2018/09/30 18:00

「星のや富士」のオリジナルプラン “グラマラス富士登山”に挑戦!

■星のや富士 (後篇)

 国内のみならず海外に至るまで、さまざまなロケーションに魅力的な施設を展開する星野リゾート。その星野リゾートが、今、特に力を入れているのが「ウェルネスな旅」です。

 この連載では、バラエティに富んだアクティビティ、そしてオーガニックな食事などが楽しめる、ヘルスコンシャスなステイを各地からご紹介します。

初心者こそチャレンジしてみたい
“グラマラス富士登山”とは?


刻一刻と表情を変える富士山。眺めるだけでなく、登山にもトライしてみたい!

 富士山の裾野、標高約800メートルに位置するグランピングリゾート「星のや富士」。ここを訪れて心に刻まれるのは、目の前に聳える富士山の美しく凛々しい姿。

 あの山に登ってみたい! でも、体力に自信がないし、辛そう……。そんな理由で富士登山を躊躇していた人々が次々とチャレンジしているのが、「星のや富士」のオリジナルのプログラム“グラマラス富士登山”だ。


標高約800mに位置する「星のや富士」に滞在し、ゆっくりと高地に慣れてから富士山を目指すのもいい。

「星のや富士」に前泊または後泊して富士山をめざすこのプログラムの特徴は、快適、安全、安心であることだ。

 プログラムには、登山前の不安をとりのぞくアドバイスや、経験豊富なプロによるレクチャーやガイド、プライバシーが守られた快適な山小屋ステイ、リゾート滞在中の特別なアクティビティなど、スペシャルな企画がぎっしりと詰まっている。


「北口本宮冨士浅間神社」は、世界遺産「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」を構成する25の構成資産のひとつ。

 背景にあるのは、「多くの人が特別な気持ちを抱いてのぞむ富士登山をサポートしたい」「文化遺産としての富士山を伝えたい」という想い。それだけに、豪華で贅沢というだけではなく、富士山を心と身体で体感できる濃厚な内容となっている。


「グラマラス富士登山」なら、富士山から眺める絶景を楽しむ心の余裕が持てるはず。

 この「グラマラス富士登山」にトライすることになった私は、富士山は未経験、登山も初心者。富士登山の素晴らしさは経験者から何度も聞いていたけれど、一方では「高山病にかかってしまった」「とにかくしんどい」というネガティブな情報も耳にし、なかなか踏み出せないでいたのだ。


1回1組5名まで(最少催行人員2名)というプライベートのツアーを率いるのは、富士登山歴650回を超える「富士山登山学校ごうりき」の近藤光一さん。

 そんな不安だらけの超初心者を力強くサポートしてくれるのは、富士登山のプロフェッショナル、「富士山登山学校ごうりき」。

 装備不足やハードスケジュールのため体調を崩し、約半数の人が途中で登山を諦めてしまうなか、彼らが率いるツアーの登頂率は90%。なんて頼もしい!


登山グッズのレンタルは、初心者にはとても便利。往復の荷物も減るからラクチン。

 登山の1カ月前から、「富士山登山学校ごうりき」によるカウンセリングがスタートする。日常生活で簡単に行える体力づくりや、快適なウエアの選び方、富士登山のノウハウなどを、メールや電話でアドバイス。

「下りが不安なんだけど膝サポートは必要?」「山頂ってどれだけ寒いの?」「曇っていても日焼け止めは必要?」「高山病が心配」。そんな細かい質問に答えてもらうにつれ、しだいに不安が楽しみに変わるのを実感しながら、登山当日を待った。

富士登山をさらに豊かなものにする
リゾートでの時間


昔から日本人が憧れと畏敬の念を抱いてきた霊峰富士。「グラマラス富士登山」では文化遺産としての富士山にも触れる。

「グラマラス富士登山」のスケジュールは2通り。ひとつは、「星のや富士」に前泊し、翌日に富士山を目指すコース、もうひとつは富士山から下山後に「星のや富士」に後泊するコースだ。前泊、後泊それぞれに、富士登山をサポートするアクティビティが提供される。


北口本宮冨士浅間神社の境内にある、吉田口登山道の起点となる祖霊社。自然遺産ではなく「信仰の対象と芸術の源泉」として世界遺産に登録された富士山の文化的背景も興味深い。

 前泊コースでは、北口本宮冨士浅間神社を参拝し、登山の安全を祈願する。ここは、1900年以上の歴史を持つ、富士登山道の入り口でもある。

 かつては修験者たちの修行の場だった富士登山が、「富士講(信仰による参詣登山)」として一般人に広まった江戸時代後期、そして大ブームとなった今日にいたるまで、富士山が持つ歴史に触れるのも「グラマラス富士登山」の特徴だ。

 ただ身体を動かし爽快な気分を味わったり、絶景を楽しんだりするだけではなく、知的好奇心も満たしてくれる。


富士山周辺に数社ある浅間神社で授かったご朱印。地元の織物で作られた色鮮やかな表紙が特徴の御朱印帳なら、旅の記念にもなる。

前泊コースで体験するのは行動食作り。ナッツやドライフルーツをチョコレートで固めて冷やす。完成品はきれいにラッピングして出発時に用意してもらえる。

 参拝の後は、「星のや富士」に戻って行動食づくり。行動食というのは、登山に携行する食料のこと。材料はチョコレートやナッツ、ドライフルーツ、シリアル、キャラメルなど。

