2018/11/08 15:00

エジプトのアブシンベル神殿に 年に2度だけ差し込む朝日に興奮!

 世界最大の石造建築物ピラミッドの内部を上ってみよう。ツタンカーメンの煌びやかな宝物を間近で見てみよう。古代エジプトのファラオたちが成し遂げた偉業を、およそ5,000年の時を超えた今、体験できるのはまさに奇跡!

 偉大なるエジプト体験は時を超越して人の心を動かし、価値観さえ変えてしまう。2017年10月から直行便が復活し、日本からカイロへは約14時間。ファラオたちの栄華が花開く地へ、ひとっ飛びだ!


“建築王”の異名を取った
ラムセス2世が築いた大神殿


ラムセスデイのアブシンベル神殿。この日を目指し、世界中から人々が殺到する。(C)Ryoichi Sato

 紀元前2900年頃、ナイル川上流(南部)の上エジプトと、ナイルデルタ周辺の下エジプト、2つの国が統一され、エジプト文明は夜明けを迎えた。

 ファラオたちの華麗なる足跡を、まずは上エジプトのアブシンベル神殿からたどりたい。

 この大神殿には、できれば2月22日または10月22日の“ラムセスデイ”に合わせて訪問を。この2日は、太陽神が放つ聖なる光の神秘に立ち会える特別な日だからだ。


ユネスコによって救済され、世界遺産になったアブシンベル神殿。ラムセス2世の威光を伝える遺産だ。

 “ファラオ”とは古代エジプトの王のことを指す。中でも“ファラオの中のファラオ”と呼ばれたのが、第19王朝のラムセス2世だ。各地に神殿を築き、自身の肖像彫刻にいたっては歴代ファラオたちで最多を誇る、別名“建築王”と呼ばれた王だ。

 そんな彼の傑作とされるのが、スーダンとの国境に近い、ヌビアの地に築かれたアブシンベル神殿だ。

 一説によると、この地を選んだのは、当時のエジプトの脅威だったヌビアへ力を見せつける抑止力的な意味もあったという(それが仇となり、のちにヌビアの征服欲に火をつけることにもなる)。

 砂岩の岩山を削った神殿の正面は、高さ32メートル、幅38メートル。そこに玉座に座った高さ20メートルのラムセス2世の彫像4体が並んでいる。左から順に、2番目は顔が崩れているものの、青年期を経て老年へと年を重ねた姿を表している。


ラムセス2世が4体ずつ、左右に並ぶ大列柱室。通過する人々を睥睨しているかのよう。

 内部に入ると、腕を胸元でクロスさせたポーズのラムセス2世が4体ずつ左右に並ぶ大列柱室が広がる。像たちに見下ろされ、一瞬たじろぐ。


大列柱室の像の裏、壁に刻まれた馬車に乗るラムセス2世。

勇猛果敢に戦うラムセス2世を描いたレリーフ。

 その先には2つの前室があり、最奥に4体の神の彫像が並ぶ至聖所が置かれている。内部の壁や柱に描かれたレリーフは、エジプト統合やラムセス2世が名をあげたカデシュの戦い、神々から祝福される様子など、まるで物語を読んでいるかのよう。

巨大ダム建設による
消滅の危機を超え世界遺産に


アブシンベル神殿の入り口に立つネフェルタリ。こちらはラムセス2世の膝丈サイズ。

 入口の両脇に小さく立っていたのは、妻である王妃ネフェルタリ。ラムセス2世は7人ほどの王妃を抱えたが、第一王妃にして最愛の存在が、この“最も美しい女性”という名前をもつ、ネフェルタリだ。


大神殿から100メートルほど離れた、ネフェルタリのために建造された小神殿。こちらのネフェルタリはラムセス2世と大きさがほぼ一緒なのに注目したい。

 アブシンベルの大神殿から100メートルほど離れた場所に、彼女に捧げた小神殿も建てられている。こちらの正面の巨大彫像群はネフェルタリ像を2体のラムセス2世の像が挟んで守るようにして立っているのが印象的だ。

 そして注目したいのは、王と王妃がほぼ同じ大きさ、描かれているレリーフも対等の立場であることだろう。

 ちなみにラムセス2世はおよそ92歳まで生きながらえ、子供を100人以上も授かったという。アブシンベル神殿の正面には子供たちも数人、ラムセス2世の足元に彫られている。

