2018/09/15 12:00

スペシャル対談 横山剣×光石研 北九州はガレージパンクの匂いがする

 2018年は、横山剣さん率いるクレイジーケンバンド(以下CKB)がデビュー20周年を迎えたアニバーサリーイヤー。3年ぶりのオリジナルアルバム『GOING TO A GO-GO』のリリース、そして横浜アリーナでのライブなど、アグレッシブな活動が続きます。

 CREA WEBでは、デビュー20周年を記念して、スペシャル対談を企画しました。剣さんのお相手としてご登場いただいたのは、熱狂的なCKBのファンとして知られる俳優の光石研さん。2人のケンさんは今回が初対面。全5回にわたり、濃密すぎる対話の一部始終をお届けします!


▼talk02

ふたりともベスパに乗っていた


光石 1980年に上京した頃の僕の髪形は、軽くリーゼントでした。ファッションはロックンローラーではなくちょっとカレッジ寄りで。それで、ベスパに乗っていました。

横山 僕もクールスのスタッフの頃はベスパの50ccに乗っていました。

光石 僕もそうです。白の50。

横山 僕は白に1、2年乗って、その後黒に塗ったのをクールスのフランクさん(ギターの飯田和男)に売って、ムラさん(ヴォーカルの村山一海)のパッソーラを買いました。

光石 ヤマハのパッソーラも懐かしい。あの頃、50はノーヘルですものね。

横山 そうそう。ノーヘルでしたね。のどかな時代(笑)。当時の原宿は、ロックンローラーに竹の子族、サーファーもいればニューウェーブもいるという時代でしたね。

光石 そうでしたね。

横山 現在、CKBの所属事務所を僕と共同経営している萩野(知明)君もクールスのスタッフを務めていましたが、当時、普段の彼はサーファーっぽい格好をしていたんですよ。

光石 ええっ! ほんとですか?

横山 で、僕も萩野君に感化されて、ムスクオイルをつけてみたり、部屋をトロピカルにしたりして。

光石 CKBの「本牧仕様のサーファーガール」の世界みたいじゃないですか?

横山 「ファーラー」のパンツで靴は「ワラビー」、髪はリーゼントってメチャクチャ(笑)。

光石 意外ですね。

横山 クールスファンに怒られますからね(笑)。音楽もボズ・スキャッグスやマイケル・フランクス、エアプレイなんか聴いたり。

光石 いいですね。僕も好きです。

横山 日本ではAOR、アメリカではMOR=ミドル・オブ・ザ・ロードというんですかね。

光石 でも、AORはメロウグルーヴにも通じますよね。

横山 そうそうそう! CKBに繋がっているんです。

クールスのメンバーには内緒で
シャネルズを聴いていた(横山)


横山 原宿は「ピテカントロプス・エレクトス」以外にも明治通りに「モンクベリーズ」というクラブがあって、スカフレイムス(日本のスカバンドの先駆的存在)が出て来たり、いろんな音楽や文化が渾然一体となっていましたね。

光石 古着屋もいっぱいありましたよね。

横山 僕が最初に原宿に来たのも、アメリカから買い付けて余った古着を古着屋に売ってお金にしようと思ったからなんです。

光石 それが高校生のときだったと、横山さんの自伝『クレイジーケンズ マイ・スタンダード』で読みました。

横山 ちょうど定時制の高校に転校した頃ですね。古着を買い取ってくれる店を探しながら歩いていて、青山の「CHOPPER」に入ったんです。そうしたら秀光さん(クールスのドラマー・佐藤秀光)が出てきて、手ぶらじゃ帰れないと櫛とポマードを買って、着ていたシャツにサインしてもらった。

光石 ファッションにしろ、音楽にしろ、今につながるカルチャーがあの頃始まったような気がしますね。

横山 僕もクールスにいながらメンバーには内緒でシャネルズは聴いていたんです。横浜の先輩の山崎廣明さんが第1期のダックテイルズにいて、シャネルズと対バンしていたこともあってね。山崎さんは後にシャネルズに参加、脱退した後に僕と第2期ダックテイルズで活動することになったんです。

光石 今日持ってきたダックテイルズのシングル「真夜中のサリー」は、筒美京平さん作曲の名曲ですよね。

横山 実はディレクターの渡辺忠孝さんのお兄さんが筒美京平さんで、ダメ元で「京平さんに曲を書いてもらえませんか?」ってお願いしたんです。僕が人に曲を書いてもらうのは珍しいんですが、尊敬する京平さんだけは別格で。

光石 これは当時熱心に聴きました。

横山 ありがとうございます。歌詞は森雪之丞さんが横浜のホテルに1泊してイメージを膨らませて書いてくれたんですよ。

光石 僕も横浜には原宿とは違う憧れがありました。実はうちの女房、横浜なんですよ。

横山 ああ、そうですか。

光石 だから、女房もCKBにはシンパシー感じているんです。

光石さんの故郷の黒崎には
強烈に惹かれる何かがある(横山)


横山 北九州出身なら、福岡を中心に盛り上がっためんたいロックは?

光石 ちょうど僕が上京した後に福岡からルースターズやザ・ロッカーズなどのめんたいロックと呼ばれるバンドが出てきたんですよ。同級生は聴いていましたけど、僕はあまり聴いてなかったですね。

横山 北九州は大好きな街です。

光石 北九州と博多には大きな違いがあるんです。やっぱり博多は都会なんですよね。こっちは工場地帯の労働者の町で。

横山 デトロイトや川崎に近い?

