2018/12/13 15:00

ドイツパン=酸っぱいの認識を変える 風味豊かなパンが並ぶ奈良の人気店

 港町・神戸で生まれ育ち、物心ついた頃から「フロインドリーブ」のパンに親しんできたからか、私は、ライ麦が入ったドイツパンが大好き。各地のドイツパンのお店を訪ねるのも楽しみのひとつです。


お店は、奈良交通バス「朝日町一丁目」バス停すぐ。

色々な種類のパンがぎっしり並ぶ店内。

 北野のフレンチレストラン「ラ・ターチ」へ食事に行った時、出てきたクミン入りのパンが神戸ではなく奈良のお店から送ってもらったもので、作っているのがドイツパンのお店だと聞いて、さっそく出かけました。


個性的なパンは、どれも食べてみたくなる。

 近鉄奈良線の学園前駅からバスに乗って10分余り。「朝日町一丁目」で下車すると閑静な住宅街。

 バス停すぐに、そのお店「Erdal(エアダール)」はありました。


形も具材もいろいろで、見ているだけでも楽しい。もちろん、味わいも多彩。

 ガラス越しに見える店内には、パンがぎっしり並んでいます。

 木のドアを開けて中に入ると、香ばしいパンの香り。奥の厨房でパンが焼かれています。

 対面販売で、パンの説明もとてもていねい。見たことのないパンもあり、あれこれ迷いながらパンを選ぶ客はとても楽し気。

 5人も入ればいっぱいの小さなパン屋さんは、ドイツの田舎の村にありそうな雰囲気です。


ドイツの田舎のお店を思わせる壁の飾り。

 オープンは、2013年11月4日。ご主人・丸瀬峰晴さんは、1984年生まれ。

「高校時代にアルバイトしたのがパン屋で、ハード系やブレッツェルもあったし、サーモンを挟んだサンドイッチもおいしくて」そのまま就職し、パンを作るようになったと言います。

 5年働いて「本場のパンを食べてみたい」と、ドイツへ渡りました。


パンを作る丸瀬峰晴さん。

「日本で思っていたほど、本場ドイツのパンは酸っぱくないんです。色々な街へ行ってはパン屋を巡り、おいしいと思ったお店で働いた。そのお店のほとんどがオーガニック。石臼で自家製粉していたんです」


手早く、次々にパンが成形されます。。

 なかでも興味深かったのが、ベルリンの「ブロートガルテン」。

 1978年創業のベルリン最古のオーガニックパン屋で、石臼で自家製粉していました。職人5人がそれぞれパンやケーキを分担して作り、サンドイッチやキッシュなどもカフェで食べられたそう。

「1キロ程の大きな塊でパンを焼くんですよ。働く環境もいいし、食べ物も充実していて、とても面白かった」と丸瀬さん。

 ドイツで3年修業。憧れていた「ブランジェリー コム・シノワ」の西川功晃さんが独立して「サ・マーシュ」をオープンしたことを知り、「西川さんの下で働いてみたい」と帰国。

 2年間働いて、「ドイツパンをもっと作りたくなって」独立。夢だった自店をオープンしました。

「僕が作るのは、口溶けの良いパン。フルーツや野菜が好きで、おいしく食べてもらいたいから、いっぱい使っています(笑)。ドイツのライ麦を自家製粉しています。挽きたての粉は香りが違うんですよ。ドイツパンは酸っぱいというイメージを変えたい」


