2018/10/05 12:00

プ女子&プロレスブームを支える “100年に一人の逸材”棚橋弘至

 今年8月に行われた「G1 CLIMAX 28」では、3年ぶり3度目のチャンピオンに輝いた、新日本プロレスのプロレスラー、棚橋弘至。20年に及ぶプロレス人生を振り返った前回に続く今回は、40代になって大きな挑戦となった初主演映画『パパはわるものチャンピオン』について語る。

俳優業にも“受け”があること


――俳優のお仕事はこれまでも何度かされていますが、今回『パパはわるものチャンピオン』で、映画初主演の話が来たときの率直な感想を教えてください。

 嬉しかったと同時に、とても驚きました。じつは僕の2人の子供が通っていた小学校の行事で、この映画の原作である2冊の絵本を読み聞かせていたんです。でも、僕がモデルで書かれた若手レスラーのドラゴンジョージじゃなくて、ゴキブリのマスクを被ったベテランレスラーの孝志役で依頼が来たことに、時の流れを感じましたね。もちろん、子供たちからは「なぜ、パパはドラゴンジョージじゃないの?」と言われました(笑)。

――今回、本格的にお芝居をされて、プロレスとの共通点はありましたか?

 プロレスは相手の攻撃を、胸を張って受けるときもありますし、相手の攻撃で闘志を引き出されることもあるので、相手選手に試合を引っ張られることも多いんです。それを踏まえて、監督さんと演技レッスンをしているときに、「セリフは覚えても演技は固めないでください」と言われたんです。相手のセリフを受けた感情で、自分のセリフを言ってほしいということだったんですが、役者の仕事にも“受け”があることを知りました。監督さんに言わせると、奥さん役の木村佳乃さんと初めてリハーサルをさせてもらったときに、僕のお芝居もワンランクアップしたようです(笑)。

試合前に妻が言う
「危ないことしないでね」の意味


――劇中では家族との関係も描かれていますが、実生活でのご家族とのエピソードがあれば教えてください。

 僕がいつも試合に行くとき、奥さんが「危ないことしないでね」と言うんですよ。この仕事をやっている手前、最初は「何を言っているんだ?」と思っていたんですが、咀嚼してみると、「ケガしないで、無事に帰ってきてね」ということなんですよね。危ない試合をしても、自分の力で家に戻ってくることは、僕としてはプロの美学だと思っていますが、「危ないことしないでね」という言葉を通じて、僕の仕事を理解してくれていたことに気づいたときは嬉しかったですね。

――本作をご覧になった感想を教えてください。

 僕の「悪者がいないと、エースが活躍できないだろ?」というセリフには胸打たれました。あと、プロレス女子を代表する役を仲里依紗さんが演じられて、ファンの気持ちを代弁してくれるシーンもあるんです。何かをきっかけにプロレス好きになった女性が、もう一段階プロレスに詳しくなって、さらに好きになれる映画になりました。いろんな方に観てほしかったので、日常の家族とのシーンとプロレスの試合シーンのバランスが難しいと思っていましたが、日常のシーンを満たすために試合シーンは必要だし、試合シーンを説明するために日常シーンは必要というように、双方で補完し合う、ベストバランスの映画になりました。

3年ぶりの優勝で感じた現実


――18年8月に開催された「G1 CLIMAX 28」では、3年ぶり3度目となる優勝をされました。

 棚橋の優勝をあまり予想する人がいなかったんですよ、僕としては意外だったんですが(笑)。前回の優勝はたった3年前なのに、そういうところに若手選手の台頭と時間の流れを感じました。裏を返せば、この3年間で、新日本プロレスがスゴい勢いで変化してきたとも取れますから。一試合、一試合テーマを決めて、熱量を込めて試合ができたことも良かったです。ただ、優勝後に、調子に乗ってドカ食いしてしまい、一週間で8キロも太ってしまいました(笑)。

――会場の棚橋コールについては、どのように受け止められましたか?

 どういう反応が来るのかと思っていたんですが、「おかえり」という意味合いの棚橋コールも大きくて、嬉しかったですね。それと同時に、自分がどんなに「まだまだ頑張れます!」と言ったところで、それをファンが求めないと、トップにいる必要がないという、厳しい現実も肌で感じました。

目指すは“日本のザ・ロック”!


――主演映画のクランクアップ時には、「40歳になっても、こんなに一生懸命になれるものがあって嬉しかった」と、泣きながら言われたそうですが、今後も俳優活動をされていく予定ですか?

 ひとつの作品をみんなで作り上げていく熱量を感じましたし、幸い年齢に関係なく必死になれるものが見つかり、そのチャンスを得た気がしました。一生懸命すぎて、まだ演技をすることの面白さ、楽しさには到達できていませんが……。ただ、チャンスがあれば、これからもやっていきたいと思います。綾野剛さん、伊藤英明さんと並んで、岐阜県が生んだ三大俳優の座を密かに狙っています(笑)。いや、“日本のザ・ロック(ドウェイン・ジョンソン)”になれるよう頑張ります!

――仮面ライダー好きで知られる棚橋さんだけに、『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー』では怪人・ロボルバグスターを演じられましたが、俳優としての最終目標は、やはりライダー役ですか?

 ライダーのファンは世界観を大切にされるので、いちど怪人役をやってしまうと、さすがにライダー役はもう来ないと思うんですよ。でも、「牙狼〈GARO〉-阿修羅-」で、牙狼になれたのは嬉しかったですね。僕、ヒーロー願望が強いというか、喜んでほしかったり、楽しんでほしかったり、誰かの役に立ちたいんです。


棚橋弘至(たなはし ひろし)

1976年11月13日生まれ。岐阜県出身。立命館大学法学部卒業後、99年に「新日本プロレスに」入門。同年、真壁伸也(現・刀義)戦でデビューし、日本人離れした肉体で、団体最高峰のベルト・IWGPヘビー級王座に輝く。第56代IWGPヘビー級王者時代には、当時の歴代最多防衛記録を達成するほか、今年のG1 CLIMAX 28では3年ぶり3度目の優勝を果たした。


『パパはわるものチャンピオン』

いつも優しい父・孝志(棚橋弘至)が嫌われ者の悪役レスラー、ゴキブリマスクであることを知って、最初は恥ずかしく思っていた息子の祥太(寺田心)。だが、懸命に戦うゴキブリマスクの姿を見るうちに、次第に気持ちが変わりはじめていく。
http://papawaru.jp/
2018年9月21日より、全国公開
(C)2018「パパはわるものチャンピオン」製作委員会

くれい響 (くれい ひびき)

1971年東京都出身。映画評論家。幼少時代から映画館に通い、大学在学中にクイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作を経て、「映画秘宝」(洋泉社)編集部員からフリーに。映画誌・情報誌のほか、劇場プログラムなどにも寄稿。

文=くれい響
撮影=白澤 正
スタイリスト=小林洋治郎(Yolken)
ヘアメイク=山田みずき

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