光石 そうですね。川崎に行った時、ビックリしましたもん、雰囲気がすごく似ていて。

横山 昔からクールスをずっと応援してくれている人たちが北九州の黒崎にいたんですよ。

光石 そこです! 僕が生まれ育ったのは黒崎という街です。

横山 そうでしたか。今だったらコンプライアンスの問題になりそうな人たちが醸すちょっとヤバい緊張感が漂う空気があって。でも、クールスのジェームス(藤木)さんと僕は黒崎に、何か強烈に惹かれるものを感じました。音楽でいえばガレージパンクの匂いがする。

光石 分かります。リリー・フランキーさんは小倉出身ですし。松尾スズキさんも北九州ですね。

横山 スゴイ! 逸材を輩出していますね。

光石 黒崎の町も以前よりは活気がなくなっていますね。スペースワールドも閉園しちゃいましたし。

横山 スペースワールド! CKBでカウントダウン・ライブをやりました。ああ、北九州、黒崎。なるほど、通じ合うものがあるはずですね。

光石 僕にはクールスやシャネルズが都会的でシャレたものに見えたんです。山下達郎さんを知ったのもクールスの『NEW YORK CITY N.Y.』(79年)でした。

横山 達郎さんのプロデュースによるニューヨーク録音のアルバムですね。

光石 それが素晴らしくて、初めて達郎さんの存在を知るんですが、最初は「あの人、長髪だよ。リーゼントしてないよ」なんて疑ってたりして(笑)。

横山 でも、達郎さんはものすごいオールディーズマニアですからね。

光石 そういうことを田舎者だったから知らなかったんですよ。それで山下達郎さんも聴くようになるんです。

横山 クールスのヴォーカリストのピッピさん(水口晴幸)のソロ『BLACK or WHITE』(80年)も達郎さんプロデュースでしたしね。

光石 あれもメチャクチャかっこよかった。

横山 勝新太郎さん監督・主演の刑事ドラマ「警視-K」にはピッピさんも出演していたし、エンディングテーマは達郎さんの「My Sugar Babe」でしたね。ディスコシーンでは「BOMBER」がかかったりして。

80年代の下北沢のソウルバーで
ニアミスしていたかも(光石)


光石 剣さんもクールスにいながら色々な音楽を聴かれていたんですね。

横山 そうですね。クールスに入る前から達郎さんのコンサートにも行っていたし、ライブ盤『IT’S A POPPIN’ TIME』でルビー&ザ・ロマンティックスの「ヘイ・ゼア・ロンリー・ガール」をカヴァーしたのには、唸りました。

光石 僕もその後は、達郎さんや湯村輝彦さんを通してR&Bを随分知りました。

横山 光石さんは、80年代にも「おしん」「スチュワーデス物語」など様々なTVドラマに出演されていたそうですが。

光石 いやぁ、隅っこのほうにちらっと出ていただけです。役者としてはまだフワフワした状態で、好きなレコードを探したりするほうが楽しくて。

横山 光石さんも80年代に下北沢のソウルバー「エクセロ」にも行っていたと聞いて驚きましたよ。僕もよく通っていたので。

光石 当時はお酒を飲まなかったので――今は飲むようになったんですけど――コーラ飲みながら、店でかかるレコードをメモしたりしてね。

横山 同じです。俺もお酒が苦手でコーラ飲んでました(笑)。

光石 お店の寄せ書きのノートに横山さんの言葉が残っていますよね。

横山 そうそう。あの頃は誰も俺のことなんて知らないのに、なんかちょっとこう、かっこつけた文章書いちゃってね(笑)。

光石 僕も書いているんですよ(笑)。今もソウルおでん屋「しずおか屋」として営業されていますね。

横山 静岡おでんが美味しくて、ソウルがかかるいい店。

光石 たぶん、80年代にニアミスしていたんでしょうね。もし店で剣さんに会っていたら、僕は分かりますから(笑)。

talk03に続く


横山 剣(よこやま けん)

1960年生まれ。横浜市出身。81年にクールスR.C.のヴォーカリストとしてデビュー。その後、ダックテイルズ、ZAZOUなど、さまざまなバンド遍歴を経て、97年にクレイジーケンバンドを発足させる。和田アキ子、TOKIO、グループ魂など、他のアーティストへの楽曲提供も多い。2018年、クレイジーケンバンドはデビュー20周年を迎え、8月には3年ぶりとなるオリジナルアルバム『GOING TO A GO-GO』(写真)をリリースした。9月24日(月・祝)には、横浜アリーナでデビュー20周年記念ライブが行われる。
●クレイジーケンバンド公式サイト http://www.crazykenband.com/

光石 研(みついし けん)

1961年生まれ。福岡県出身。高校在学中の78年に映画『博多っ子純情』の主役に抜擢を受け、俳優デビューを果たす。主な出演作に、映画『Helpless』『ヒミズ』『シン・ゴジラ』『アウトレイジ 最終章』『モリのいる場所』『羊と鋼の森』、ドラマ「バイプレイヤーズ」「未解決の女 警視庁文書捜査官」「ハゲタカ」「フェイクニュース」などがある。盟友・大杉漣が初のプロデュースを手がけ、主演も務めた映画『教誨師』(2018年10月6日公開)にも出演している。
●鈍牛倶楽部(所属事務所)公式サイト
http://dongyu.co.jp/


剣×研サイン入りチェキをプレゼント!

横山剣さんと光石研さん、おふたりのサインが入ったチェキを、計5名にプレゼントいたします。応募要項は、この連載の最終回に掲載しております。

<衣装>
[光石さん]ネイビーセットアップ/BLUE BLUE(03-3715-0281)、インナーのアロハシャツ、シューズ/本人私物

構成=佐野郷子
撮影=鈴木七絵
スタイリング=下山さつき
ヘアメイク=山田久美子

今日の運勢

おひつじ座

全体運

人を仕切る立場にたちやすい日。でも自分は表に出ないほうが吉...もっと見る >