2019/01/19 08:00

世界最古のレストランはここにある! マドリードで美食の名店を巡る

画家ゴヤが皿洗いをしていた
超老舗レストランへ


「ボティン」の外観は18世紀の姿が残されている。

 ギネスブックに現在まで営業を続けている「世界最古のレストラン」として掲載されている店がマドリードにある。「ボティン」だ。ハプスブルク家時代からの古い街並みが残されたセントロ地区にある。


入口横のウインドウにはギネスブックの認定証が飾られている。

 創業は1725年。フランス人のジャン・ボティンは、ハプスブルク家の貴族のもとで働くため、オーストリア人の妻アストゥリアスとともにマドリードにやってきた。

 1725年に、ジャン・ボティンの妻の甥が宿泊施設を開き、それまで建物の1階にあったアーケードを改装した。今も使われている薪オーブンはこのときに造られたものだ。

 18世紀、スペインの宿泊施設では、食料品やワインなどの販売が禁止されていた。そこで、ボティンの甥は、旅人が持ってきた食材で調理して料理を提供する場所を作ったのだ。

 1765年には、なんと若き画家のゴヤが「ボティン」で皿洗いをしていたという記録が残っている。


入口から入って見上げると「ボティンの甥」とスペイン語で書かれたステンドグラスがある。19世紀に造られたペストリーカウンターや、壁の飾りの金のレリーフも当時のままだ。

 その後、ボティンには子供がいなかったので、甥が経営を継ぐことになった。2階に上がる階段の手前にあるステンドグラスに「Sobrino de Botín(ボティンの甥)」と書かれているのはそのような歴史を物語っている。

 1階にあるペストリーカウンターと木製の壁の装飾は、19世紀の改装時に造られたものだ。


ゴンザレス一家の住まいを改装した2階のダイニング。隣の長テーブルでは、品のいい親子三代の大家族が食事を楽しんでいた。

 20世紀に入って、現在のゴンザレス一家が店を受け継いだ。

 内戦勃発時にも店を守り続け、今では3代目の一家が住んでいた2階、3階もレストランにして、増築も重ねられてたくさんのゲストを迎えられるようになった。建物の外観は創業当時のままだ。

 店の前には、営業日ともなるといつも人だかりが絶えない。食事のために訪れる客だけでなく、写真を撮りにやってくる観光客もいるからだ。

 私が店の入口の写真を撮ったときには雨が降っていたけれど、それでも何人もの人が傘をさしなから写真を撮っていた。


地下のダイニング。創業当時の面影を残している。

地下2階にはワインセラーがある。埃でラベルが見えないほどの年代物のワインがずらりと並んでいる。

 このレストランの名物は乳飲み豚の丸焼き。1階のキッチンでは、古い薪オーブンの中で次々と乳飲み豚がこんがり焼かれていく。


1階では、3世紀にわたって受け継がれてきた薪オーブンで、次々と乳飲み豚の丸焼きが焼かれていく。

 テーブルへはそのまま大きなお皿に載せて運ばれてくる。ゲストに見せてから、1人前ずつとり分けてくれるので食べやすい。

 やわらかい薪火で焼かれた乳飲み豚は、皮がパリッと香ばしく、その内側の肉はジューシーで旨みたっぷり。



左:トマトベースの魚介スープのトッピングは、好きなものを好きな量で、この笑顔とともに。
右:乳飲み豚の丸焼きを切り分けるベテランウェイター。その横には手元を見つめる若手ウェイターの姿が。こうして伝統が受け継がれていく。

切り分けられた豚肉。皮がパリッとしていて中はジューシー!

 店内の見学と食事がセットになったメニューもあるので、ぜひ年代物の薪オーブンや地下のワインセラーまで見学してほしい。

Botin(ボティン)

所在地 C/Cuchilleros, 17, 28005 Madrid
http://www.botin.es/ja

1839年から愛され続ける
カジュアルなレストラン


マホガニー材が使われた「ラルディ」の外壁には長い歴史が刻まれている。

 セントロ地区のソル広場から、プラド美術館へと繋がるサン・ヘロニモ通り。人通りが絶えないにぎやかな通りに面したレストラン「ラルディ」の創業は1839年。

「ボティン」と同様、こちらも激動の時代を経てなお営業をつづけてきた老舗レストランだ。


テイクアウトのコーナーの店員さんは、目にも止まらぬ早さでパイを紙で包んでいく。

 1階はパイやコロッケ、ペストリーなどをテイクアウトもできるカフェテリア。らせん階段を上った2階にはメインダイニングルームと5つの個室がある。


イートインのコーナーでは、タパスサイズのパイやコロッケなどが並ぶ。

 インテリアは、1880年頃に、パリで学んだ建築家が手がけた。メインダイニングの重厚な壁紙や、壁に掛けられた鏡は当時のものだ。

 訪れたのは昼前だったが、1階は大勢の地元の人々でごったがえしていた。昼食を14時頃から食べるマドリードの皆さんの、午前中の軽食タイムだった。

 ペストリーを買って帰る人、その場でコーヒーを飲みながらパイをほおばる人など、皆さんおしゃべりに余念がない。



左:制服の赤いシャツがよく似合うウェイターさんが、ピカピカに磨かれた銀のポットからコーヒーを注ぐ。
右:コロッケもミートパイも小ぶりのサイズ。食事ではなくおやつタイムなので。