ギュッと並んだ表情豊かなパン。

 平日には30~40種。土日には50種余りのパンがお店に並びます。

「色々なドイツパンを知ってもらいたい。作るのが楽しくって、種類がどんどん増えてしまう」と丸瀬さんはにっこり。

ハード系からおやつパンまで
味わいも多彩なパンが大集合

 丸瀬さんが作るパンをご紹介しましょう。


左から「ロッゲンミッシュブロート」と「ロッゲンショコラーデン」の断面。

左から「ロッゲンショコラーデン」1本 880円、「ロッゲンミッシュブロート」1本 810円。

 まずは、ドイツパン。

 手に取ると、ずっしり重い「ロッゲンミッシュブロート」。自家製粉したドイツ産オーガニックライ麦を80%使用。

 しっとりした食感で、酸味がほんのり。噛むうちにライ麦の香りが口いっぱいに広がる深い味わい。


「全粒粉ブロート」1/2 280円。

 1/2本、1/3本でも売られていますが、2日、3日と置くと酸味が増していくので、1本丸ごと買って、毎日少しずつ食べてみて、味の変化を体験したい。

 ハム、チーズと合わせて、また、バターを塗っただけでも十分おいしいのです。

 その生地に3種類のチョコとオートミールを加えたのが「ロッゲンショコラーデン」。

 チョコレートがいっぱいで、甘くなく、リッチなケーキのよう。コーヒーと好相性で、虜になるおいしさです。


ドイツパンといえば、この「ブレッツェル」160円。

「ブレッツェル」は、「ドイツのおつまみ。リベイク(温め直し)して食べてほしい」と丸瀬さん。

 むっちりしていて、細い部分と太い部分で、食感が異なるのが面白い。


一際目を引く「フラワー」250円。

 ブレッツェルと同じ生地の「フラワー」は、ドイツで「パーティ・ブロッチェン」と呼ばれているパンのアレンジ。現地では10個、20個とつなげて作られるのだそう。

 塩、チーズ、胡麻、カボチャの種があしらわれていて、同じ生地なのに、味わい豊か。一度でファンになりました。


左から「シポラタソーセージ」260円、「フランス小麦のバゲット」220円。

 フランスパンにもこだわっています。

「フランス小麦のバゲット」は、フランス小麦、オーガニックレーズンから起こした自家製酵母を使用。

 皮はバリッとしていますが、中はしっとり食感で食べやすい。豊かな小麦の風味が楽しめます。

 マスタードがきいた「シポラタソーセージ」は、豚挽き肉を羊の腸に詰めたフランス伝統のソーセージとプルーンをバゲット生地で包み、焼き上げてあります。

 ボリュームがあって、軽い食事にもいいし、ワインにもぴったり。丸瀬さんのフルーツづかいは独特です。

「バゲットは、もう1種類焼いています」。国産小麦を使って皮が薄く柔らかいタイプで、ほんのり甘みとバターの香りがし、年配客にも人気だそう。


左から「アナナスとcoffee」290円、「柑橘とアールグレイ」240円、「グリューネショコラ」250円。。

 フランスパン生地を使ったおやつパンも色々。

「柑橘とアールグレイ」は食べると、ココナッツの香りと甘さの後に、アールグレイ紅茶の香りとミカン、伊予柑の風味が感じられる華やぎのある味わい。紅茶がよく合いそう。

「グリューネショコラ」は、和洋折衷。奈良産の煎茶、小豆、クランベリー、ホワイトチョコを使用し、まったりした風味です。煎茶を合わせてみましょう。

「アナナスとcoffee」は、パイナップルとコーヒーという珍しい組み合わせ。カシューナッツ、クルミの食感がアクセント。エスプレッソコーヒーの苦味とホワイトチョコの甘みのバランスが抜群です。これは、もちろんコーヒーと。

 フランスパン生地以外のおやつパンもあります。

「カカオとヘーゼル」は、カカオを加えた全粒粉生地にヘーゼルナッツのクリームを塗り、ローストしたヘーゼルナッツとカカオニブをサンド。カカオのコク深い香りとナッツの香ばしさで、クセになる一品。


左から「焦がしバターのハニートースト」230円、「カカオとヘーゼル」350円。

 ほんのり優しい甘さの「ハニートースト」は、食パン生地に卵ベースのアパレイユ、奈良県産のハチミツを塗って焼き上げています。

 ひと味違うおとなのおやつパンがいっぱいです。


手前から時計まわりに、サンドイッチ「ドイツ人のリュックサックの中から」350円、「豚肉のコンフィ」520円、「ハチミツとアプフェル」390円。

 ドイツパンを使ったサンドイッチが楽しい。その名も「ドイツ人のリュックサックの中から」。

「ドイツにいた時、電車に乗っていたら、ドイツ人がリュックサックの中からサンドイッチを取り出して食べ始めた。面白いなあと思ったんです」と丸瀬さん。

 ドイツパンを食べてもらいたいと、そのままネーミングして開店当初から出しているサンドイッチだと言います。

 ロッゲンミッシュブロートにバジルソースとバターを塗って、ペッパーハムとレタスをサンド。シンプルですが、しっとり風味豊かなドイツパンならではのおいしさです。


サンドイッチはライ麦パンを使ったものなど、いろいろ、日替りで登場。。

 サンドイッチは多彩。「豚肉のコンフィ」は、イチジクとクルミ入りのフランスパンにブラックオリーブのペーストを塗って、豚肉のコンフィを挟んだもの。イチジクの甘みと豚肉が相性抜群。

「ハチミツとアプフェル」は、フランス小麦のバゲットに、マスカルポーネチーズとリンゴ、クルミをサンド。上から、奈良県産のハチミツをかけています。カルダモンがほのかに香る、個性的なサンドイッチ。

 他に、ブレッツェル生地のパンを使ったサンドイッチも登場するのだとか。


「ラザニアで昼食を」280円。

 もうひとつ、ネーミングが面白いパンを発見。それが、「ラザニアで昼食を」。

 生地はロッゲンミッシュブロート。ベシャメルソース、トマトが入ったカポナータ、フランス産ソーセージで「ラザニアをイメージしました」と丸瀬さん。

 名前どおり昼食にぴったり。ドイツパンの風味がじんわり広がります。ドイツパンが料理に合うことがよくわかる一品。


「シュトレン」のコーナー。

「シュトレン」2,400円。

 クリスマスに欠かせない「シュトレン」も、本場ドイツさながらにていねいに作られています。毎年、楽しみにしている常連客も多いのだとか。


「フィナンシェ」200円などのお菓子も。

「いちじくタルト」1個 390円。

 奈良県産の卵を使ったプリンやフィナンシェなどの焼き菓子も作られています。

 地元・奈良県産のイチジクを使った「いちじくタルト」は絶品。スイートバルサミコソースをかけてあり、レストランのデザートのよう。

 フレッシュなフルーツを使用したタルトは、季節限定。12月からは、奈良県産イチゴ・ことかを使用した「いちごタルト」です。

「地元で採れた野菜や吉野の原木シイタケも並べて販売しています。お客様に楽しんでもらいたいんです。パンを買うだけでなく、会話が生まれる小さな店でありたい」

 だからあちこちの生産者を訪ねて行くのだと言います。

「そうそう、サンドイッチも、どのパンもリベイクして食べてくださいね」と丸瀬さん。「Erdal」ならではのドイツパンのおいしさに夢中になります。

Erdal(エアダール)

所在地 奈良県奈良市朝日町1-2-32
電話番号 0742-93-4410
https://www.facebook.com/Erdal-エアダールパン屋-169360420189781/


宗田洋子(そおだ よおこ)

ライター。神戸生まれの神戸育ち。神戸を離れたことがない神戸っ子。ライター歴30年以上で、関西の雑誌の取材だけでなく全国誌でも関西取材を手がけ、老舗から新店まで回ったお店は数知れず。移り変わる街を見続けてきた。食いしん坊で飲んべえ。

文・撮影=そおだよおこ

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