「カロリーが高いものばかり!」と一瞬ひるんでしまうが、長丁場の富士登山にこまめなエネルギー補給は必須。一般的には味気ない行動食を、こうして自分で作るのも楽しい。


前日は、ガイドの近藤さんにより念入りな装備のチェック。

 いよいよ富士登山を直前にして、ぶり返す不安を一掃してくれるのが、「富士山登山学校ごうりき」のガイド、近藤光一さんによるレクチャーと装備のチェックだ。

 靴をレンタルしている場合はサイズに問題がないか、体調は万全か、翌日の天候などを再度、ここで確認する。近藤さんと話して安心した後は、寝心地のいいベッドで眠り、あとは出発を待つだけ!


後泊コースにつくのはフットトリートメント。ヒノキまたはローズのオイルを使い膝から下をもみほぐす。

 もちろん、後泊の場合も、直前のレクチャーはしっかりと行なわれる。後泊パターンのスペシャルは、登山でパンパンにむくんだ脚のトリートメント。先に泊まるか、後に泊まるかは、好みやスケジュールしだいだ。

自然と文化を感じるからこそ
富士山は面白い!


江戸時代の登山者と同じ風景を眺める感動。装備は違えど、今も昔も自分の足で登ることには変わりがない。

 いよいよ富士登山当日。「星のや富士」から車で約1時間の富士山五合目に向かい、まずはランチ。お土産物店をぶらぶらしたり、小御嶽神社に参拝したりした後、ガイドの近藤さんと合流、装備の最終チェックや準備運動をし、14時頃から登山がスタートする。


五合目では、食事をしたり、冨士山小御嶽神社を参拝したりして、ゆっくりと過ごす。

 五合目に着いて登山を始めるまで約3時間。一般的なツアーに比べるとかなり長い時間をここで過ごす理由は、高度順応するためと、登山客が一気に登り始めるラッシュを避けるため。

 初日はゆっくりと4時間ほどかけて登り、八合目付近の山小屋「東洋館」に宿泊。しっかりと睡眠をとり体力を回復させた翌朝、ご来光を眺めた後に山頂へと出発するのが「グラマラス富士登山」の基本的なスケジュール。

 近年の富士登山では、山小屋を利用しない日帰り行程や、ご来光を山頂で見るべく夜のうちに山小屋を出発し、登山客で大渋滞のなかヘッドライトで足元を照らしながら登るケースも珍しくない。だが、「グラマラス富士登山」はあくまでも安全な日中登山にこだわっている。


六合目までは登りやすい道が続く。だからといって、ペースを上げず、ゆっくり、ゆっくり。

 登山道を歩きはじめて気づくのは、私たちがほかの登山者よりもスローペースで歩いていること。最初は物足りないと思うかもしれない。

 でも、「亀のような速度で、ペンギンのような歩幅で。深く呼吸しながら」という近藤さんのアドバイスを守っていると、疲れは少なく、心の余裕もあるからか周囲の自然も目に飛び込んでくる。


自然の厳しさと素晴らしさを見つけながら歩く。

 岩と岩の間に咲く小さな花を見つけたときの喜び、雪の影響で不思議な形に曲がった木の不思議さ、森を抜ける風の匂い……。草鞋とすげ笠で山頂をめざした江戸時代の人と同じ気持ちを共有できたようで、なんだか嬉しい。


六合目を過ぎるとジグザグの道に。時々振り返って、眼下の景色を楽しむ。

 六合目を過ぎると、しばらくジグザグの広い道が続き、やがて急な岩場が現れる。でも、速度と歩幅と深呼吸をキープしていれば、身体はそれほど辛くない。むしろ、「気づいたらこんなに高いところまで登っていた」という感じだ。


七合目で休憩させてもらった山小屋の売店。昭和の雰囲気がノスタルジックでかわいらしい!

 ちなみに、私は運動が大の苦手。650回を超える富士登山ガイドの経験を持つ近藤さんが、呼吸の様子を見ながら絶妙のタイミングで休憩をとったり、歩くスピードを調整してくれたりするからこそ、苦もなく楽しく登れたのだと思う。


七合目の岩場を登れば、初日のゴール!

