2018/12/30 18:00

山口百恵の不朽の魅力を横山剣が熱弁 「横須賀歌謡」の系譜とは?

 東洋一のサウンドマシーン、クレイジーケンバンドを率いる横山剣さん。その常人を超えた旺盛なクリエイティヴィティにインスピレーションを与える源泉のひとつが、魅力的な女性たちの存在です。これまでの人生で恋し憧れてきた、古今東西の素敵な女性について熱く語ります!


#007 山口百恵


1980年10月5日に日本武道館で行われたファイナルコンサートより。(C)文藝春秋

山口百恵(やまぐち ももえ)

1959年東京都生まれ、神奈川県出身。1972年にテレビのオーディション番組「スター誕生!」に出場し、73年に映画『としごろ』で女優として、また同名主題歌で歌手としてデビューを果たす。その後、歌手・女優として活躍。数々のヒット作を世に送る。80年に俳優・三浦友和との婚約を発表後、ファイナルコンサートを行い引退。同年11月に結婚した。現在、長男の三浦祐太郎、次男の三浦貴大も芸能活動を行っている。

 山口百恵さんは、現在59歳。僕のひとつ上ですね。学年でいうと、ふたつ上になります。

 1973年に、桜田淳子さん、森昌子さんと一緒に「花の中三トリオ」として売り出された時は、3人の中では一番地味なイメージでした。

 僕も、最初は淳子ちゃんが好きだったんですけど、翌年の「ひと夏の経験」あたりから百恵ちゃんのよさが急に分かってきました。

 その頃、笑福亭鶴光さんがヒットシングル「うぐいすだにミュージックホール」のB面で「ももえちゃん」(作詞・作曲/山本正之)という曲を歌っていたんですよ。AMラジオの深夜放送でよく耳にしました。

 ♪ マシュマロのような唇に エマニエルカットの黒い髪――

 確かに、唇が色っぽいんですよね。

 彼女のイメージを決定づけた楽曲は、何と言っても76年の「横須賀ストーリー」でした。

 百恵ちゃん自身が小中学生時代を過ごした横須賀を歌ったこのシングルは、彼女の楽曲において初めて、阿木燿子さんが作詞を、宇崎竜童さんが作曲を手がけています。

 ダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」で一世を風靡したこの夫婦コンビが、横須賀という土地の空気感をもろに引き出している。

 百恵ちゃんが育ったのは横須賀の不入斗という町。これで「いりやまず」と読むんだから、なかなかの難読地名です。急な坂を登った先にあるこの町の雰囲気が、「横須賀ストーリー」には濃厚に再現されています。何かを背負った、陰を帯びた重たい感覚が。

 横須賀歌謡の系譜というものは、確実に存在しますよね。ダウン・タウン・ブギウギ・バンド、山口百恵の後は、80年に横浜銀蠅が「横須賀Baby」でデビューする。

 クレイジーケンバンド(以下CKB)が2002年に発表した「タイガー&ドラゴン」も、その路線を引き継いだつもりです。横須賀歌謡には、東横線じゃない、京急線ならではの雰囲気があふれている。

NHKが商品名に厳しかった頃


花の中三トリオ。左から、山口百恵、森昌子、桜田淳子。高校を卒業する77年3月に行われた卒業式会見にて。(C)共同通信

 百恵ちゃんの楽曲では、「横須賀ストーリー」と同じく阿木・宇崎作品である78年の「プレイバックPart2」も印象深い。

 当時、NHKでは商品名を出しちゃいけなかったので、NHKの番組でこの曲を歌う時は、「真紅(まっか)なポルシェ」という歌詞を「真紅な車」と変えて歌っていたエピソードも有名です。でも、「真紅な車」じゃ言霊がだいぶ弱いですよね。

 今では、NHKもその辺に関して態度がずいぶん柔軟になってきたらしく、やたらと具体的な車種の名前が出てくる僕らCKBの曲も、問題なく歌うことができます(笑)。

 最近はもうさすがにそんなことないと思うんですけど、昔、NHKに出演する歌手やバンドは、事前にオーディションを受けて、合格しなくちゃいけなかった。そのぐらいいろいろ厳しかったんです。

 僕は、ダックテールズというバンドのヴォーカルとしてデビューした84年にそのオーディションを受けたんですが、無事合格しました。

 審査するのは、スジャータのCMでも有名だった藤山一郎先生。僕らの曲を聴きながら手拍子取ってくれたものだから、安心して歌うことができましたね。

 ところが、その後に歌った某女性アイドルは不合格の憂き目に遭っちゃったんですよ。カーリーヘアでハスキーな声だから、不良っぽく見えたんですかね。どうもロックっぽいものには点が辛いらしい。

 その意味では、ダックテールズのデビュー曲「真夜中のサリー」は、筒美京平さんが作曲した昭和歌謡的ナンバーだったから大丈夫だったんじゃないかと(笑)。

百恵ちゃんとドライブできるなら


こちらもファイナルコンサートの模様。最後は、マイクをステージ中央に置いて、静かにステージを去った。(C)文藝春秋

 女優としての山口百恵も鮮烈でした。特にTBSドラマの「赤いシリーズ」は忘れられない。「赤い迷路」「赤い衝撃」といった具合に、すべての作品名に「赤い」という形容詞が冠される。

 ちなみに、「赤いシリーズ」以前には、田宮二郎さんの「白いシリーズ」があったんですよね。こちらのタイトルは、「白い滑走路」「白い秘密」といった感じ。

「赤いシリーズ」では、ほとんど宇津井健さんが共演に名を連ねています。

 CKBのアルバムでは、よくギタリストの小野瀬雅生さんが、「クレイジーケンバンド!」というサウンドロゴを叫んでいますが、20年ほど前、このフレーズを録音する際には、「『赤いシリーズ』の宇津井健が切羽詰まってる感じで!」と指示したんですよ(笑)。

 OKを出すまで、30テイクぐらい録ったかな。何度も、「もっと宇津井健っぽく!」と繰り返しました。

 80年に百恵ちゃんと三浦友和さんが結婚した時は、ショックを受けましたね。喪失感が相当大きかった。

 CKBの楽曲「廃車復活」(『FLYING SAUCER』所収 作詞・作曲/横山剣)には、♪ 不入斗のあの娘は結婚したよ 癪にさわるぜ―― という歌詞があるんですが、これは、まさに百恵ちゃんのことを歌っているんです。

 もしも百恵ちゃんとデートできるなら、やっぱり横須賀をドライブしたいですね。

 三笠公園を後にしたら、「マボチョク」と呼ばれる馬堀海岸の直線道路を駆け抜け、走水の海のゴツゴツした岩場を横目で見ながら観音崎へ。

 その時に乗る車は、百恵ちゃんに恋焦がれていた時代の僕が憧れていた、セリカ1600GTがいいな。


横山剣 (よこやま けん)

1960年生まれ。横浜出身。81年にクールスR.C.のヴォーカリストとしてデビュー。その後、ダックテイルズ、ZAZOUなど、さまざまなバンド遍歴を経て、97年にクレイジーケンバンドを発足させる。和田アキ子、TOKIO、グループ魂など、他のアーティストへの楽曲提供も多い。2018年にはデビュー20周年を迎え、3年ぶりとなるオリジナルアルバム『GOING TO A GO-GO』をリリースした。
●クレイジーケンバンド公式サイト http://www.crazykenband.com/

構成=下井草 秀(文化デリック)

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