2018/11/15 07:00

国産ハトムギのパンとお茶でほっこりのどかな時間が流れる奈良のパン屋

 近鉄奈良駅から15分余りバスに乗り、古市停留所で下車。南へ歩き、古市南の交差点を右へ曲がると、左右に田畑が広がります。そんな田園風景の中で、一際目立つ白く細長い建物が「はとむぎの杜」。


外観。細長い建物で、前面に広い駐車場も。

 すぐ隣の土地ではハトムギや野菜が栽培されており、お店に入ると、畑で採れた野菜が売られています。ずいぶん遠い田舎に来たような、のどかな雰囲気です。


外光がたっぷり入る店内。

お店の横にハトムギ畑が。トンボがいっぱい飛んでいました。

 お店のオープンは、2017年11月1日。ハトムギを毎日おいしく食べられるようにと、ハトムギに関する食品、加工品、健康食品の「それいゆ株式会社」が始めたパン屋さんで、店内のショーケースに並ぶ全てのパンにハトムギ粉が使われています。


ケースに並ぶはとむぎパン。

 パンを焼くのは、奈良県橿原市出身の上田美穂さん。パティシエ志望で専門学校に進み、卒業後に入社したのがパン屋さん。ケーキ工房に配属されましたが、朝、天然酵母を使ったパンも焼いていました。


パンを作る上田美穂さん。

丸められた、はとむぎ粉入りの生地。

 パン作りに魅力を感じて、次にはパン屋さんで働き、ミキシングや成形の技術を身に付けます。その時に生地やフランスパンにこだわるようになりました。その後、カフェで働きながら、家で酵母を起こしてパンを焼いていたのだとか。

 もっとパンを触りたくなって「はとむぎの杜」に入社。「ハトムギを使い、卵や乳製品不使用という、それまでと違うパン作りに苦労しました」と苦笑い。

 ハトムギはイネ科の穀物で、良質のタンパク質やビタミン、ミネラルなども豊富に含まれているのだそう。さっそく、畑のハトムギを見せてもらいました。台風や大雨にも負けずに豊かに実っています。


ハトムギが実った様子。10月ごろに収穫されます。

 数珠玉のような実が9月から10月に黒く熟したら収穫。畑の上空をトンボが飛び回り、細長い葉っぱの上でイトトンボが羽根を休めています。一歩進む度にバッタやカエルが飛び跳ねて、何ともにぎやか。

 ハトムギの畝の隣に、サツマイモやトウモロコシなどの野菜が植えられているのもおもしろい。

 ここの他、数箇所の畑でも有機無農薬でハトムギを栽培していて、自社の畑で採れたハトムギはお茶に加工されるのだそうです。


畑では唐辛子などの野菜も栽培。すべて有機無農薬栽培です。

ハトムギは、サツマイモなどの他の野菜と一緒に栽培されています。

自家製の堆肥。

店内の一角で採れたて野菜を販売。

「パンに使うハトムギ粉は国内産。ハトムギ粉を加えると生地が重くなり、入れ過ぎるとクセの強い味になる。色々試して、1割から2割に落ち着きました。小麦粉も色々な種類を試して、三重県産に。パンとは別のものと考えるようにとアドバイスされて、新しいレシピが完成できました」と上田さんはにっこり。


ハトムギで起こした自家製酵母。

ハトムギ粉。

 ハトムギから起こした酵母を使い、おいしいパンができるようになったと言います。今では、動物性のものを使わずに作るのが、とても楽しいのだとか。天然塩と、白砂糖ではなく、てん菜糖を使っているのも特徴。次々と、ここにしかないパンが生まれています。

一番人気はクリームパン!
自家製ハトムギのお茶も美味

 色々なパンをご紹介しましょう。


左上から時計回りに「デコポンのクリームパン」210円、「クリームパン」194円、「ぶどうパン」168円、「紅さやか」250円。

 一番人気は「クリームパン」。ハトムギ茶を煮出して丸ごと加えた生地で、自家製の豆乳クリームを包んでいます。甘くない優しい味わいのなめらかなクリームと、ほっこり香ばしい生地の相性が抜群。「クセのない豆乳を選びました」と上田さんはにっこり。

 旬の時期にコトコト煮込んで作った愛媛県産デコポンのジャムを、豆乳クリームと一緒に白パン生地で包んだ「デコポンのクリームパン」もおいしい。

「ぶどうパン」は、沖縄県産のラム酒・ルリカケスに漬け込んだレーズンを使用。優しい風味と香りで、食べやすい一品。

「紅さやか」と名付けられたパンは、キュンと甘酸っぱいサクランボ・紅さやかとカシスをコンポートにして、豆乳クリームと一緒に全粒粉の生地で包んでいます。見た目も可愛く、甘味と酸味のバランスがとてもいい。


