2019/01/27 18:00

ボイメン田中俊介が語る主演映画 『デッドエンドの思い出』の魅力

「これを書いたことで人生に大きな幸せがやってきた作品です」――著者の吉本ばななさん自身がそう語る傑作『デッドエンドの思い出』が、日韓共同製作で映画化。釜山国際映画祭でのプレミア上映を経て、2019年2月に日本で公開される。

 新たな出会いに支えられて前へ進もうとする主人公・ユミを演じたのは、韓国のアイドルグループ、少女時代のスヨン。

 ユミを温かく見守り、同時に自分の過去を清算していこうとするカフェ兼ゲストハウスのオーナー・西山を演じるのは、名古屋発エンターテイメントグループ、BOYS AND MENの田中俊介。

 役づくりをめぐって、「とにかくめちゃくちゃディスカッションをした」という真摯な二人。田中俊介さんへのインタビューをお届けします。


ふと現れる出会いを信じて
一生懸命に生きていきたい


――日韓合作映画出演のお話を聞いたときのお気持ちを教えてください。
 
 びっくりしました。まさか、日韓合作の日本側の主演をさせていただけるとは、予想だにしていなかったので。しかも相手が少女時代のスヨンさんと知って、しっかり演じなくてはいけない、と責任も強く感じましたね。若い監督との映画というのも嬉しかった。

 今回はチェ・ヒョンヨン監督(1988年生まれ)の長編デビュー作ですし、中村祐太郎監督(1990年生まれ)の映画『スウィート・ビター・キャンディ』(2019年完成予定)とか、若い方たちとのお仕事がこの1年近く続いているんです。言ってみれば、この世界ではまだ駆け出しの方たちの持つ、同世代としての熱、一緒にいいものを作ろう、という思いがガチッとはまる感じがしたんです。

 不安もあるけれど、そこを乗り越えた先の、本当に面白いものが出来たときの喜びも味わえる。『デッドエンドの思い出』は特に若いチームで頑張ろう、良いものを作ろう、と思いながら取り組みました。

――釜山国際映画祭がプレミアでしたが、レッドカーペットでは、本当に嬉しそうでしたね。

 釜山、いいですよねえ。一映画ファンとして、釜山国際映画祭に行くのが念願だったので。本当に、釜山の地に立てるのは最高でした。


釜山国際映画祭にて。photograph:Ayako Ishizu

――この映画は田中さんの地元、名古屋が舞台ですね。
 
 自分が生まれ育った名古屋の地を舞台にしている映画、という嬉しさはもちろんありました。魅力がない街と言われがちですが、いいところがいっぱいあるって、僕自身も撮影しながら改めて気づくことができました。

 名古屋はビルが立ち並ぶ中でも、自然が豊か。映画の中でも最初にユミ(スヨン)がテレビ塔にやって来るんですが、あの周りも樹々がばーっとあって、とても綺麗なんです。海も山も近くて、ご飯も美味しい。名古屋めしは味が濃いですが。

――名古屋めし、美味しいですよね。赤味噌味、大好きです。

 わ、嬉しい! 赤味噌の味は一度ハマると、しょっちゅう欲してしまうようになります。そんな魅力を、僕自身ももっと発信していきたい。釜山国際映画祭でも名古屋をアピール出来てよかったです(笑)。

出会いが持つ可能性
そして力を強く感じました


――『デッドエンドの思い出』は原作者の吉本ばななさんが、ご自身の作品で一番お好きな小説だそうですが、この物語をどのように受け止めましたか?

 出会いが持つ可能性、そして力を、強く感じました。生きていたら、落ち込むことや傷つくこともある。でも、そんなマイナスに陥ってしまった気持ちから救い出してくれるきっかけや人が、ふいに訪れるんですよね。

 僕が演じる西山君には、不思議な力があり、人を寄せ付けて、あっためてあげることが出来る。それは自分が過去に辛い思いをしたことがあるからなんです。そんな西山君をどう表現しようかと考えました。

――西山君はオープンなようで、誰に対しても均等に距離を取っている人物ですね。

 そう、ちゃんと距離感はわかっていて、ただオープンなだけではない。だけど距離感を保ちつつも、お店に来てくれる人みんなをあったかい気持ちにさせることが出来る。スヨンさん演じるユミ(原作ではミミ)に対しても同じように接して、辛い状態から回復させることが出来ました。自分に、こんな素敵な男性を演じられるのかな、という不安もありました。


――スヨンさんは、田中さんご自身にも西山君と同じような部分、感情を全部表に出さないようなところがある、とおっしゃっていましたが。

 あ―――、見抜かれていますねえ(笑)。よく見てるなあ。僕は元々人見知りな面もあるし、お芝居の現場であまり人とコミュニケーションを取らないタイプなんです。役に集中していないと不安でしょうがないから、常に役に向き合っていたい。

 でも、今回は初めて、そういうやり方はやめて、とにかくコミュニケーションを取ろうと心がけました。キャストの方や、スタッフの皆さんといっぱい会話をして、そこで生まれたあたたかい空気をそのまま西山君にのっけてお芝居すれば、うまく働くんじゃないかな、と。そういうことが出来るのが、西山君だとも思ったし。

