2019/02/05 17:00

風間トオル、加勢大周、筒井道隆…… セーターブックを知っていますか?

 1980年代から1990年代にかけて流行した「セーターブック(SB)」を覚えていますか? 編み図と共に人気モデルや駆け出しの若手俳優が鮮やかで個性的なセーターを身にまとった写真実用書です。青春のほの甘い記憶と共に、SB愛好会の3人が今振り返ります!


寒い夜だから……
DO “KNIT” YOURSELF


おそらく30代半ば以上の女子ならば、一度は目にしたことがあろう編み物の教科書セーターブック、略してSB。

 SB(セーターブック)。手編みセーターがプレゼントの主流だった昭和の時代、俳優やモデルがひたすらセーターを着用し「彼に手編みのセーターをプレゼントしよう」というコンセプトのもと、発売されていた「手作りセーター」の本だ。

 前半はセーター着用のグラビア(本によってはやや恥ずかしめのポエム付き)、後半はしっかりとした編み図が掲載されているのが基本的なSBのスタイル。

 そう、愛に溢れた素敵な実用書なのである。よく見ると「今をトキめくあの人が!」みたいなお宝だって発掘できる。


落語家・柳家花緑が着るのも和服でなくセーター。SB終了期に近い2004年発行『柳家花緑が着るmen's Knit+Ladies' knit』(日本ヴォーグ社)。

 しかしながら平成になり、いつのまにやらSBは書店から姿を消してしまい、目にすることもなくなった。

 そりゃ手編みは重い(物質的な重さも、気持ち的にも)。こちらが気づかぬうちに、あっという間に消えてしまった。

 手作りセーター本は今も出版されているが、俳優やモデルの名前が付いたものはなし(※2019年1月現在)。もっとお洒落で洗練されたものに進化している。

 そのことに気づいた私、分類担当のハルナは、今からおよそ10年前、このSBの表紙をひたすら集めるようになり、2008年10月、mixiに「平成のセーターブック」というコミュニティを作る。

 ネットでSB表紙画像を拾っては、五十音に分類しひたすらmixiに画像を貼る、という、一般的な目からしたら少し気がふれた活動をしていたのだが、こんなけったいな趣味に同調してくれたコミュニティの構成員たちと約10年の時を経て、平成最後の冬に再度、SBについて見つめ直す機会がやってきた。人生、何があるかわからぬものだ。


当時はまだ梅宮アンナとの熱愛や犯罪の影もない。いいとも青年隊の一員だった。『羽賀研二が着る彼のニット』(ブティック社)。

 ちなみに2008年に作られたmixiのコミュニティは現在ではほぼ放置の状態であり、コミュニティのイメージ画像も当時のまま。

 くしくも、イメージ画像は羽賀研二(逮捕前)のSB表紙であり、その事実に気づいたのが、再逮捕当日だったことにも、SBと我々の運命を強く感じずにはいられない。

 そのコミュニティに綴っていたフレーズをここに転記しておく。

「セーターが好きな人も俳優が好きな人も
 暖炉が好きな人も、カウチンしか愛せない人も。
 10月25日。 そんなワタシのセーター記念日。」

 どうやら10月25日を「セーター記念日」に制定していた模様。勝手過ぎる。

写真集気分
安心価格のSB(セーターブック)

 私とSBとの出会い。それは平成の初頭(1990年代)まで遡る。

 とても個人的な話になってしまうのだが、高校時代に当時大好きだった筒井道隆のセーターブック『セーターが似合う彼だから』を地元の書店で手にしたのがマイファーストSB。

 当時はまだ、映画と何本かのドラマにしか出ていなかった筒井クン(ちなみにSBでは、基本的にモデルや俳優を“クン”呼びなのでここもカタカナ表記にしてみた)がたくさん出ている! と、写真集気分で手にした記憶が。


ちなみにこれは筒井クンの代表作であるドラマ「あすなろ白書」(1993)出演前。『セーターが似合う彼だから』(雄鶏社)。

 SBはお財布にも優しく、高校生のお小遣いでも購入できる安心価格。こっそりと購入し、実家の自室でこっそりと眺めていた。その当時もセーターなど編む気はさらさらなかったのだが。

