2018/11/20 18:00

世界的名画・ムンクの《叫び》が 海を渡って東京にやって来た!

誰の心の中にも
ムンクの《叫び》は潜んでいる!


エドヴァルド・ムンク《叫び》1910年? テンペラ・油彩、厚紙 83.5×66cm/オスロ市立ムンク美術館所蔵 All Photographs ©Munchmuseet

 人の姿を描いた世界の名画で、知名度ほぼ百%なのはレオナルド・ダ・ヴィンチ《モナ・リザ》と、エドヴァルド・ムンクの《叫び》くらいだろう。《モナ・リザ》はルーヴル美術館からまず出ないけれど、《叫び》はこの秋、海を渡ってやって来た。このチャンス、ゆめお見逃しなきよう。

 東京・上野、東京都美術館の「ムンク展─共鳴する魂の叫び」である。ムンクの《叫び》には何点かのバージョンが存在し、オスロ市立ムンク美術館所蔵のテンペラ・油彩画版《叫び》が日本で公開されるのは初めてのこと。会場には他に、約60点の油彩画をはじめ計百点ほどのムンク作品が並ぶ。半世紀に及ぶ彼の画業の全体像を、日本でたどれるなんてうれしいかぎり。


エドヴァルド・ムンク《星月夜》1922-24年 油彩、カンヴァス 120.5×100.5cm/オスロ市立ムンク美術館所蔵 All Photographs ©Munchmuseet

 作品群を通覧するとよくわかる。描くという行為によってムンクが表したかったことは、どの年代でもずっと変わらなかったと。では彼が追い求めていたものは何か? 人の内面に渦巻く感情である。感情によって、世界の見え方がどう変化するのかということを、ムンクは繰り返し画面に描き、探究した。

 内面や感情はふつう、目に見えない。ということは、それ自体を絵に描くことはできない。ならばどうするか。内面や感情のありようによって生じる外界の変化を描けばいい。
《叫び》はまさにその実践例だ。

 この絵の舞台は水辺の橋の上で、通常なら風光明媚な場所かもしれない。でもそれが、不穏な色使いと渦に吞み込まれるような人物のシルエット、驚愕の表情によって、尋常ならざる場面として描き出される。

 耳を塞ぐ人物の身内に、何かが起きている。それで目に映るものすべてが、かくもおどろおどろしいものへと変貌してしまった。自分の存在に関わるほどの不安の感情が、この光景を現出させているわけだ。


エドヴァルド・ムンク《自画像、時計とベッドの間》1940-43年 油彩、カンヴァス 149.5×120.5cm/オスロ市立ムンク美術館所蔵 All Photographs ©Munchmuseet

 気分やコンディションによって周りの見え方がガラリと変わるのは、誰しも経験済みのことと思う。何かいいことがあれば世界は瞬時にしてバラ色となるし、大切な人と別れてしまったあとには、何を見ても灰色になってしまうではないか。

 感情がもたらすそうした作用を、ムンクは絵画でわかりやすく表現してくれた。げに恐るべきは、画中の人物を不安の底に陥れた得体の知れぬ「何か」ではなくて、人の感情そのものである。

 ムンクが描いた「存在の不安」は、20世紀以降現在に至るまで、私たちの心の奥底にいつも蠢めいているもの。だからこそムンク作品は、私たちの心にかくも強烈に響き、共鳴することを止めないのだ。

『ムンク展─共鳴する魂の叫び』

会場 東京都美術館(東京・上野)
会期 開催中~2019年1月20日(日)
料金 一般 1,600円(税込)ほか
電話番号 03-5777-8600(ハローダイヤル)
https://munch2018.jp/

西洋美術の最上級を
浴びるように観る!


ピエール・ボナール《猫と女性 あるいは餌をねだる猫》1912年頃 油彩、カンヴァス。オルセー美術館 ©RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

 絵を観てこれほど親密な気分に浸れる体験というのもまたとない。19世紀後半から20世紀前半にかけてフランスで活動したピエール・ボナールの作品だ。室内や窓外の風景など身近なものを題材にして、それらを何色とも名付けづらい温かみある色彩によって描き出す。

 彼が生み出す画面の中では、すべてのものが溶けて一体化しているかのよう。130点超のボナール作品が並ぶ会場で存分にうっとりとしたい。

『オルセー美術館特別企画
ピエール・ボナール展』

会場 国立新美術館(東京・六本木)
会期 開催中~2018年12月17日(月)
料金 一般 1,600円(税込)ほか
電話番号 03-5777-8600(ハローダイヤル)
http://bonnard2018.exhn.jp/

アングル、モネ、ピカソらの
秀作75点を展示

 趣味のよさと情熱が合わさると、そこにみごとなアートコレクションが形成される。米国の裕福な家系に生まれたダンカン・フィリップスは両者を併せ持ち、一代で世界有数の近代美術コレクションを築いた。

 ワシントンの私立美術館フィリップス・コレクション収蔵のそれら名品の一端が東京に運ばれてきた。アングル、モネ、ピカソらの秀作75点を、品格漂う三菱一号館美術館で味わうのは至福のひとときだ。


『フィリップス・コレクション展』

会場 三菱一号館美術館(東京・丸の内)
会期 開催中~2019年2月11日(月)
料金 一般 1,700円(税込)ほか
電話番号 03-5777-8600(ハローダイヤル)
https://mimt.jp/pc

山内宏泰(やまうち ひろやす)

ライター。著書に『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)ほか。「写真を読む夜」「文学ワイン会 本の音」などの催しも主宰。新刊に『文学とワイン』(青幻舎)。
https://twitter.com/reading_photo

文=山内宏泰

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