともあります。


舞台の話になった途端、にこやかな表情から真剣な面持ちにガラッと変わった中山さん。演劇に対する真摯な姿勢を感じます。

――劇団になって初めての舞台「MAKOTO」について教えてください。どんなお芝居ですか?

 東京にはたくさんの、孤独を抱えた人が生きている。東京オリンピックが決まって、新国立競技場ができるために団地を立ち退かされた老人たちの孤独はちゃんとみんな見られているんだろうか? そういうところに目が向いている話です。

 西池袋とか、明治神宮前とか、東京のいろんな場所が出てくるんですけど、そこは長塚圭史が実際に住んだことがある土地で、子供の頃からの思い出があるんです。東京の街の変遷を見てきた長塚圭史がいろんな経験を積み上げて来たことが、時節にヒットしていると思います。


新作「MAKOTO」について語る中山さん。難しい質問にもひとつひとつ丁寧にわかりやすく話してくださいました。

――「MAKOTO」での中山さんの役どころは?

 説明が難しいんですよね……。僕と坂本慶介くんの役が同じ警備員です。主役の(中村)まことさんが思い悩んでいろんな場所に行くんですけど、坂本くんは心配してずっとついて行くんです。

 僕は要所要所で突然現れて、まことさんの行く末を修正するのか何なのか……。ある時は優しくしたり、ある時は乱暴だったり。そんな風にひょいっと現れて、無茶苦茶やって去っていくみたいなことを繰り返していくうちに、僕が一体何だったのか最後にはわかるんじゃないかな。

――「MAKOTO」の見どころを教えてください。

 すごく簡単なお芝居じゃないことは確かなんですけど、でも観るからには自分自身もある程度考えたりするのが楽しいんじゃないかと思える人が観れば、そんなに難しいばっかりの芝居じゃないし、ちょうどよく帰れるんじゃないかと、僕は思ってるんですけど(笑)。


 演劇人らしくないことを好み、しかし、仲間の演劇人をとても大切にしている中山祐一朗さん。劇団化した「阿佐ヶ谷スパイダース」の変化も楽しみですが、彼が劇団で、またそれ以外で、どんな活躍をしていくのかもとても楽しみです。


阿佐ヶ谷スパイダース「MAKOTO」

主宰・長塚圭史が2016年の「はたらくおとこ」上演中に草案し、2年間温めた“失意の男”のドラマ。新生阿佐ヶ谷スパイダースの意欲作・第1弾!

<あらすじ>
医療事故で妻を失った自称漫画家。失意の漫画家は妻との思い出を燃やしてゆく。すると思い出は消えるが、代わりに強大な力が漲り怪事件を起こしてゆく。漫画家の言う通り、その悲しみは日本のエネルギーに代わるのか。

●東京公演(全14ステージ)
会期 公演中~2018年8月20日(月)
会場 吉祥寺シアター
●大阪公演(全3ステージ)
会期 2018年8月25日(土)~8月26日(月)
会場 近鉄アート館
●神奈川公演(全4ステージ)
会期 2018年9月7日(金)~9月9日(日)
会場 KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ
※他、新潟公演、松本公演
企画製作・主催 阿佐ヶ谷スパイダース
http://asagayaspiders.com/


中山祐一朗(なかやま ゆういちろう)

1970年9月9日生まれ・岐阜県出身。98年、演劇プロデュース・ユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」第3回公演に参加。以降、メンバーとして全公演に関わる。その他、数多くの舞台に出演。映像では「深夜食堂」シリーズや「サラリーマンNEO」「黒い十人の女」「グーグーだって猫である 2」など話題作で印象的な役割を担う。テレビ東京系 特撮テレビドラマ「魔法×戦士 マジョマジョピュアーズ」では愛乃モモカのパパ役を好演中。

【取材協力】
お好み焼 だいこんまん

所在地 東京都世田谷区北沢2丁目14-3 下北沢KDビル1F
電話番号 03-3795-0271
営業時間 日〜水曜 11:00~翌1:00(0:00 L.O.)、木〜土曜・祝前日 11:00~翌5:00(4:00 L.O.)
定休日 無休

構成=FUNFUN
文=濱野奈美子
撮影=佐藤 亘

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