2018/09/06 12:00

チームラボがパリで繰り広げた “境界のない世界”の全貌とは?

入場者は21.5万人を突破


パリ日本文化会館に掲げられる「ジャポニスム2018」と、チームラボ展のポスター。

 センシングやプロジェクションマッピングなどのデジタル技術を用いて、アート空間を創造するアートコレクティブ・チームラボによる大規模な展覧会「teamLab : Au-delà des limites」(境界のない世界)が、パリのラ・ヴィレット グランドホールにて、「ジャポニスム2018:響きあう魂」(事務局:国際交流基金)の公式企画として好評開催中。

 2018年5月15日(火)の開幕から、入場者はすでに21.5万人を突破し、地元フランスだけでなく、ドイツやスペインのメディアでも取り上げられるほどの人気ぶりだ。


平日にもかかわらず、多くの人で賑わう。座ったり、立ったり、踊ったりと皆が自由に作品と触れ合う。

触れることで、作品は変化し
人は作品の一部となる

 約2000平方メートルに及ぶ展示スペースで展開される“境界のない世界”とはどのようなものだろうか。

「僕らがここで作っているのは、アートが物理的な制約を超えて、時には部屋から出て移動しながら、作品同士が互いにコミュニケーションし、影響を受け合い変化し、時には混ざり合っていく、そんな境界のないアート群による一つの世界」と、チームラボ代表の猪子寿之氏は語る。

 作品と作品とを仕切るものは何も無く、作品が固定の場所にとどまらず、移動して他の作品と触れ、そこで新たな表現が生まれる展覧会。まずは、作品を見てみよう。


壁と床一面が花に染まり、圧倒的スケールで作品は展開する。

 入り口は「アトリエ」と「エキシビジョン」の2つに分かれており、好きなほうから入ることができる。共に、奥でつながっているが、作品への最初のアプローチは異なる。

「アトリエ」では、来場者が紙に蝶やカエル、ワニなどの生き物を描き、それをスキャンすると、データ化された絵が動き出し、この生態系を構成する一つの命となる。

 カエルは蝶を捕食し、トカゲはカエルを捕食する。しかし、捕食する側が増えると、食べる対象が無くなり滅びてしまう。花は、人々がじっとしていると咲き、人々が踏んで歩き回ると散っていく。蝶は、花がある場所で増える。

 現実の自然界と同様、ここでは、生きものたちが、他の生きものを食べたり、食べられたりしながら、共に同じ1つの生態系をつくっている。

 この展覧会に順路は無く、「エキシビジョン」の入り口から入った観客は、思い思いに進み、好きなエリアで作品と触れ合うことができる。


《Au-delà des limitesに降り注ぐ憑依する滝》。高さ11メートルの壁に巨大な滝が出現する。

 メインの空間では、高さ11メートル、横幅約27メートルの壁を伝って、滝の水が落ち、床へと流れる。観客が水流に触れたり、その上に立ったりすると、水流はその部分を避け、流れが変化する。降り注ぐ水の流れに花が当たると花は散り、風景が一変する。


壁を伝い、床に降り注ぐ滝を観客が触ることで、水の動きが変わる。

圧倒的な量感と映像の美しさに感嘆

《花と人、コントロールできないけれども、共に生きる -A Whole Year per Hour》では、時間の経過とともに、空間全体に花が咲き渡り、その圧倒的な量感と映像の美しさに圧倒される。

 空間全体に咲く花は、人がじっとしているとたくさん咲き、人が歩くと散ってゆく。


《花と人、コントロールできないけれども、共に生きる -A Whole Year per Hour》。壁と床全体が花に覆われ、右には≪花の精霊≫の花々が咲き乱れる。

 光で描かれた魚群が空間を自由に泳ぎまわり、その軌跡が光跡となって、まるで海の中にいるような感覚になるのが《The Way of the Sea, そして境界を越えて飛ぶ -Colors of Life》。

 魚は観客を把握し、ぶつからないように避けてゆく。魚群に触れると、魚たちは人々の持つ色に染まっていく。


《The Way of the Sea, そして境界を越えて飛ぶ -Colors of Life》。魚群に触れると、魚たちは複雑で美しい彩色となる。

 四方と下方全てが映像で囲われた空間を、光で描かれた白いカラスが猛スピードで行き交う《追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして超越する空間》は、プロジェクションによって観客の方向感覚が失われ、壁と床の境界がわからなくなる。


方向感覚が失われ、浮遊感を体験できる《追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして超越する空間》。

 そして、白いカラスはこの場を飛び去ると、さまざまな作品の中に入り縦横無尽に飛び回り、他の作品に影響を与える。カラス同士がぶつかると、カラスは散って花になり、カラスが花の上を通ると花は散る。