 もし、万が一へとへとになってしまったとしても、いざとなれば荷物を代わりに持ってくれるアシスタントガイドも同行しているから心配は無用。最大5名定員の完全プライベートツアーに2名のガイドがいるのは、とても心強い。

 マイペースをキープしながらゴールの「東洋館」に到着すると、スタッフが温かく迎えてくれた。

山小屋のイメージをくつがえす
贅沢なステイ


「東洋館」に到着したら足湯のセットが。疲れた身体に嬉しいはからいだ。

 大部屋でほかの登山者と雑魚寝、食事はカレーとうどん、トイレも不安……という山小屋の概念を覆すのも、「グラマラス富士登山」のポイントだ。


富士山を愛するスタッフに迎えられて、気持ちよく過ごせる。

「東洋館」では1組1室の貸切利用となるため、プライバシーが保たれる。さらに、「星のや富士」と同じリネンでベッドメイキングされたマットレスや部屋着も。無料のWi-Fiサービスやコンセントもあるので、携帯電話の充電もできるし、富士登山の感動をすぐにSNSで発信することも可能だ。


リネン類は「星のや富士」と同じもの。しっかり熟睡して翌日に備えて。

 もちろん、お風呂はないけれど、クレンジングや化粧水、乳液などのアメニティを完備。これは少しでも荷物を減らしたい富士登山にはありがたい。別棟にあるトイレは清潔で、まったく抵抗なく利用することができた。


「泊まるだけ」という山小屋のイメージを覆す豪華なディナー。

 夕食も一般的な山小屋のものとは大きく異なる。テーブルに並ぶのは、チーズや生ハムを盛った前菜と、「星のや富士」が監修するビーフシチューと山梨県産ワイン。体力を使った後はなおのこと、温かくおいしいものが染み入る。


日没後、外に出てみると満天の星が。天の川もくっきり。

 食事を楽しみ、夜は満天の星を仰いで、寝心地のいいマットレスにもぐりこんだら、あっという間に夢のなかへ。


八合目付近でも、山頂に負けないご来光を眺めることができる。日の出後、明るくなってから登り始めるのが「グラマラス富士登山」の鉄則。

 翌朝のご来光観賞は「東洋館」のすぐ前で。海抜約3,000メートルの高さにあるこの山小屋は、八合目に近く、山頂まで行かなくても十分に絶景を眺めることができる。

 山頂の日の出も素晴らしいのだろうけれど、混雑しているし、夜中の登山も不安。ビギナーには、無理のないスケジュールが本当にありがたかった。

自然にあらがわない
無理をしない富士登山


目覚めてすぐに眺めるご来光。ここに来なければ見ることができない絶景。

 ご来光を眺めた後は、いざ山頂に向けて出発する予定だったが、この日は強風で、天気は下り坂。近藤さんから山頂の最新情報を聞き、結局、自分自身でここから先は登らないという選択をした。



「東洋館」には山小屋としてはかなり貴重な本格コーヒーも用意されている。

 無理をすれば途中までは登れなくもないこんな状況のときは、近藤さんの一存ではなく、登山者の想いにより行程が決まる。

 もし、このとき「せっかく準備をしたのだし、ここまで来たのだから」と無理をしていたら、私は二度と富士山に登りたくないと思ってしまったことだろう。「自然にあらがわない。その中で最高級の富士登山をしましょう」と、近藤さんも賛成してくれた。


「東洋館」のスタッフに見送られて下山道へ。

 山頂にこそたどり着けなかったものの、快適な「グラマラス富士登山」は続く。「東洋館」で淹れたてのコーヒーを飲んだ後、下山道へ。帰路は登山よりも辛いと聞いていたけれど、ゆっくり焦ることなく進むことで、なんなくクリア。清々しい気持ちでゴールの五合目に到着した。


「登るより辛い」と聞いていた下山道。一歩一歩ゆっくりと歩くことで、恐怖心を抱かずに下ることができた。

 初めての富士登山は、それまで思い描いていた「辛い」「達成感だけを目的に登る」といったイメージとは真逆の、想像をはるかに超える素晴らしい時間だった。富士山を「登った」というよりも「感じた」といったほうが正しいかもしれない。


「六根清浄(眼・耳・鼻・舌・身・意を清らかにする)」が叶うと昔から言われる富士山。下山後の気持ちは清々しく、心が洗われたかのよう。

 音や光にまみれ、人混みのなかで過ごすことで疲弊した心を、富士山は洗濯してくれる。江戸時代の人々も持っていた霊峰富士への想いや、自然から発せられるメッセージをふんわりと感じながら歩くのは、とても気持ちがいいものだった。

 でも、そのためには、富士山の文化や歴史にきちんと向き合う心も大切。そんなことにも、「グラマラス富士山登山」は気づかせてくれた。あれだけ不安だらけだったのに、今は「来年のシーズンもまた富士山をめざしたい!」と思っている。

星のや富士

所在地 山梨県南都留郡富士河口湖町大石1408
電話番号 0570-073-066(星のや総合予約)
https://hoshinoya.com/

【衣装提供】
La Mont

https://lamont.jp/


芹澤和美 (せりざわ かずみ)

アジアやオセアニア、中米を中心に、ネイティブの暮らしやカルチャー、ホテルなどを取材。ここ数年は、マカオからのレポートをラジオやテレビなどで発信中。漫画家の花津ハナヨ氏によるトラベルコミック『噂のマカオで女磨き!』(文藝春秋)では、花津氏とマカオを歩き、女性視点のマカオをコーディネイト。著書に『マカオ ノスタルジック紀行』(双葉社)。
オフィシャルサイト http://www.journalhouse.co.jp/

文=芹澤和美
撮影=鈴木七絵

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