 その人の波をかきわけて奥へ。慣れた手つきで次々とコーヒーを注いでいる年配のウェイターさんがいた。

 さっそくコーヒーをお願いすると、銀の大きなポットからカップに、香りを放ちながら琥珀色のコーヒーが注がれる。お供はコロッケと小ぶりなミートパイ。

 小腹を満たしたところで(その後に昼食の予定があった。笑)、営業前のレストランを見せていただくことに。


歴史を感じさせるらせん階段を上った2階にダイニングルームがある。

メインのダイニングルーム。建設当時に流行っていたというフランス風のインテリアだ。

 年代物のらせん階段を上って2階へ。インテリアは、創業当時に流行っていたというフランス風。どの部屋も歴史を感じさせるインテリアだ。


個室は5室。2人から利用できる。

「ジャパニーズ・ルーム」には戦国武将の像が飾られていた。

 個室にはそれぞれテーマがあり、「ジャパニーズ・ルーム」という部屋もあって、戦国武将の像が飾られていた。各界のトップセレブリティたちが食事を楽しむのはこのような個室だ。

 次回はおやつタイムではなく、代々受け継がれているレシピのコンソメスープやコシード(スペイン風シチュー)のために来なくては、と思ったのだった。

Lhardy(ラルディ)

所在地 Carrera de San Jerónimo 8, 28014 Madrid
http://lhardy.com/

王宮前広場に面した
老舗レストラン


「カフェ・デ・オリエンテ」は、王立劇場のすぐ隣のブロックにある。

 マドリードの王宮の前には、オリエンテ広場と王立劇場がある。その劇場の並びにあるのが、同経営の「カフェ・デ・オリエンテ」と「ラ・ボティレリア・デル・カフェ・デ・オリエンテ」「ラ・タベルナ・デル・アラバルデロ」の3軒。

 王宮の目の前という、ハプスブルク家時代にもっとも重要だった場所にあるレトスランだ。どの店にもテラスがあり、天気のいい日のランチも気持ちいいし、夜になると王宮のライトアップを愛でながらディナーを楽しむことができる。

 まずは、「カフェ・デ・オリエンテ」の店内を見せていただいた。


「カフェ・デ・オリエンテ」の1階にあるバーカウンターとダイニング。

 1階のバーとダイニング、地下にはダイニングと個室がある。地下の石壁は17世紀に修道院として建てられた当時のもの。個室はことさらプライベート感があり、17世紀にタイムスリップしてしまったような雰囲気だ。


「カフェ・デ・オリエンテ」地下にあるメインダイニング。石壁は17世紀当時のもの。

「カフェ・デ・オリエンテ」の個室。密談したくなる雰囲気! (笑)

Café de Oriente
(カフェ・デ・オリエンテ)

所在地 Plaza de Oriente, 2, 28013 Madrid
http://www.cafedeoriente.es/


オリエンテ広場に面した王立劇場の隣のブロック。手前の角にあるのが「ラ・ボティレリア・デル・カフェ・デ・オリエンテ」で、その奥に「カフェ・デ・オリエンテ」がある。

 そのすぐ隣にあるのが「ラ・ボティレリア・デル・カフェ・デ・オリエンテ」。


「ラ・ボティレリア・デル・カフェ・デ・オリエンテ」のバーカウンター。タパスも並んでいる。

「ラ・ボティレリア・デル・カフェ・デ・オリエンテ」1階のダイニング。

 こちらは1階のバーカウンターにタパスが並んでいてカジュアルな雰囲気と思いきや、らせん階段を降りていく地下は17世紀当時のレンガの壁と天井が美しくアーチを描くダイニングとなっていた。


「ラ・ボティレリア・デル・カフェ・デ・オリエンテ」の地下のメインダイニングは、床のガラス越しに17世紀当時の遺跡を見ることができる。

 しかも、床がガラス張り。17世紀当時の床下を見ることができる。

La botilleria del Café de Oriente
(ラ・ボティレリア・デル・カフェ・デ・オリエンテ)

所在地 Plaza de Oriente, 4. 28013 Madrid
https://www.grupolezama.es/restaurantes/madrid/


「ラ・タベルナ・デル・アラバルデロ」があるのは、王立劇場に向かって前述の2軒とは反対の左のブロック。オリエンテ広場ではなく、王立劇場に面した道沿いに入口がある。

 17世紀に思いを馳せた後は、王立劇場を挟んだ隣のブロックにある同経営の「ラ・タベルナ・デル・アラバルデロ」へ。


「ラ・タベルナ・デル・アラバルデロ」のタパスコーナー。壁には過去に訪れた著名人たちの写真が飾られている。

 こちらでランチをいただくことにした。1974年にオープンしたタベルナだ。入口から入ってすぐのカウンターにはタパスが並び、店員さんたちとおしゃべりに興じるご夫婦が。