愛さずにはいられない
「ONDORISM(オンドリズム)」

 有名人SBを発行していたのは、主に雄鶏社、日本ヴォーグ社、ブティック社の三社。実用書としての手芸本を発行する老舗が手がけていた。

 発行元と出演タレント・モデルを整理してみたところ、今で言うところの「囲い込み」的な行為は見当たらなく、高嶋政伸のように、三社からそれぞれ1冊ずつのSBに登場している人も見受けられる(この高嶋弟バブルはドラマ「HOTEL」(レギュラー放送は1990~98年)の影響なのか、それも検証したいことのひとつである)。


姉さん、「セーター」です。屈託のない笑顔の高嶋弟。『高嶋政伸が着る彼のニット』(ブティック社)。

 それぞれの出版社が手がけるSBの中でも、特に雄鶏社のSBにおける観音開きページがやばい。


『大周クンみたいなセーター 加勢大周』(雄鶏社)。セーターを着ていない加勢大周の革ジャンとTシャツ姿のタテ型ピンナップ(サイン入り)ページもあった。

 もはやここはフリーのページなのか、本来の目的であるセーターとは全く関係のない世界が展開されている。このページの構成を考える仕事だけして暮らしていたい……。そんな夢さえも生まれてしまうSBの魅力よ。ああ、果てしない。


観音開きのページでは、バックハンドとフォアハンドのラケットの持ち方を詳しくレッスンしてくれる松岡修造。『テニス&セータースケッチ 松岡修造』(雄鶏社)。

 観音開きページはとにかく自由。雄鶏社によるSBの自由過ぎるこのやり方を我々は愛を込めて“ONDORISM(オンドリズム)”と名付けた(勝手に)。

 しかしながら、この自由なページをほぼ毎回作っていた雄鶏社は2009年に倒産。もう新たなONDORISMを肌で感じることはできなくなってしまったのである、無念。

 雄鶏社といえば、もうひとつ。“雄鶏社ONLY”こと、SBを雄鶏社から3冊も出していた風間トオルのそれは目を見張るものがある。そのコンセプトや構成が本当に華やかで洗練されているのだ。


ヘリコプターの元に寝転ぶ風間トオルなどお宝ショットの観音開きのページ。『風間トオル’91CITY』『僕らのセーターアイランド 風間トオルと仲間たち』(ともに雄鶏社)より。

 モデル仲間たちとホテルで最高に楽しげなトオル(だって、ホテルのプールで騎馬戦をしてしまうレベル)。そして、タンクトップ型などのアバンギャルドなニットたちが登場。

 その本のタイトルどおり、私たちはあっさりとトオル国王が治める“セーターアイランド”の住人になってしまうのだ。そのくらいキラキラしているし、ページを飾るトオルが俄然カッコいい!


水の中でもセーターを着てしまうのがアイランド住人の掟。『風間トオル セーターアイランド』(雄鶏社)。

 となると「過去にSBを作っていた人に会ってみたい!」、そんな欲望が沸々とわいてきたのは言うまでもない。人間なんて欲望の塊なのである。

 現在も「毛糸だま」など、多くのセーター実用書を発行している日本ヴォーグ社さんにその狂った眼差しを注ぐ流れに……。

 ということで次回は、平成の最後になってついに動き出す我々(え? 遅い?)。

 第2回「手芸書の殿堂こと“日本ヴォーグ社”へ行ってきた!」をお楽しみに。


ハルナ(執筆と分類担当)

mixi「平成のセーターブック」コミュニティ管理人。SB連載では執筆とデータベース作成を担当。ちなみに今、最もセーターを着せたいのは休日課長(ゲスの極み乙女。)。課長のセーター姿は日本一。本業は寺社仏閣広告の編集やテレビ番組関連記事のライター業務など。



コイシー(交渉担当)

面白そうなことには乗っかる気質から、ハルナが作った、mixi「平成のセーターブック」コミュニティの副管理人に。SB連載では外部との折衝など事務方を担当。本業は食のライター。セーターを着せたいのは、実は手脚が長くてプロポーション抜群の荒川良々。



オモムロニ。(収集担当)

のめり込むと身銭を切らずにはいられないタイプで、本特集に掲載のSB殆どを所有。本業は雑貨コーディネーター。雑誌CREAでギフトコラムを連載中のほか、2019年1月に『DAILY GIFT BOOK 気持ちが伝わる贈りものアイデア』を刊行。プロ野球選手にチームカラーのセーターを着せたい。

構成=水野春奈
撮影=平松市聖

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