左上から時計回りに「メロンパン」194円、奥右「はとむぎシナモンマフィン」264円、「はとむぎのドーナツ(プレーン)」166円、「ベーグル」284円。

「メロンパン」は、てんさい糖を使ったサクサクのクッキー生地が、モチモチ、フワフワのパン生地に乗っています。ほんのりした甘さで、しっとり食べやすい。幅広い年代に人気だそう。「ベーグル」は、季節で様々な種類が登場。これは、ココアとココナッツ。もっちりほろ苦のココア生地で、中には優しい甘さの自家製ココナッツジャム。コク深いおいしさで、おやつにぴったりです。

 シナモンの香り豊かな「はとむぎシナモンマフィン」には、三重県産の薄力粉とハトムギ粉を半々で使用。レーズンとクルミがギュッと詰まったリッチな味わいです。シナモンの風味がアクセント。

「はとむぎのドーナツ」は、ココナッツオイルで揚げてあります。香りが良く、いつまでも揚げたてのようなおいしさ。ムチムチした食感のパン屋さんらしいドーナツです。


左上から時計回りに「畑のおやき」227円、「だだちゃ豆のミニハードトースト」190円、「塩パン」162円、「有機トマトとひよこ豆のシチュー」210円。

 食事向きの甘くないパンもあります。

「畑のおやき」は、自社の畑で採れた野菜を調理し、食パン生地で包んで焼き上げています。取材日は、有機の切り干し大根、完熟の万願寺唐辛子、舞茸のみりん醤油炒めが入っていて、食べ応え充分。小腹がすいた時にもよさそう。

「有機トマトとひよこ豆のシチュー」は、自社の畑で採れた旨みたっぷりのトマトを、有機のヒヨコ豆と一緒にコトコト煮たシチューが入っています。「生地の回りにバゲットのパン粉を付けてオーブンで焼いてから、ココナッツオイルで揚げています」と上田さん。ひと手間かけたリッチな味わいです。

「だだ茶豆のミニハードトースト」は、同じく畑で採れただだ茶豆を塩ゆでし、フランスパン生地に混ぜ、ミニ食パン型で焼成。半分にカットして、軽くトーストする食べ方がオススメだとか。豆の風味が口いっぱいに広がります。

「塩パン」に使っているのは、動物性不使用の手作りバター。ココナッツオイルや豆乳ヨーグルト、てん菜糖、オリゴ糖などを使って工夫したオリジナルで、ほんのり甘く、食パン生地と好相性。リピーターの多い人気パンです。


左から「バゲット」240円、「コンプレ」210円、「木の実とフルーツのリュスティック」324円、「白パン」97円。

「ハトムギの旨みを感じてもらえる」と上田さん自慢の「バゲット」は、低温で長時間発酵。さわやかな風味と香りが口の中に広がります。優しい甘みも。

「コンプレ」は、国産の石臼挽き全粒粉を使用。ミキサーを使わずに手ごねで、毎日、微妙な調整を欠かしません。むっちりした食感と豊かな香りが特徴です。

「木の実とフルーツのリュスティック」は、沖縄県産のラム酒・ルリカケスに漬け込んだレーズンとイチジク、クルミがぎっしり。長熟のバゲット生地の旨みと相まって、食べ出したら止まらなくなるおいしさです。

「白パン」は、豆乳仕込みの生地で、ふんわりした食感。毎日食べたいという幅広い年代のファンに愛されている一品。


左から「くるみパン」216円、「はとむぎの杜の角食パン」450円。

「はとむぎの杜の角食パン」は、モチモチした生地ですが、トーストするとサックリとした軽やかな食感に。「ハトムギの味と香りをダイレクトに味わってもらえます」と上田さん。

 豆乳仕込みの生地に香ばしくローストしたクルミをたっぷり入れた「くるみパン」は、上田さんのお気に入り。優しい味わいに香ばしさが加わり、毎日食べたくなるおいしさ。


パン集合。すべてにハトムギ粉が入っています。

「健康に良いといわれるハトムギをもっと身近に、もっと気軽に、毎日食べられるように」と開発された「はとむぎパン」は、どれも優しい独特の味わい。


イートインスペース。

 パンは、店内でイートインできます。

 一角に、はとむぎ茶やはとむぎブレンドハーブティーのティーバックが置かれていて、自由に飲むことができるのです。ストレートはもちろん、レモングラスやジンジャー、大和茶がブレンドされたはとむぎ茶もとてもおいしい。

 はとむぎ茶を飲みながら「はとむぎパン」を食べると、ほっこり、ゆったり、幸せな気分になれます。

はとむぎの杜

所在地 奈良県奈良市出屋敷町141-1
電話番号 0742-62-8318
http://www.hatomugi.shop/


宗田洋子(そおだ よおこ)

ライター。神戸生まれの神戸育ち。神戸を離れたことがない神戸っ子。ライター歴30年以上で、関西の雑誌の取材だけでなく全国誌でも関西取材を手がけ、老舗から新店まで回ったお店は数知れず。移り変わる街を見続けてきた。食いしん坊で飲んべえ。

文・撮影=そおだよおこ

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