「ラ・タベルナ・デル・アラバルデロ」のメインダイニング。

この日のメインは看板メニューのチキンの野菜包みか、ビルバオ風白身魚という選択だった。

 この日のランチメニューは、前菜がグリーンアスパラガスのグリル、マッシュルームと紫芋、卵のソースがけ、メインはチキンの野菜包みかビルバオ風白身魚のどちらか、そしてデザートにはライスプリンだった。

 入口のタパスでも充分ランチになりそうだけれど、この日はランチをしっかり食べるスペインの皆さんに倣ってコース料理とした。

 数百年の歴史観光と美味しいお料理で、すっかりおなかいっぱいになった午後だった。

La Taberna del Alabardero
(ラ・タベルナ・デル・アラバルデロ)

所在地 Calle Felipe V, 6. 28013 Madrid
http://www.alabarderomadrid.es/

ミシュラン2ツ星レストラン
「サンセローニ」で舌鼓


「ホテル・エスペリア・マドリード」の正面玄関に向かって右側に、「サンセローニ」に直接入ることができる入口がある。

 古くから街の中心として栄えてきたセントロ地区の北東に、高級ブティックが軒を連ねるセラーノ通りがある。

 そのすぐ西側に並行して延びるカステリャーナ大通りに面した5ツ星ホテル「ホテル・エスペリア・マドリード」の地下にあるのが、2ツ星レストラン「サンセローニ」だ。ヘッドシェフを務めるのは、スペインを代表するシェフのひとり、オスカル・ベラスコ氏。


メインダイニングは禁煙となっているが、シガーバーや、喫煙可能なパティオがある。

 ベラスコ氏は、カタルーニャ州サンセローニ出身の3ツ星シェフ、故サンティ・サンタマリア氏に師事し、スペイン各地で腕を磨いた後、2001年に「サンセローニ」のヘッドシェフとなった。

 サンタマリア氏は、カタルーニャ州出身者として初めてミシュラン3ツ星を獲得した、スペイン料理業界の重鎮。「サンセローニ」は、同氏が出身地の名前をつけてオープンさせたスペイン料理レストランだ。


食後に楽しむことができるチーズの種類は豊富だ。

ワインセラーには上質のワインがずらり並んでゲストの注文を待っている。

 ベラスコ氏自身はマドリードの北西にあるセゴビア出身。2001年にオープンしたベラスコ氏率いる「サンセローニ」は、同年にミシュラン1ツ星、2年後には2ツ星を獲得したほか、数々の賞を受賞している。

 2016年からは3年続けて来日し、都内のホテルでディナーイベントを催した。2011年のサンタマリア氏急逝の後もスペインガストロノミー界に影響を与え続けている実力者なのだ。


ウェイターの皆さんもダンディでありながら、フレンドリーな笑顔で接客してくれる。

キッチンを眺めることができるテーブルは特等席だ。

 今回の取材では、キッチンの裏側にあるシェフズテーブルで前菜を数品試食させていただいた。自家栽培のハーブの棚が心和む小部屋だ。キッチンをガラス越しに眺めることができる。

 テーブルに次々と運ばれてくる小さな前菜たちは、どれもすこぶる美味しかった!


手前から、マッシュルームスープ、アボカドと鹿のペストリー、パルメザンチーズとマッシュルーム、イカのフリットアーリョオーリョソース。

 深みのあるマッシュルームのスープ、鹿肉にアボカドのコクが加わったひとくちサイズのペストリー、ニンニクを利かせたイカのフリットなど。

 スケジュールの都合でメインを食べることができなかっただけに、どんなに素晴らしいのかと妄想が膨らんだ。


オスカル・ベラスコ氏。料理で使われるハーブ類をキッチン内で自家栽培している。

 2019年の来日予定はまだ告知されていないが、再来日が決まったらすぐに予約したいと心から思ったのだった。

Santceloni
(サンセローニ)

所在地 Junto al Hotel Hesperia Madrid, Paseo de la Castellana, 57, 28046 Madrid
http://www.restaurantesantceloni.com/en/

【取材協力】
イベリア航空

http://www.iberia.com/


たかせ藍沙 (たかせ あいしゃ)

トラベル&スパジャーナリスト。渡航約150回・70カ国、海外スパ取材約250軒超、ダイビング歴約800本超。日々楽しい旅の提案を発信中。著書は『美食と雑貨と美肌の王国 魅惑のモロッコ』(ダイヤモンド社)、薔薇でキレイになるためのMOOK『LOVE! ROSE』(宝島社)など。楽園写真家・三好和義氏と共著の『死ぬまでに絶対行きたい世界の楽園リゾート』(PHP研究所)は台湾と中国で翻訳出版、第2弾『地球の奇跡、大自然の宝石に逢いに… 青の楽園へ』(PHP研究所)も中国で出版された。新刊『ファーストクラスで世界一周』(ブックマン社)発売即重版決定!
Twitter https://twitter.com/aisha_t
ブログ http://ameblo.jp/aisha
「たかせ藍沙のファーストクラスで世界一周」Facebook
http://www.facebook.com/WRT.by.FirstClassFlight

文・撮影=たかせ藍沙

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