 1979年に世界遺産に認定されたアブシンベル神殿を含む「アブシンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群」は、かつてナイル川のアスワンハイダムの建設計画により、水面下に沈んでしまう危機に瀕していたことがある。

 ユネスコはこの地球の宝を救おうと呼びかけ、各国からの支援のもと、1963年から5年間かけて移築することに。

 1036個の細かいブロックに切断し、北へ64メートル、西へ110メートル移動後、再構築。正面の4体のラムセス2世像のうち、破損した1体の顔も移築前と同じ状態が維持されている。

年に2度の太陽の祭典に
大群衆がヒートアップ


アスワンからはミニバンや観光バスが深夜に集合し、隊列の前後に護衛車をつけながらアブシンベル神殿へ向かった。

 東に向かって建造されているアブシンベル神殿では、2月22日と10月22日の年に2回、朝日がまっすぐに神殿へ差し込み、最も奥まった至聖所の神々の像を照らし出す。

 この特別な朝日を迎える2日を、“ラムセスデイ”と呼ぶ。

 ラムセスデイの朝日を目指し、約300キロ離れたアスワンからアブシンベル神殿へ出発したのは、深夜1時頃。テロ対策のため、数台のバンや大型バスで隊列を組み、その前後を軍の警護車が護衛する。特別な夜明けを迎える興奮で、誰もが浮足立った様子だ。


朝5時過ぎにライトアップされた神殿前へ到着。すでに人、人、人。

 アブシンベル神殿に到着したのは、まだ夜が優勢な午前5時頃。それでも遅れを取ったようで、ゲートはすでに人々で沸き返っている。

 ゲートを越えて暗闇の中をしばらく歩くと、神殿前はさらに大群衆でごった返していた。皆少しでも前へ、前へと押し合い、隙間を見つけては身体をねじ込んでくる。太陽神からの祝福を勝ち取るために、誰もが必死だ。


最初の一筋の朝日に照らし出される大神殿を見ようと、皆待ち構える。

ナーセル湖からご来光が顔を出す。

 ぐりぐりと人垣に隙間を作っては入り込み、いい場所を確保したところで、振り返ると、朝日の気配が背後のナーセル湖ににじみ始めていた。鳥たちが水面近くを飛んでいく。空がうっすらと明るくなり始めたら、押し合いへし合いはさらにヒートアップ。


至聖所の4体の神々のうち、左端の闇の神プタハのみ光が当たらない設計。

 7時頃にようやく神殿内に突入、ご来光が至聖所の神々の彫像に差す光景を、大列柱室の先頭近くで見ることができた。

 ほの暗い神殿内で、彫像のみに柔らかな朝日が差し、陰影が浮かびあがる。

 4体の神々のうち、右から太陽神のラー・ホルアクティ、神格化されたラムセス2世、王の守護神アメン・ラーに朝日は当たるが、左端の闇の神プタハだけは光に触れないよう建設されている。

 神殿が建造されたのは紀元前1250年頃。この設計を計算で導き出した、当時の暦の知識に驚く。


ナーセル湖の湖面を渡る鳥たち。イベント後は心落ち着き、周囲を見渡す余裕も出てくる。

お揃いの衣装で聖なるイベントに立ち会うグループも。

 神殿から出ると、広場では楽器を打ち鳴らし、一群が踊っている。テレビ中継も数カ所でインタビューを行っている。太陽が昇るにつれ、光と熱がどんどん強くなってくる。

 その頃になると、先ほどまでの熾烈な場所取りがうそのように、和やかな祝祭の空気に変わっていた。

 この年に2度のイベント、朝日が、祀られている神々の像に当たることで、太陽神と結合し、パワーアップすると考えられているそうだ。朝日を受けて、自分までも力が満ちた気がしてくる。

【取材協力】
エジプト政府観光局

http://www.egypt.travel/ja


古関千恵子 (こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること1/4世紀あまり。世界各国のビーチを紹介する「世界のビーチガイド」で、日々ニュースを発信中。
「世界のビーチガイド」 http://www.world-beach-guide.com/

文・撮影=古関千恵子

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