白いカラスが別作品に自由に移動し、光跡を残す。

観客も作品を構成する一員

 複数の透明パネルが並ぶ、奥行きのある空間に、人物像が表れ、楽器を奏でたり、踊ったりする《秩序がなくともピースは成り立つ》。

 各自の動きは自律しているが、だんだんとお互いに影響しあい、演じる音のリズムも合っていく。また観客の動きに反応して歩みを止めたり、歩き出して他の作品に移動したりする。


《秩序がなくともピースは成り立つ》。蓮が咲き、蓮池のようになった後、人物像が透明パネル上に徐々に姿を現し、動き始める。

 パリでの展覧会が初公開となった《Impermanent Life, 人が時空を生み、それぞれの時空が交差する場所には新たな時空が生まれる》は、観客がこの空間に触れると、その接触部分から、一定のリズムと特定の間隔で放射状に円が生まれる。

 また、観客がじっとしていると、いろいろな場所からドットが生まれ、ドットが重なる部分に、ある種のモアレのようなものが発生し、新しい模様が増殖し、みるみるうちに、空間の様相が変化する。


《Impermanent Life, 人が時空を生み、それぞれの時空が交差する場所には新たな時空が生まれる》。ドットからモアレが生じ、増殖する。

 チームラボの作品は、コンピュータプログラムによってリアルタイムで描かれ続けており、あらかじめ記録された映像を再生しているわけではない。

 そのため、観客の人数や密度、各人の振る舞いなどさまざまな要因が複合的に噛み合わされ、作品とインタラクティブに反応し、一期一会のインスタレーションが目前に展開される。

 つまり、観客も作品を構成する一員であり、観客の行動によって、無限のアートシーンが生み出されるのだ。

 しかし、観客によっては、ただ見ているだけで、作品に対して何らアクションを起こさない場合もあるだろう。この場合、制作者としては、積極的に参加してほしいと願うのだろうか。

「観客にどのように動いてもらうかは、あまり重要視していない。自分や他者のちょっとした振る舞いで、この世はなんとなく変わっているということが、無意識にでも伝わればいいな、と思っている」と猪子氏は語る。

 観客をコントロールして、作品に変化を起こさせる意図は、ここにはないのだ。そして、この展覧会は、一人で来場しても、複数でも構わない。

「僕たちは、ある作品に対して、家族や恋人、他人など関係なく、複数人で観るということを前提につくっているが、それは、他者がいてよかったと思える空間にしたいと思っているから」

 チームラボがこの展覧会で表現したのは、他者の存在を肯定的に受け止めることで成り立つ、自己と他者の境界のない世界でもあるのだろう。


会場となるラ・ヴィレットにて。チームラボ代表・猪子寿之氏。

《追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして超越する空間》や《Impermanent Life, 人が時空を生み、それぞれの時空が交差する場所には新たな時空が生まれる》など、チームラボの作品名称は特徴的だ。長く、解説的でもある。

「作品が出来て、最後の最後に、僕が付ける。タイトルで少しでも作品の情報を足すことができればいいなと思っている」と猪子氏。

 例えば、滝が流れて花が散る《花と人、コントロールできないけれども、共に生きる -A Whole Year per Hour》という作品では、“花”と“人”という言葉を入れることで、「この空間にいる人々を含めて、作品なんだよ」ということを伝えたかったという。

「もちろん、説明が無くても、深く知らなくても、いろいろな人に楽しんでもらいたい」と、展覧会への想いを最後に語った。

 作品をとりまく全ての境界をなくし、ボーダレスな世界をアートで表現する「teamLab : Au-delà des limites」展は、2018年9月9日(日)までラ・ヴィレット グランドホールにて開催。


「teamLab : Au-delà des limites」のエントランス。

「teamLab : Au-delà des limites」

会期 2018年5月15日(火)~2018年9月9日(日)
会場 ラ・ヴィレット グランドホール
所在地 211 Avenue Jean Jaurès, 75019 Paris, France
開場時間 火~木・日曜 10:00〜19:00、金・土曜 ~22:00
休館日 月曜
料金 14.90ユーロ
http://lavillette.teamlab.art/

「ジャポニスム2018:響きあう魂」

https://japonismes.org/

景山由美子

伊藤若冲を始めとする江戸絵画コレクター。株式会社景和 代表取締役。出版社での編集職、IT企業のコンテンツプロデューサーを経て起業。古美術を扱う傍ら、美術関係の執筆・編集のほか、若冲をテーマにした茶会や鑑賞会を主催。国内外の展覧会への出品や講演を通して、アートの世界観や作者の想いを伝えるべく、日々奔走中。

文・撮影=景山由美子

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