 とにかくスヨンさんにもいっぱい話しかけて。普段はそういうの、絶対しないんですよ(笑)。現場で一人でぽつんとして役のこと考えているんだって、いくらスヨンさんたちに話しても、全然信じてくれない(笑)。改めて、物作りをして行く上でコミュニケーションは大事だなと思いましたね。

撮影前も撮影中も
ディスカッションをした


――スヨンさんとの共演はいかがでしたか? インタビューをしてとてもクレバーな方だな、という印象を受けましたが。

 本当にそうなんですよ! 作品と真摯に向き合って、妥協を許さない。撮影前も撮影中も、とにかくめちゃくちゃディスカッションをしたんですよ。「私はこう思うんだけど、どう思う? 意見を聞かせて」と。全部行動に移すので、純粋にカッコいい方だなと思いましたね。

 国は違えど、同じ役者として、同じ空間で同じ空気を吸ってお芝居をすることは、本当に良い経験でした。スヨンさんから学ばせてもらうことが多い現場でした。

――韓国のキャスト、スタッフとのお仕事は、日本とは違いがありましたか?

 スヨンさんはじめ、韓国の俳優さんは自分の意見をはっきり言う方が多いな、という印象がありました。妥協しないで意見を言う。それは監督も、スタッフもそうでした。

 日本人はどうしても空気を読んだりしがちじゃないですか? もちろんそういうのが大事なときもありますが、まず「私はこう思うんです」って最初に言うのは大事だな、自分もなるべくそうしよう、と思いました。

 友人役のドン・ヒョンベさんもとても可愛がってくれて、釜山国際映画祭のときにお酒を一緒に飲んだんです。僕は韓国語はあまりしゃべれないし、ヒョンベさんも日本語が得意ではないんですが、目やボディランゲージで一生懸命コミュニケーションを取りあって。お互い片言ですが、心が通じあえる、温かい瞬間がありました。


共演したスヨンさんと2ショット。

――吉本ばななさんも、撮影現場に来られたそうですね。

 いやあ、まさか名古屋にまで来てくださるとは思いませんでした。舞台になるエンドポイントというカフェまで来てくださり、「素敵なカフェですね」と言ってくださったし、ユミと西山の雰囲気もいいですね、とおっしゃってくださったので、ホッとしました。

――CREA WEBの読者へ、メッセージをお願いします。

 誰にでも心に傷を抱えてしまうことがやってくるかもしれないけれど、それを助けてくれる出会いというのは、ふとしたときに現れる。そういう出会いを信じて、僕自身も一生懸命生きていくから、皆さんもこの映画からそういうエネルギーを感じて、生きていってください! 重くなっちゃいましたね(笑)。そんな重い映画じゃないんですけど、そんなメッセージを感じてもらえたら嬉しいです。


田中俊介

1990年愛知県生まれ。
東海エリア出身・在住のメンバーで構成された10人組ユニットで、先日1月14日にナゴヤドーム単独ライブを成功させたエンターテイメント集団「BOYS AND MEN」のメンバー。映画やテレビドラマなど、俳優としての活動にも力を注いでいる。365日必ず映画を1日1本見るほど、映画に対しての愛情が深い。
主な映画出演作に『ダブルミンツ』 (内田英治監督)、『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』 (久保茂昭監督・中茎強監督)、『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』 (久保茂昭監督・中茎強監督)、『ゼニガタ』(綾部真弥監督)、『シェアハウス』(内田英治監督)、『恋のクレイジーロード』(白石晃士監督)、『スウィート・ビター・キャンディ』(中村祐太郎監督/2019年完成予定)などがある。


映画『デッドエンドの思い出』

メガホンを取ったのは、本作が長編デビューとなるチェ・ヒョンヨン監督。学生時代、日本文学と映画学を韓国でダブル専攻。名古屋での撮影は円頓寺商店街を舞台にした短編映画「お箸の行進曲」に続いて2度目となる。
主人公のユミは、遠距離恋愛中の婚約者を追いかけて、韓国から名古屋へやってくる。彼の裏切りに絶望し、あてもなく名古屋の街をさまようユミが行きついたのは、古民家を改造したカフェ&ゲストハウス「エンドポイント」。そこで出会ったオーナーの西山くんは不思議な存在感の持ち主。
西山くんのさりげない心遣いや、カフェに集うちょっぴりおせっかいな常連客たちは、いつしかユミを癒し、ゆっくりと立ち直らせてくれるのだった……。

監督・脚本 チェ・ヒョンヨン
出演 スヨン(少女時代)、田中俊介(BOYS AND MEN) 他
原作 よしもとばなな『デッドエンドの思い出』(文春文庫刊)
製作 ZOA FILMS シネマスコーレ
配給 アーク・フィルムズ/シネマスコーレ
●2019年2月16日(土)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
2月2日(土)シネマスコーレにて、名古屋先行公開
http://dead-end-movie.com/
©2018「Memories of a Dead End」FILM Partners

構成=石津文子
撮影=佐藤 亘



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